不登校の解体新書をつくりたい。

フリースクールを始める前のこと。
まだ、不登校のことについてやっていないときのこと。
不登校については、誰かが活動をやっていて、解決策なんかもしっかり出来ているものだと思っていた。
けど、不登校の仕事をはじめてみて、それは勘違いだと気がついた。
フリースクールは足りていないし、参考になる本や専門家も少ない。
「なにもない」と言ってもいいくらい、分からないことだらけだった。
子どもと接しながら、自分なりに理論をつくってきた。
最初は、「自分たちだけかな」と思っていたけれど、講演や講座をして、「うまくいきました」と言った声をきくようになってきた。
不登校で悩んでいる親子を減らしたいという一心で、全国で講演。
不登校連続講座の参加者は、2年で100名近くになった。
YouTubeもはじめて、「なんとか少しでも……」と思ってやってきた。
毎日のようにくる相談メール。
フリースクールは、どんどん生徒が増えている。
でも、このままじゃダメだと思う。
頼ってきてもらえるのは有難いけれど、いくらガンバったところで僕なんかたかがしれている。
不登校相談の掲示板をのぞくと、「え? まだここで悩んでいるのか?」と思ってしまうことがある。
もったいない。
知っていれば、ほとんどの悩みを解決することができる。
でも、知らないからどうしたらいいかで困り、悩む。
なにが分からないかも分からない。
どうしていけばいいかも分からない。
みんな分からないから、「とりあえず、見守りましょう」なんていうあやふやな応えしかもらえないのだ。
なんとかできないのか?
なにができるか?
アタマの中にある知識を検索したとき、「杉田玄白」という言葉にヒットした。
「そうだ! 解体新書だ」と思った。
不登校の解体新書をつくれば、みんなが分かるようになるんじゃないのか、と。
江戸時代。
鎖国の影響もあり、人体についてよく分かっていなかった。どんな臓器があるのか。どのようになっているのか。
そんな状況のときに、人体について詳しく書いた本『ターヘルアナトミア』を手に入れた杉田玄白は、前野良沢と一緒に翻訳をはじめた。
そもそも日本にない言葉もある。
それでも、彼らは一文一文を翻訳していった。
江戸が大火事になって混乱しているときでも、手を止めることはなかった。
彼らのような大事業が出来るわけじゃない。
でも、どんな人でも不登校のことについて、ちゃんと理解できるようにしていきたいと思った。
分かるだけでも、多くの人が必要以上に悩まなくて済む。
「分かること」「知ること」が重要なんだ。
そんな、「分かる」ものを作りたい。
そう思って作業を始めた。
悩みを分析し、なにが分かればいいのか。なにを知っていればいいのか。
前を向いている人とずっと悩んでいる人ではなにが違うのか。
比較し、キーポイントを探していく。
ややこしいものじゃない。
見て、簡単に分かる。
誰でもとっつきやすい。
そんなものを作りたい。
年が明けたときには、プロトタイプといえる試作版ができているように、取り組んでいる。
為すべきは人にあり。成るべきは天にあり