子どもたちの力がぐんと伸びる「計画と振り返り」って、具体的に何をやってるの?【TRY部 授業レポート】

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弊団体では、毎週月曜日と金曜日の夜間に「TRY部」という教室を開いています。

ここでは、勉強や教科学習を教えることはありません。そのかわり、毎日の過ごし方や計画、目標をとことん事細かく決めて、日々の生活の中で小さな自信を育んでいくことに特化しています。そして、その計画がいくら破綻しても、逆に目標を完遂しても、必ず何があったのか見直すことにしています。

不登校の子どもたち向けに昼間開いている「昼TRY部」とは違い、夜の「TRY部」では日々学校に通う子どもたちも通っています。ただし、中には毎日学校に通いながら学校がしんどい、生活がつまらない、とカミングアウトする生徒もいて、よくワーク中にお悩み相談会がはじまったりもします。

さて、いま書いた「毎日の過ごし方や計画、目標をとことん事細かく決めて、それを実行してみて見直す」ということについて、教室に興味のある方からたびたび質問をいただきます。これを我々は「計画と振り返り」と呼んでいますが、ざっくり書けば以下の4つの段階に分類できます。

  1. 月間目標を決める
  2. 今週の「ルーティン目標」を決める
  3. 一週間を振り返る
  4. 月間目標を振り返る

まず月初の授業で1.を行い、その後毎週2.と3.を繰り返し、月末の授業で4.をやることで1ヶ月が終わります。で、翌月最初の授業でまた1.をやる・・・というループです。具体的にどんな授業や振り返りをやっているのか、それぞれまとめていきましょう。

1. 月間目標を決める

目標は、基本的にはなんでもOKということにしています。勉強面に関することはもちろんのこと、生活面を見直す目標を立てる生徒も多くいます。中にはゲームの攻略に関する目標を立てた生徒もいました。

ここでは例として、僕が今年の1月に実際に取り組んだ目標をなぞって書いていきます。

個人的な話ですが、職場でダンスを披露する機会がありまして、1月の目標には「ダンスを人に見せられる程度にマスターする」ことを設定しました。この1月の目標、要するに月間目標は「ぼやっとした言葉を使わない」ということが大きなポイントです。

たとえば「ダンスをがんばる」という目標だと、「がんばる、ってどういう状態を指しているのか」が実に不明瞭です。必ずハッキリとした到達点がわかるような表現で月間目標を組み立てていきます。目標設定にあたって、スタッフはこういうぼやっとした表現に関しては徹底的に指摘します。

僕の場合は完璧ではなく「人に見せられる程度」というのがミソ。つまり、とりあえず形になっていればそれでOKというスタンスで目標を考えました。

2. 今週の「ルーティン目標」を決める

ダンスを人に見せられる程度にマスターする」と決めたのなら、これに向けて実際に動き出さなければなりません。ここで重要になってくるのが「ルーティン目標」。つまり、「1週間、この目標に向けて何をやるの?」という段階です。

完璧でなくても人に見せられる程度にダンスをマスターするには、やはり1にも2にも実際に踊る必要があります。それと、目標を設定した時点で目まぐるしく動く立ち位置をほとんど把握していなかったので、ある週のルーティン目標には以下の項目を設定しました。

  • 通しで50回(週)踊る
  • YouTubeに上がっている練習動画を20回(週)観察する

ここでのポイントは「できる回数になっているか」。たとえば「通しで1日100回踊ります」という目標を設定しても、確かにこれができればキレッキレのダンスが完成するかもしれませんが、時間的制約などを考えれば不可能なのは明白です。ルーティン目標は「毎日できること」でないといけません。

そうではなくて、自分のできる範囲で、現実を踏まえて設定するのが非常に大事です。これは「自分がどれくらいできるか」自分の中でしっかり把握できている必要があります。また、あえて回数を設定するのではなく、1日の中でその行動ができればOKというルーティン目標を設定することもあります。

もっとも、ここで決めたルーティン目標を完璧にこなせるのは大人でも至難の業だったりします。そこで、次の段階が活きてくるわけです。

3. 一週間を振り返る

TRY部では、この「一週間の振り返り」という時間をものすごく大事にしています。

まず目標で決めたこと以外に何かできたことはないか、そしてこの一週間どんな出来事があって、どんなことを思ったのか。スタッフと生徒がペアになってインタビューし合います。それを踏まえて、月間目標から導いた先週の「ルーティン目標」の結果を振り返ります。

ルーティン目標を振り返る項目は、4つ。

まず目標に対する「詳細な事実」。これは実直に書く必要があります。できなかったのならば「できませんでした」。もしくは、毎日できなくても週に何日かはできてたり、水曜まで覚えてたけど木曜以降はすっかり忘れてた、ということもあります。とにかく、あったことを可能な限り記録します。

次に「原因の分析」。なぜ、水曜まで覚えてたけど木曜日以降はできなかったのか。逆に、毎日できたのはいったいなぜなのか。できなかった原因はもちろん、ここではできた原因も振り返ることがポイントです。意外と見落としがちな成功の要因も振り返っていきます。

さらに、「本音の感情」。そのルーティン目標に手をかけるときにどんなことを思ったのか。ルーティン目標をやらなかった自分の気持ちはどうだったのか。これもまた実直に書く必要がある欄といえます。

最後に、「次どうする?」。その目標がやっぱり無茶だったのなら、もう少しレベルの低い目標を考える。または、逆に楽勝だったのならばもうちょっと高い目標にしてみる。あるいは全然違う目標を設定する。この欄がしっかり書けていれば、今週新たに立てるルーティン目標を作るのも容易になります。

以上4つの項目を、ある週の僕のルーティン目標に落とし込んだのがこちらの図です。

前の週、「通しで50回(週)踊る」「YouTubeに上がっている練習動画を20回(週)観察する」と設定していた目標は、仕事が忙しかったこともあり達成できませんでした。そこでこの週はぐっとハードルを下げて、YouTubeで練習動画を1回でも観たらOKということにしました。

ダンスの練習動画は5分に満たないものなので、ちょっとしたスキマ時間にぱぱっと観ることができました。ということで、このルーティン目標は見事達成。もう少しレベルを上げても良かったのですが、ダンス自体が前の週末に本番を終えたということで、今回は違う目標を立てることにしました。

4. 月間目標を振り返る

毎週のTRY部では以上のうち2.と3.を繰り返します。そして、毎月の最終授業日になるといよいよこの月間目標を振り返る段階を迎えます。

2019年1月の目標は、全員以下の3項目を軸に振り返りました。

  • 月間目標の実現のために何をやったか
  • 目標実現のために行動して、どんな気付きや学び、発見があったか
  • その気付きや学び、発見は今後どう活かせるか

で、僕の1月月間目標「ダンスを人に見せられる程度にマスターする」をこの3本の柱になぞらえて振り返ると、こうなります。基本線は毎週振り返るルーティン目標と共通しています。

1月はこの振り返りから得られた教訓をひとつ抜き出して「名刺交換会」を実施しました。僕ならば「思ったよりダンスって楽しいぞ!」というのが1月の教訓。互いに名刺に記した教訓を交換しあって、「これはどういうことですか?」「なんでそう思ったのですか?」ということを聞き合いました。

以上がTRY部が行っている目標や計画を立てるサイクルとなります。そして、昨日の授業は2月最初になるので、再び1.を立てるところからスタート。そしてまた2.と3.を週ごとに繰り返し、2月最後の授業で4.を実施します。

ちなみに昨日の授業では「チェックの鬼」も登場して、その目標でひと月大丈夫なのか、本当に「自分のためになる」目標になるのかみんなで確認し合いました。

まとめ

TRY部では生徒はもちろんのこと、スタッフも一緒になって目標の振り返りをしています。つまり、TRY部に関わる「大人」も一緒に月間目標を立てて日々を過ごしている、ということになります。

TRY部にはいま、D.Liveスタッフ3名の他に、大学生スタッフが3名、社会人スタッフも4名関わっています。もちろん目標達成に向けて生徒へアドバイスを送る役割が主ですが、ときに社会人スタッフの目標に中学生の生徒が辛辣な意見を出すこともあります。もちろんそれもOK。

かつて任天堂が出した「MOTHER2」というRPGには「大人も子供も、おねーさんも。」というキャッチコピーがつけられていました。今のTRY部は、教室というより「大人も子供も、おねーさんも。」みんなで目標達成に向けて刺激しあう場になっています。生徒とスタッフが互いに意識する目標もあるほどです。

率直に言うと、きちんと目標を立てて1日を過ごしていると、大人の側でも非常に生活に張り合いがある気がするのです。ただただ漠然と1日を過ごすよりも充実しているのは確かです。きっと、進路や将来のことをたくさん考えなければならない中高生に置き換えると、大人以上に意味のあることだと思います。

目標が分からない、何をすればいいのか分からない、何になりたいのかも分からない。そんな子どもが増えているという話をよく聞きます。でもそれは、「月間目標を決めて、それに従って日々の計画を立てるすべを知らない」だけなのかもしれません。それはもちろん、社会人になっても絶対に役立つ能力です。

「TRY部」にご興味のある方は、下記の画像よりまずは見学をお申し込みください。なお、現在はスタッフの募集は停止しておりますので、どうぞご了承ください。

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山本 駿

山本 駿

NPO法人D.Live スタッフ / 高校非常勤教員(社会科) 京都出身。中学3年間不登校。岐阜県内の大学を卒業後、不登校ボランティアを経て2014年よりD.Liveに参画。主にTRY部や不登校講演事業を担当しながら、今を生きる子どもたちの先生でも友達でもない「ナナメの関係」になることを目指しています。