温泉に浸かるようなイベントで、子育ての悩みは解決するかもしれない

「キミの事業は、絶対に失敗するよ」

京都にあるお茶屋さんで、僕は先輩起業家と相対していた。

彼は、笑顔で言った。
「もって3年くらいかな。まぁ、うまくいかないよ」

その言葉を聞いて、僕はすごくラクになった。

僕は、NPO法人 D.Liveという教育団体を運営している。立ち上げたのはまだ学生だった頃。

起業家の先輩に会ったのは、団体を法人化しようと奔走していたときのこと。

同じ教育NPOをしている先輩とお会いする機会があった。

僕はここぞとばかりにこれからしようと思っている事業についてプレゼンをした。

しかし、内容は全然で、「ふ〜ん」くらいにしか聞いてもらえなかった。

そこから半年後。

「事業内容、練り直しました。30分だけお時間いただけないでしょうか?」

メールをすると、承諾の返事をいただき、緊張しながら待ち合わせのお店へ向かった。

ドキドキしながら、パソコンを持ってプレゼンをする。

話し終わると、彼は言った。

「すごく良くなったね」

心の中で、大きくガッツボーズをした。

やった! やった!

その後、感想や簡単なフィードバックをいただく。

嬉しい気持ちでいっぱいになっていたとき、彼は「でもさ……」と言って、話し始めた。

「その事業は、きっと失敗するよ。スタートアップの事業なんて大抵は失敗するんだ」

僕は、身を固くして、姿勢を正した。

「でもさ、そんなもんなんだよ。うまくいかないことを前提にして、やっていったらいいんだ。大事なのは、やることだよ。実際に行動して、失敗しないと、どうしてうまくいかないのかもわからない」

「きっとキミの事業は失敗する。でも、やらなきゃダメだ。うまくいかなくても大丈夫。僕もそうだし、みんなそうやって、事業を続けてきたんだから」

僕は、今までに、こんな嬉しい言葉をもらったことがあっただろうかと思うほどに感動していた。

嬉しかった。
屈託のない、真っ直ぐな気持ちが心に突き刺さった。

その後、先輩のアドバイス通りに事業を立ち上げ、予言通りに、事業は失敗した。
2年ほどで、スタートアップの事業は終了を迎えた。

しかし、僕の心は晴れやかだった。

うまくいかなくなったときに思った。
「こうなることは、知っていた」と。

タイムマシンで未来からやって来た人に、これからおこる出来事を教えてもらっていたかのように、僕はさも当然のようにこの事業失敗を受け容れた。

僕は、「うまくいかないよ」というアドバイスをもらったことで、起業へ向かう気持ちがとてつもなく軽くなった。

どうせ失敗するなら、できることは全部やって、勉強の機会にしようと開き直ることができたからだ。

起業なんて、誰もが失敗して当たり前なんだ。

みんな成功者しか見てない。いや、見えない。
だから、少し失敗しただけで撤退する。やめてしまう。

でも、大事なのは、失敗しても続けることができるか? 失敗から学び、どんな形であれ、事業を継続していくか。

子育ても同じだと思う。
失敗して当たり前なんだ。

世間では、うまくいっている人しかテレビにはうつらない。

アイドルが、「いやぁ、子育てしながら仕事とか無理ですよね。ぶっちゃけ、子どもにはポテトチップスしか食べさせてないんですよ」とか、話すわけがない。

フルタイムで働きながら子どもを東大にいれる。
アイドルをしながら、子育てをしっかりしている。
優雅にテラスでワインを飲みながら、子育てをしている美人ママ。

僕たちが見ているのは、ほんの一例だし、例外中の例外だ。

けれども、みんなはそれを見て、「自分はダメだ」と思ってしまう。

自分は、パートなのに、フルタイムで働いている彼女はあんなにすごい。どうして、自分はダメなんだ。って。

でも、それは「自分はダメ」ではなく、そういうものなんだ。

僕が起業したとき、先輩の言葉がなかったら、きっと同じように思っただろう。

「僕の能力が低いから事業が失敗するんだ」って。

しかし、そうじゃない。

先輩が言うように、「みんな失敗する」んだ。

失敗して、失敗して、傷つきながらも、前を向いているんだ。

でも、あざだらけの体は、服に覆い隠され、外から見ることができない。

見えていないだけで、みんな歯を食いしばりながら、無理をして笑顔を作っているかもしれない。

起業も子育ても、答えなんてない。正解もない。
100人いれば、100通りの方法があり、それぞれが自分たちの特性を活かしながら取り組んでいる。

アップルがうまくいった広報をそのまま使っても他の企業がうまくいかないように、子育てだって、合う合わない、できるできないがある。

僕たちがおこなうイベントでは、子育ての正解を伝えるつもりはない。

今回いらっしゃるゲストの丘山先生は、元東大の教授だけれど、彼に「東大に入る方法」について話してもらうつもりなんて毛頭ない。

このイベントで得られるものは、子育てのコンパス(指針)だ。子育てに必要なのは、地図でもカーナビでもない。

子どもによって行きたい場所が違うのだから、地図を持ったところで活用出来ない。

しかし、コンパスは違う。

どこへ向かっているかがわかると、それが指針になる。
「私の子育て、間違っていないわ」と強く思うことができるのだ。

子育ては不安で、つい正解を求めてしまう。

宝の地図を探してしまう。

でも、世の中にそんなものはない。正解はない。

必要なのは、指針であり、大切にするべき心得だけ。

正解だけにすがっていると、「この方法は間違っているかもしれない」と不安に思ってしまう。正解以外がすべてダメになってしまう。

正解を見つけようとするのは、青い鳥を探しに出かけていったチルチルとミチルのようなもので、そんなものはどこを探してもない。

今回のイベントは、まるで温泉のようなものだと僕は思っている。

正解を教えてくれるイベントや本、講座はマッサージだ。

一時的には効果があるだろう。でも、また困った事態がおきる。すると、またマッサージをうけるように、正解を探して、イベントに参加する。子育て本を読む。

でも、それはしんどいだけではないだろうか?

いつまでたっても抜本的な解決にはならない。

僕たちが提案したいのは、湯治(とうじ)だ。
湯治とは、温泉につかることで病気の予防や疲労回復・病気を自然治癒させること。

温泉は、体の中までぽかぽか暖めてくれる。
ほっとする。リラックスできる。

マッサージには、痛みがともなう。

「私の方法が間違っているのかもしれない」と責められる気持ちになってしまうこともある。
出来ていないことばかりを目の当たりにして落ち込んでしまうこともある。

しかし、温泉は違う。

「私の子育てでいいんだ」と、安心することができる。
「間違ってなかった」と、ほっと胸をなで下ろす。

体はリラックスするし、気持ち良くなれる。

ただ、マッサージとは違って即効性はない。
汗をかくと、また風呂に入る必要があるみたいに、何度も温泉に浸かる必要がある。

温泉に浸かると自然治癒力が高まるように、このイベントは子育てをラクに考えられるようになっていく。じっくり、ゆっくりと。

だからこそ、連続講座にしている。
1回だけ参加して、全てを得られるわけではない。

「いやぁ、ラクになりました。最高です」とは、ならない。

しかし、こんな感想をいただく。

「いろいろな子育てがあっていいのだと思いました。子どもに寄り添う、たのしむ。自分なりに迷いながら成長したいと思います」

「自分の子育てがまちがっていないよと、言ってもらえた気がします」

温泉からあがったように、リラックスして、ほっとして帰っていただけるイベントにしたいと思って、企画をしている。

今回は、ワークとして、子育てで大切にしたいことリストを作る。

前回のイベントで出た内容や今回のゲストである丘山先生の話、参加者の人たちが大切にしていることをまとめてリストにする。

“イライラしたときに、することリスト”
“子育てで大事にしたい7つの考え方”

みたいな、リスト。

多くのイベントや講演は、どうしても「いい話を聞いたな」で終わってしまう。
だから、リスト化することで、イベントが終わった後、日常でも使えるようにしている。忘れず、活用することができる。

効果は、じわじわ効いてくる。

参加者同士が話し合うことで、「みんな悩んでいるんだな」と思うと、気分がラクになる。
正解がないので、間違いを指摘されている気にもならない。

「ああ、良い湯だったなぁ」

そんなふうに言ってもらって、帰ってもらうイベントになったら嬉しい。

良い湯加減にして、当浴場へのご来場をお待ちしております。

イベントの概要は、こちらから。
  
 

シリーズ”○○と考える子育てがラクになる講座”
第2回「元東大教授と考える”本当に賢い子ども”の育てかた」
〜偏差値じゃない生きる知恵〜

●日時
2017年6月3日(土) 14:00-16:30 (13:30開場)

●場所
しんらん交流館(京都府京都市 下京区烏丸通七条上る) 
http://www.higashihonganji.or.jp/worship/kohryu-kan/
JR京都駅が最寄りです。

●アクセス方法
JR京都駅の1階中央出口から烏丸通りをまっすぐ上がってください。
http://www.higashihonganji.or.jp/about/access/pdfs/map.pdf

●定員:40名(先着順)  

●参加申込み:こちらのページよりお願いします。

●参加費:2,000円 (託児を希望される方は一人につき別途500円)

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●託児について

希望者の方には託児もあります。
対象年齢2歳〜5歳、託児費として一人につき別途500円頂戴します。
先着5名までとなります。
raku.kosodate2017@gmail.com に託児を希望する旨をご連絡ください。

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主催:NPO法人D.Live
企画協力:他力本願.net

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この記事を書いた人

1984年 大阪生まれ 立命館大学文学部卒

中学時代は、部活に打ち込み、勉強では学年で常にトップ10以内。
しかし、中学3年生のときから学校がしんどくなり、誰とも話さなくなる。
野球選手を目指し、大阪の野球強豪校へ行ったものの、自信を失い退部。そこから学校へ行かず、河川敷で過ごす毎日をおくる。
浪人して立命館大学へ入学したものの、なにをしたいかが分からなくなり、行く意味を失う。1回生の夏から1年ほど、京都の下宿で引きこもる。
友人の支えもあり、復活。政治家の秘書やテレビ制作などのインターンをおこない、期間限定のカフェも開く。「自分のようにつらい思いをさせたくない」と思い、D.Liveを立ち上げる。
フリースクールや自信を取り戻す教室を運営。不登校に関する講演や講座もおこなっている。
京都新聞にして子育てコラムを連載中。
詳しいプロフィールはコチラから

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