【講演レポート】勉強のやる気を高めるために大切なのは、今の学校での授業スタイルを知ること
こんにちは。
D.Liveスタッフの得津です。
9月7日(土)に三重県名張市の児童家庭支援センター「あかり」さん主催の講演会で、「子どものやる気を高めるコツ 〜子どもの心に響く聴きかたと話しかた〜」というタイトルで講演させていただきました。
そこで、学習意欲を高めるためのアプローチについてお話ししたので、こちらでもご紹介いたします。
まず、学習意欲が低い理由からお話ししますね。
学習への意欲がわかないのは、生存不安よりも学習不安の方が高い状態にあるからです。
いきなり知らない言葉を出してごめんなさい。
生存不安というのは簡単に言うと「このままだとやばい」という危機感のことです。学習不安は、「問題の解き方がわからない」とか、「間違えたらどうしよう」とか勉強することに対する不安感のことです。
先ほどもお話ししましたが、学習に向かう気持ちにならないのは、生存不安よりも学習不安の方が高い状態。
つまり 生存不安<学習不安 この状態にあるからです。
理屈としては、生存不安を高めるか学習不安を下げれば、少しずつ学習への意欲も向いてきます。
生存不安を高めるには、「テストの点数が悪いとスマホ没収だ!」とか、「宿題忘れがこのまま続くならお小遣い無し!」とか、そういう罰を与えることです。
けれど、この講演に来られている方はお気づきかと思いますが、この生存不安をあおる方法を多用すると子どもの自己肯定感や自尊感情はどんどん下がります。「失敗したらどうしよう」という危機感で勉強するので、子どもが勉強そのものを好きになることも見込めません。
実際、D.Liveの教室に来ている生徒の中にはこのようなペナルティを課されている子どもがいました。テスト前の提出課題が出されて間もないときはすごく勉強するのですが、次第に息切れして、テスト2・3日前にはもう勉強へのやる気がなくなってしまいました。もうお分かりかと思いますが、テストの結果も悪かったのでゲームは没収されたそうです。
ですので、生存不安を高めるよりは、学習不安を下げた方が良いです。
では、どのように学習不安を下げるのか。そのためには学習や勉強を分解して、子どもに合ったポイントを押さえましょう。
『あなたの子どもはなぜ勉強しないのか(喜多徹人著)』では学習を以下の3つに分類しています。
・Teach (教えてもらう)
・Study (覚える、整理する)
・Training (練習する)
Teachは学校で普段うけている授業、Studyは単語帳や用語カードでの暗記、Trainingは問題集や過去問を解くことをイメージしてください。
学習不安を下げるためには、まずこの3つのうち、どの部分に子どもが苦手意識を感じているのかを知る必要があります。ぼくの見立てでは、最初のTeachでつまづいている子どもが多いです。
授業が難しいのは、先生の言ってることがわからないということではないんです。同じ教室にいるクラスメイトの言ってることから授業内容を理解することを求められるから、授業が難しいんです。
というのも、今の学校で行われている授業はとにかく先生の話を聞いて重要な単語を覚えるという授業から大きく変化しました。
具体的には言語活動という活動を取り入れることが各教科で求められています。
たとえば、国語だと
「このときのごんぎつねの気持ちについてペアで意見を交換してください。意見を交換した後、相手の意見と自分の意見で違うところと同じところを見つけましょう。」
だとか
「グループでこの物語の1〜6場面の中で、お気に入りの場面を話し合い、どんな意見が出たかをグループでまとめて発表しましょう。」
というような、ペアやグループで話し合う活動が授業の中で行われています。要は、子ども同士で話し合う場面がとても多いのがいまの時代の授業です。かつての、先生の授業を聞いて大事な単語を覚えるだけの授業とは明らかに違う能力を、いまの子ども達は求められています。
例で出した活動では、
・自分の意見や考えを持つ
・相手の意見を聞く
・相手と自分の意見の違いを考える
・グループで出された意見をまとめる
このような能力が必要です。
これらの能力は言ってしまえば、職場で行われているようなミーティングに必要な能力です。
レベルが高いんですよ。いまの授業って。
子どもが「学校の勉強難しい」とこぼしても、「授業が難しいのは、あんたが先生の話聞いてないからや!」という言葉が通じない時代になりました。
だって先生が教えるよりも、子ども同士で意見を交わして授業内容を理解していくのがいまの授業ですから。
そんな授業を受けている子ども達に対して、保護者が学習不安を下げるためにできるサポートは何でしょうか。
まずは聴くことです。
「学校の授業でどんなところが難しい?」
「ペアやグループで話し合うことが多いって聞くけど、話し合いって難しい?」
そういうことを聴きながら、どこにつまづきを感じているのか考えてみることです。
・自分の意見や考えを持つことにつまづく場合
原因としては、問題文で聞かれていることが理解できていない。もしくは、意見や考えはあるけど書いてる間に時間切れになることが考えられます。サポートとしては、問題文の中に難しい単語はないか。丁寧に書こうとしすぎていないか聞いてみてください。
・相手の意見を聞くことにつまづきがある場合
よくある話ですが、話している人の方を見るように言ったり、相手の声が聞こえにくい場合は繰り返し説明してもらうようにお願いしたりすることがサポートの1歩目です。
・相手と自分の意見の違いを考えることが難しい場合
相手の意見を聞くときに、同じ言葉や似たような意味の言葉を言っていないかどうかに注目して話を聞くようにしてください。高学年以降になると、そもそも根拠や背景が違う場合がありますから、何を基にして考えたかに注目する。あるいは何を基にして考えたかを含めて相手に説明をお願いするようにしてください。
・グループで出された意見をまとめるのが難しい場合
これがなかなかやっかいで、そもそも誰がまとめるのかグループで探り合うところから始まります。そうなるとクラスの人間関係に首をつっこむことになりかねません。お家でできるサポートとしてはそこには踏み込まず、正解例を示してあげるのが良いんじゃないかと思います。
「Aさんは、○○と言いました。Bさん、Cさんは■■という理由で□□でした。Dさんの意見は時間がなくて聞けませんでした。」
これを言えるだけでも小学生のうちは立派です。
まとめ:授業参観では話し合いの場面に注目を
補足も入れながら、講演でお話ししたことをご紹介しました。学習意欲を高めるためには、子どもが学習の何に不安や難しさを感じているのかを知ること。特に、いまの授業は親世代が受けてきたものよりも、子ども同士で話し合う場面が多いので、授業そのものが複雑になっており、子どもも授業が難しいと感じやすいものになってること。話し合い活動のサポートとして家庭でも出来そうなことをお伝えしました。
もし授業参観の機会があれば、話し合いの場面が実際にあるのか。あるとしたら、それはどのような形で進んでいて、どこが難しそうかを注目して参観してみてください。
最後になりますが、子どもの学習意欲を高めたり、やる気スイッチを入れたりするのに一番の近道は、家族が寄り添うことです。これを言えばやる気が出るというようなものはないので、子どものやる気を高めたいとお望みでしたら、できる範囲でお子さんの学習内容や授業に関心を寄せてみてください。
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