不登校の子どもたちに寄り添えるバーテンダーになりたい。
「不登校の子どもたちが行ける昼の場所を作ろう」
ある日のことだった。
僕は、意を決して、スタッフに言った。
不登校に関わる仕事をしていて、会うたびに保護者のかたに言われた。
「昼の場所を作ってください」と。
でも、僕自身は、「いや、でも……」と思っていた。
コストの問題は省いても、大きく心に引っかかることがあったから。
それは、「他にも居場所はあるのに僕たちが作る意味はあるのだろうか?」と思ったから。
フリースクールや不登校支援をしている団体は、他にもあるので、僕たちでなくてもいいと思う。
同じものを作る必要は、ない。
だから、お願いされても、僕はなかなか「やりましょう」という気には、なれなかった。
でも、ある日のこと。
1人の保護者さんに、「なんとか作ってくれませんか?」と、強くお願いされた。
僕は、しぶしぶ「じゃぁ、考えてみますね」と言って、そのかたと別れた。
正直、「やっぱり、ちょっと難しいです」と返事をしようと思っていた。
けれど、さすがになにも検討をせず、無下に断るのは申し訳ない。
そこで、「僕たちが不登校の居場所を作るなら、どんなところにするだろうか?」と、考えてみた。
考えてから、答えを出せばいい。
そう思い、紙に向き合い、考えてみた。
すると、思いついてしまったのだ。
「これは、おもしろいな」という考えに。
「これなら、僕たちがやる必要がある」と思い、保護者のかたに連絡した。
「やります! 4月から昼の居場所はじめますね」と、言った。
授業カリキュラムは、ない。
タイムスケジュールも、ない。
やることも、ない。
え? いったい、どんな場所?
そう思われるだろう。
でも、僕はそれでいいと思った。
いや、それがいいと思ったのだ。
他のところは、カリキュラムも充実している。
勉強を教えてくれる時間もある。
けれど、僕たちは、その全てをおこなわない。
別に、勉強を教えてもらいたかったら、その場所へ行ったらいいのだ。
同じものを作る必要なんて、ない。
僕たちにしかできないことをするから、この居場所を作るのだ。
まぁ、ほんとのところで言ったら、なにをするのかわかりにくいし、誰がここの場へ行かせようと思ってくれるのだろうか、と不安になる。
でも、いいんだ。
僕たちは、収益よりも、集客よりも、大事にしたいことがある。
それは、子どもたちの成長だ。
1人1人の子どもが成長できる場所を作るためには、一切妥協をしたくない。結果、生徒が集まらなくても、仕方がない。(いや、ほんとに来ないとすごく困るけれど)
それくらいの気持ちで、この居場所をはじめた。
僕は、この昼の居場所をBARみたいな場所にしようと思っている。
生徒はお客で、僕たちスタッフはバーテンダーだ。
バーテンダーには、優しい止まり木と言う意味がある。僕たちは、子どもの止まり木になるのだ。
疲れたとき、しんどい時、イヤになったとき、いつでも迎え入れてくれるような場所。
そんな居場所を作りたいと思った。
このBARには、メニューがない。オーダーはすべてお客さんに任せる。
何がしたいのか、何が欲しいのか、どうなりたいのか、すべては子ども次第だ。
僕たちバーテンダーは、お客さんにこう問い掛ける。
「さて、ご注文は何にいたしましょうか?」
僕たちから何かを進める事はない。メニューを用意することもない。こうしたほうがいい、これがある、こんなのはどうでしょうか、なんて言わない。
バーテンダーはあくまでも引き立て役。
主役は、お客様。
お客である子どもは、こう答えるだろう。
「ちょっとわからないです」
バーテンダーを笑顔で答える。
「大丈夫ですよ。では、一緒にお好みのカクテルを考えていきましょう」
「甘いカクテルがお好みですか? アルコールはお強いでしょうか? 今まで飲んだ中で好きだったカクテルは? 好きなリキュールのお好みはございませんか?」
相手の話を聞きながら最適なカクテルを思い浮かべる。
この人には、どんなカクテルが合うだろうか?
何を出せば喜んでもらえるだろうか?
一人一人、好みも違えばアルコールの強さも変わる。
疲れている人、悩んでいる人、泣きそうになっている人。
それぞれに合うカクテルは変わってくるからこそ、僕たちバーテンダーは、お客様のことを理解し、好みを聞き、最高の一杯を作るのだ。
だから、僕たちは初めから何も用意しない。決められたカリキュラムを作らないのだ。それぞれの子に合った、最高の一杯を作りたいから。
さぁ、今日もまたお客様がお越しになられた。中学を卒業すると料理の道に進みたいと言う。
さて、今宵はどんなカクテルお作りいたしましょうか?
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