【特典付き!】不登校の講演をしていて、自分は「医者になりたい」のだと気がついた。

「カウンセラーの人って、結局学校へ行けていた人なんでしょ?」

ある日、フリースクールへ来ている生徒の保護者さんが「うちの子がこんなこと言っていました」と、伝えてくれた。

「タナカさんは、学校に行けてなかったから、きっと自分の気持ちも分かってくれると思って、ここに来ようと思ってん」

子どもの口から、そのような言葉を聞けるとは思ってもいなかった。

夏頃、知り合いのかたから「今度、講演をしていただけないでしょうか?」というご依頼をいただいた。

『大津市子ども・若者支援の研修会』で、子どもに関わる方々が来られるとのこと。

教育相談センターやスクールソーシャルワーカー、福祉分野の方も多くいらっしゃる。

「ぜひ、タナカさんには不登校のことについてお話しをいただきたいです」

二つ返事で了承をしたものの、内容に困る。

「さて、なにを話したものだろうか……」

講演をおこなっても、ほとんどの方々は自分よりも経験がある人ばかり。

偉そうに話しても、「この若造はなにを言っておるんだ」と、なってしまう。

担当のかたと打ち合わせをしたとき、「参加する方々は、タナカさんが不登校のときの経験談を聞きたがっています」と教えていただいた。

「経験談か……」

正直、経験談を話すことは得意じゃなかった。

話すことへの拒否感はないものの、話していて「ほんとにこれはおもしろいのか?」と思ってしまう。

ほとんど知らない男性が、自分の経験をただつらつらと話すのだ。

さほどおもしろくもない、ネガティブな話しを。

しかし、「皆さん聞きたがっています」と言われたら仕方がない。

「分かりました! なんとかします!」と言って、打ち合わせを進める。

半分以上の方々は、”不登校”のことについてはよく分かっていないだろう。

生徒が言うように、ほとんどの人は「学校へ行けていた人」だから。

ならば、もう開き直って、自分を実験台にしてもらったらいいんじゃないだろうか?

「ちょっと思いついたんですけどね……」

僕は、おもむろに浮かんだアイデアを話し始める。

「参加者の皆さんにケース会議をしていただくのはどうでしょう? タナカを実験台に使っていただいて」

「ほうほう」

「ただ単に経験談を聞いていてもおもしろくないと思うんですよね。退屈だし。なにを目的に聞いていいか分からない。ならば、過去の僕を実験に使うのです」

「と、言いますと?」

「不登校、引きこもりになった僕の人生を赤裸々に皆さんへお話しします。そのあと、グループになってケース会議をしていただきます。テーマは、『過去のタナカに出来た支援は?』で」

「不登校だった当時のタナカさんを素材にして、ケース会議をおこなうのですね!」

「そうです。そのあと、ケース会議があると思えば、僕がどんなことを感じていたか、なにを思っていたかも目的意識を持って聞けると思うのです。きっと退屈にはならない」

「おお! おもしろそうですね」

楽しく打ち合わせは終わったものの、当日の資料を作っていて気がついた。

「これは、自分の人生、全て丸裸にされるやつだ……」

少しだけ気が滅入りながらも、小学生のときからタナカはどんな感じだったかを書いていく。

どんなことがあって、どんな少年だったかを年表のように作った。

「これを配るのか……」と、資料を見て苦笑いした。

自分で言い出したことだし、仕方がない。

参加された方に、少しでも不登校のことが伝わればそれでいい。

当日を迎え、僕はただひたすら自分の過去を話すことを始めた。

マイクを持って、話を始めたとき、「やめておけば良かった」と思った。

「僕が生まれたのは、東大阪市でした……」

話しながら思った。

いや、口に出ていた。

「これ、自分で解説する情熱大陸ですね……」

誰かが紹介してくれるならいい。

生い立ちも状況も感情も、全て自分で説明をしないといけない。

思っていた以上に恥ずかしい。

「やりたくない」と思ったけれど、ここまで来たら腹をくくるしかない。

しんどかったこと、不登校になった経緯、引きこもりのときのこと。

全てをあるがままに語る。

包み隠さず話さないと、この後のケース会議で参加者の方々が困ることになってしまう。

わずか20分ほどだったけれど、すごく長い時間に感じた。

でも、参加者の皆さんは真剣に聞いてくださった。

メモを取りながら。

「メモを取るのですか!?」とも思ったけれど、このあとのワークがあるので仕方ない。

もう途中からは、モルモットになろうと決意した。

「さぁ、皆さん、僕を好きなだけいじってください」と、開き直った。

話したあと、質問をいただく。

「親との関係はどうでした?」
「周りにはどんな大人がいました?」

もう、ズケズケと聞いてくる。
(いや、「聞きにくいですが……」と、前置きはあったけれど)

ここまで来ると、「イヤだ」とか「恥ずかしい」という感情もなくなり、だんだんおもしろくなってきた。

「もういいや。なんでも来いっ!」

できるだけ丁寧に質問の受け答えをして、いよいよケース会議が始まった。

50人くらいの参加者が、タナカの過去を見ながら、「こういう関わり方があったかも?」「こうしたらいいのかな」と考えている。

途中で、気になるとこがあれば自由に質問していただくことにしていたので、いろんなグループから呼ばれる。

いろんな質問をいただくうちに、過去のことについて詳しく思い出してくる。

指摘されて、気がついたことも多くあった。

僕には、信頼できる大人がいなかった。
気軽に相談できる人がいなかった。

思春期の自分は、親にも先生にも頼ることはできなかった。

親に弱みを見せるなんて、プライドが邪魔をして、一切話さなかった。

中学生のときは、“不登校”という概念を知らなかったから、我慢をして学校へ行っていた。

学校以外に居場所はなかったし、「学校へ行かない」という選択肢を知らなかった。

自分だけでなんとか解決策を見つけようとして、必死にもがいていた。

「なにかあれば言うてくれ」という先生からは、胡散臭さしか感じなかった。

友達にも、しんどい胸の内は一切話せなかった。

弱いところは、誰にも見せるべきじゃないと思っていたから。

僕には頼る人もいなくて、どうしたらいいかも分からなかった。

結果、不登校と引きこもりの時間は3年にも及んだ。

「自分のように苦しんで欲しくない」と思って、今の団体を立ち上げた。

生徒が「経験したタナカさんだからこそ信頼できます」と言ってもらえるのは、ありがたい。

自分の不登校経験もあながち無駄じゃなかったと思える。

不登校と引きこもりを経験して、不登校支援をしている人はそれほど多くないだろう。

実際、「タナカさんのように経験者がおこなっている団体、東京や関東にありませんか?」と、問い合わせもいただく。

だからこそ、僕は自分の経験を活かさないとダメだなと感じている。

今回、恥ずかしい気持ちになりながらも、自分のことを赤裸々に話せたのは、良い経験になった。

もっと、不登校の経験を話していこうと思う機会にもなった。

タナカを素材にしたケース会議は、参加者にとっても、すごく楽しい。

具体的だから「どうしたらいいか?」をじっくり考えることができる。

以前、生徒だった小学生がこんなことを話していた。

「僕は生まれつき体が弱かったんです。だから、お医者さんにたくさん世話になりました。今は、毎日バスケができるくらい元気になった。だから、僕は体の弱い子を優しく見てあげるお医者さんになりたいのです」

僕も同じだ。

不登校を経験して、とてもしんどかった。
辛かった。
頼る人は誰もいなくて、どうしたらいいかも全く分からなかった。

ただ、一人でもがいていた。

今、僕は彼らに手を差し伸べる立場にいる。

「医者になりたい」と言った小学生のように、僕は、不登校の子どもたちにとっての”心の医者”になりたい。

【特典】
今回の講演で参加者の方々にお配りした『よく分かる! 不登校』を無料で差し上げます。

不登校の定義や現状、歴史、原因、傾向、不登校の4つの時期。「統計でみる不登校」など、22ページに及ぶ資料になっております。

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    この記事を書いた人

    1984年 大阪生まれ 立命館大学文学部卒

    中学時代は、部活に打ち込み、勉強では学年で常にトップ10以内。
    しかし、中学3年生のときから学校がしんどくなり、誰とも話さなくなる。
    野球選手を目指し、大阪の野球強豪校へ行ったものの、自信を失い退部。そこから学校へ行かず、河川敷で過ごす毎日をおくる。
    浪人して立命館大学へ入学したものの、なにをしたいかが分からなくなり、行く意味を失う。1回生の夏から1年ほど、京都の下宿で引きこもる。
    友人の支えもあり、復活。政治家の秘書やテレビ制作などのインターンをおこない、期間限定のカフェも開く。「自分のようにつらい思いをさせたくない」と思い、D.Liveを立ち上げる。
    フリースクールや自信を取り戻す教室を運営。不登校に関する講演や講座もおこなっている。
    京都新聞にして子育てコラムを連載中。
    詳しいプロフィールはコチラから

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