「注目してほしい」未成年と自尊感情

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先月は未成年による犯罪が世間の注目を大きく浴びたひと月でした。

東京近郊のスーパーやコンビニで、万引きをしたり菓子につまようじを混入させる様子の動画をYoutubeで公開していた19歳の少年。Youtubeで警察からの逃亡を宣言し、滋賀の米原駅で身柄を確保されるまでの数日間、成田空港や浜松・名古屋などへ逃亡する様子をYoutubeで公開し続けた彼の行動は、毎日のようにニュースで取り扱われました。

その後の調べで、万引きの動画は事前に同じ商品を店内に持ち込んで「盗んだように見せかけたもの」だったことが判明。さらに、自宅からパッケージに穴の開いた菓子が発見されたことから、一連の動画は実際に陳列された商品ではなく、事前に少年が同じ商品を用意して撮影していた疑いが強まりました。

果たしてなぜ彼は、このような偽装工作をしてまで、万引きや異物混入の動画をYoutubeに公開していたのでしょうか。また、なぜ彼は、逃亡の様子をYoutubeに公開し続けていたのでしょうか。

「注目してほしい」願望と「承認欲求」

この一連の動画投稿には「自分をもっと見て!」という声なきメッセージが隠されている、ということが確実に言えると思います。

心理学者のマズローが提唱する自己実現理論では、生理欲求(食事や睡眠など)、安全欲求(生活環境など)より上位に「承認欲求」というものがあると考えられています。「社会や集団から自分を認めてもらいたい」というこの欲求は、人間ならごく普通に誰しもが持っている欲求です。

たとえば、仕事で上司に認めてもらいたいという気持ち。SNSでたくさん「いいね!」をもらいたいという気持ち(そういえば昨日は田中さんがFacebookのこと書いてましたね)。これらも承認欲求にカウントされます。

この欲求が足りずにどんどん高まると、「自分は誰からも認めてもらえない、だから何か人と変わったことをしないと認めてもらえない」という方向へと傾きます。それは、一歩間違えれば卑劣な犯罪など「問題行動」へ走ってしまう危険性をはらんでいます。ひとたび問題行動を起こせば黙って見過ごす人は多くありません。否が応にも人々の注目を浴びることができます。

確かに問題行動へ走ることで「注目される」欲求は満たされるかもしれません。しかし、問題行動へ走ってしまう前に、承認欲求に気付いて問題行動を食い止めるチャンスはいくらでもあります。それを周囲が見逃し続けた結果、あるとき突然承認欲求が大爆発し、非行や犯罪に繋がってしまうのです。

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これは決して、このつまようじを混入させた少年だけの問題ではありません。ぼくは専門家でないので詳しく分析することはできませんが、未成年に限らず事件で逮捕された犯人の供述を聞くと、その裏側には「私に気付いてほしい」「もっと注目されたい」というメッセージが隠されているのでは?と気づくことが最近増えました。

根底にあるのは「自尊感情の低下」

なぜ彼は「世間から注目されたい」と思うようになったのか。承認欲求が極限まで達してしまったきっかけはどこにあるのか。そしてどこかで誰かが、彼の承認欲求が高まっている「SOS」に気が付くことは出来なかったのか。ここまで来ると、もはや「個人の問題」ではなく「社会全体の問題」として捉える必要性が出てきます。

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彼の詳しい家庭環境を知っているわけではないのですが、果たして自分の身近な人に温かく包み込まれ、理解を得られるような環境で育ってきたのでしょうか。これは自尊感情を構成する4要素のうち「包み込まれ感覚」「社交性感覚」の部分でもあります。

残念ながら日々新聞やニュースを見ていても、悲惨な事件が後を絶ちません。このような事件を防ぐには、承認欲求が高まっているSOSにパッと気付けること、そしてひとりひとりが自尊感情を意識して人と接することが何より大事なのではないかと思います。

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山本 駿

山本 駿

NPO法人D.Live スタッフ / 高校非常勤教員(社会科) 京都出身。中学3年間不登校。岐阜県内の大学を卒業後、不登校ボランティアを経て2014年よりD.Liveに参画。主にTRY部や不登校講演事業を担当しながら、今を生きる子どもたちの先生でも友達でもない「ナナメの関係」になることを目指しています。