不登校には意味があると瀬戸内寂聴さんから学んだこと

いや、できれば経験したくなかったよ。
不登校になんてなりたくなかったし、今でもなって良かったなんて思えない。

経験しなければそれに越したことはないし、学校に行けていたらどれだけよかっただろうと思う。
でも残念ながら、過去は変えられないし、学校に行けなかった時期があることも変わらない。

不登校支援の仕事をしていると、「不登校の経験が活きていますね」「田中さんは不登校の子にとって希望の星ですね」なんて言われる。

けれど、希望の光になろうと思ってもいないし、”不登校の経験を活かしたい”なんて、ポジティブに思ったこともない。

そんなふうに言っていただくのはありがたいし、僕がいることで、学校に行けていない子が、希望を持てるのであれば、それはとても光栄なことかもしれない。

でも、そう言われたとしても、過去に学校に行けなかったことが、本当の意味で自分にとって良かったと思うことはない。

僕はきっと、一生このことを後悔しながら生きていく。
誰かが来て、今すぐあの頃に戻ることができると言われたら、僕は喜んで過去に戻るよ。
 

 
不登校を経験した大学生の子から「相談がある」と言われ、僕は彼女と話しをしていた。

「ずっと後悔しているんです。不登校になったこと。だって、その時間を無駄にしたと思うんですよ。あの時間、もっと友達と遊ぶことができた。もっと勉強することができた。どうして、私はあんなに無駄な時間を過ごしたんだろう……。そう思うと、イヤになるんです」
 

僕は、「分かるよ」と言って、話しを続けた。

僕も同じだ。
不登校になっていなかったら……って、未だに思う。

「あのときこうしていたら、どうなっていただろう?」と、妄想することがいっぱいあって、しんどくなることもある。
青春ドラマや学園アニメを見るたびに、「いいな……」と思う。

自分には空白の時間があって、経験できなかったことがたくさんある。
だから、僕は、”不登校は良い経験だ”なんて前向きに言うことはできない。

キミが後悔している気持ちはよく分かるし、イヤになってしまうのも分かる。

ちょうど、僕も大学生のときに同じことで悩んでいた。
それを救ってくれたのが、瀬戸内寂聴さんだった。

引きこもりから抜け出し、いろいろ活動するようになっていた頃。

不登校で無駄にした時間を取り戻すために、一心不乱にいろんなインターンに参加して、学生団体もやっていた。

外から見ると、”充実した大学生活”なのかも知れないけれど、僕の心はいつだって渇いていた。

このままじゃいけない。
もっと、もっと、もっと。

いつ、またダークサイドに戻ってしまうかと思い、自分が怖くなった。
自分の中に時限爆弾があって、なにかをやっていないと爆発してしまうように思っていた。

僕を突き動かしていたのは、危機感であり、恐怖だった。

もうあんなダメな時間を過ごしたくない……。

ただ、それだけの気持ちで動いていた。
だから、なにをしても楽しくなかったし、怖かった。

そのとき、ずっと考えていたのは、「生きるのってどうしてこんなにしんどいんだろう……」ということばかり。
 

2ヶ月くらい、ほとんど寝ずにガムシャラにやって、数週間引きこもる。
そんなめちゃくちゃなサイクルを繰り返し、心はすっかり疲弊しているときだった。

大学の授業で、瀬戸内寂聴さんがゲスト講師で来られた。
僕は、わらにもすがる気持ちで、手をあげて寂聴さんに聞いたんだ。

「人生ってめちゃくちゃしんどいじゃないですか? 生きるのが苦しいんですが、どうしたらいいでしょうか?」

 

寂聴さんは、ふっと笑って優しい笑顔で答えてくれた。

「人生は苦しいんですよ。お釈迦さんもそう言っています。でね、考え方なんですが、苦しめば苦しむほど、人に優しくなれるんですよ。しんどい思いを経験した人は、気持ちが分かるから、他の人にも優しくできるんですよ」

もうね、すぅ〜っと言葉が体に染み入ってくるようだった。
 

今まで、不登校になったこと、引きこもりだったことには意味がないものだと思っていた。
だから、必死でその時間を取り戻そうと躍起になっていた。

でも、そうじゃなかった。

僕が不登校になって、苦しんでいた時間には、意味があったんだ。
苦しみ、しんどさの中で、もがきながら生きてきた。
その時間は、誰かの役に立てるようになる醸成期間だった。

全て無駄だと思っていた時間が、意味ある時間だと分かったとき、「自分にもできることがあるんじゃないか」と思った。

それが、今の仕事を始めることに繋がっているんだ。
 
 

僕は、不登校を経験した。
決して、「良かった」とは思えない。
でもね、経験したからこそ、こうやってキミの相談を聞くことができている。

もし、全く経験していない人に相談したらどうだろう。
「不登校の経験もきっと良かったことになるよ!」なんてアドバイスをされるかも知れないよね。

その助言は、きっとキミの心には届かないハズだ。

だって、その人は不登校を経験していないから。

僕が不登校を経験したことで、少なくともキミの役に立つことができている。(できているよね? ちょっとは)

だから、後悔する必要はない。
だって、もう過去は帰ってこない。
タイムマシンは、ないんだ。

キミは、これまで苦しんだ。
いっぱい悩んだと思うし、自分も責めたことだろう。

でも、その時間はきっと意味がある。
その時間があったからこそ、キミはたくさんの人に優しさを持って接することができると思うんだ。

“苦しさを感じている人に手を差し伸べられる人になりたい”と、キミは言った。
そう思ったのは、きっと不登校の期間があったからこそだ。
無駄だなんてことは、まったくないよ。
 
一通り話しが終え、「ありがとうございました。なんだか心が軽くなった気がします」と言って、彼女は帰っていった。

「少しでも、なにか伝わっていたらいいな……」なんて思いながら、僕は家へと足を向けた。

話した内容を思い返しながら、帰っていると、ふと思うことがあった。
 

「不登校って、まるで失恋みたいだな」

“良かったこと”ではない。
できれば、どんな恋愛もうまくいって欲しかった。
「あのとき、うまくいっていたら……」なんて想像することもある。

でも、失恋があったことで得られたこともたくさんある。
強くなれたし、見返そうと思ってガンバったこともあった。
 

不登校も同じだ。
決して、“良かったこと”とは言えない。
でも、不登校を経験したことで、得られたことはたくさんある。

人に優しくなれた。
人の気持ちに共感できるようになれた。
人の痛みが分かるようになった。
楽しく生きる幸せを感じられるようになった。

だからこそ、僕は不登校になって落ち込んでいる子。
我が子が不登校になって心配している保護者さん。
不登校だったことを引きずっている子。

みんなに伝えたい。

不登校になったことにも、意味がある、と。
 
 

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    この記事を書いた人

    1984年 大阪生まれ 立命館大学文学部卒

    中学時代は、部活に打ち込み、勉強では学年で常にトップ10以内。
    しかし、中学3年生のときから学校がしんどくなり、誰とも話さなくなる。
    野球選手を目指し、大阪の野球強豪校へ行ったものの、自信を失い退部。そこから学校へ行かず、河川敷で過ごす毎日をおくる。
    浪人して立命館大学へ入学したものの、なにをしたいかが分からなくなり、行く意味を失う。1回生の夏から1年ほど、京都の下宿で引きこもる。
    友人の支えもあり、復活。政治家の秘書やテレビ制作などのインターンをおこない、期間限定のカフェも開く。「自分のようにつらい思いをさせたくない」と思い、D.Liveを立ち上げる。
    フリースクールや自信を取り戻す教室を運営。不登校に関する講演や講座もおこなっている。
    京都新聞にして子育てコラムを連載中。
    詳しいプロフィールはコチラから

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