地域で育む子どもたちの自尊感情 -皿洗いとあったかご飯が子どもを育む-(講演レポ)
先日、南笠東学区青少年育成学区民会議 すこやかセミナー 第一講にて、「地域で育む子どもたちの自尊感情 -皿洗いとあったかご飯が子どもを育む-」というテーマでお話しさせていただきました。
そこでお話ししたことの一部をこちらでもご紹介いたします。
こんにちは、NPO法人D.Liveの得津です。
今日はよろしくお願いします。
私たちD.Liveは毎週木曜日にTudoToko(つどとこ)という、子ども食堂のような活動をしています。写真にあるように、一緒に勉強したり遊んだり、ご飯を食べたりしながら楽しく過ごしています。
この活動でおこなわれている子どもと大人の関わりが、知らず知らずのうちに子ども達の自尊感情を育んでいました。今日は、その理路についてお話しすると共に、今の思春期の子ども達の心理について知るきっかけになるようなお話をさせていただきます。
TudoTokoでは、上でお示しした写真のように、一緒に食器を洗ったりしながら、学校や友だちのことについて子どもとお話しするんですけど、子どもと話すときは聞き役に徹することが多いんです。
例えば、テストの成績が悪かったとグチをこぼす生徒がいたら、私たちは「へぇ、そうなんや。何点やったの?」「そっかぁ、問題が難しかったんかなぁ?」「なるほどなぁ、自分も点数悪いときあったなぁ」のように質問したり、相槌を打ったりしながら話を聞いています。
これ、きっとお家だったら「今回のテスト悪かった」って子どもが言ったら、「だから勉強しときや!って、ゆうたやん」みたいな答えが返ってくると思うんですよ。お家の人から。
こういう返し方を心理学の分野では、正したい反射といいます。禁煙や禁酒の場面でもよくありますよね。「体に悪いって分かってても、ついつい吸っちゃうんだよねぇ」「いやいや、やめようよ」みたいについつい反射的に正論を言ってしまうこと。
正したい反射って、反射だからついついポロッと出ちゃうんですけど、なんとなくお気づきかと思います。つい言っちゃった正論は子どもをちょっと嫌な気持ちにさせます。反対に、これをグッと堪えられると、自尊感情を育むという点ではめちゃくちゃいいんです。だって、本人としても勉強しないといけないのは分かっているわけで、それでも話を聞いてほしいから言葉にしたわけじゃないですか。そんな中で正論を言われると、「分かってるよ!」と売り言葉に買い言葉で、子どもから本心じゃない言葉が返ってきちゃいます。
自尊感情って、「良いところも悪いところもどんな自分でもかけがえのない自分」として、受け容れる気持ちのことを指すのですが、この気持ちは大人からの判断や評価では育ちません。
話を聞き、受け容れてくれる他者の存在を通して、自尊感情は育まれます。以前、私がお世話になった大学の先生は、わたし個人の居場所になってくれる人、つまり「こいびと(個居人)」を子ども達は求めているとおっしゃっていました。そういう意味で、自分の話を聞いてもらえることは、子ども達にとってめちゃくちゃ大事だし嬉しいことでもあります。
とはいえ、お家だと聞き役に徹するってどうしても難しい。自分の子どもだからこそ、やっぱり正したい反射が出ちゃうと思うんです。
そこで、今日お集まりいただいた皆様のような地域の大人の出番です。
たまに子どもと関わる立場だからこそ、100%子どもの味方になれると思うんですよね。
私がTudoTokoで生徒の話を聞くときは、100%子どもの側に立つことを意識しています。
「先生が女子ばっかり贔屓しているねん!だから先生嫌い!」と言った子がいたとしたら、すぐに「それはイヤやなぁ。腹たつものもわかるわぁ」って言います。
先生が女子ばかりを贔屓しているのか、実際のところはわかりませんよ。もしかしたら本当はその子の勘違いかもしれないし、逆に男子ばかりを贔屓しているのかもしれない。私が直接その先生を見たわけではないから確認のしようがない。確認できないからこそ、そこの真偽を明らかにするのではなく、子どもの気持ちをまず受け止める。受け止めて、本人の中にあるイライラを出させることを優先したい。
こういう話の聞き方って、地域の大人だからこそできることです。だから、皆さんにも地域の子どもたちと会う機会があったら、100%子どもの味方になれるような話の聞き方をしてほしいんです。
「うんうん、そうなんだ」
「それは、嫌だったねぇ」
「嬉しいねぇ」
どんな話が出るか分かりませんけど、そうかそうかと受け止めるように聞いてあげてほしいんです。そうやって気持ちを受け止めてくれる大人が増えるだけで、子ども達の自尊感情が育っていきます。自尊感情が育まれれば、自然と子ども達の意欲も上がり、将来にもポジティブなイメージを抱くことができます。
TudoTokoでは、地域の方が作ってくれるあったかいご飯を食べながら話すことで、子ども達が日常で感じるさまざまな気持ちを受け止めてきました。皆さんも、皆さんができる範囲、できる形で地域の子ども達の気持ちを受け止めてくれればと思います。今日の話が参考になれば幸いです。
今日はありがとうございました!