思春期の子どもが「わからない」ときの特効薬〈おとなTRY部レポート〉

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(このイベントレポートは、5月27日(土)に南草津でおこないました
『思春期・反抗期の子どもへの向き合いかた』の講義録です)

 

思春期の関わり方

 

まずは、思春期についての理解からいきましょう。

“思春期”や“反抗期”ってなにかって言うと、バランスが崩れるのが原因です。

体の成長が始まるんですよね。

男の子なら、声変わりをする。
女の子なら、生理がくる。

体はどんどん変化する。

でも、心はそれまでと一緒。
体の成長に心がついてこない。

だから、不安定になるのです。

不安になるし、モヤモヤする。
ささいなことでイライラする。

自分でも、どうしてこんなにイライラするのかわからないくらい。

それが、思春期です。

 

思春期になると、ピーターパンから卒業する

このグラフを見て下さい。
これ、各学年でとった自尊感情に関する統計です。

「自分は好きか?」「自分に良いところはあるか?」などの18項目を聞いているアンケート結果。

これ、学年があがるにつれて、グラフは下がっていますよね?

ざっくり言うと、自信が減っていっている。

なぜか?

これには、“全能感”というのが影響しています。

思春期くらいになると、だんだん自分を客観的に見ることができます。

小学1年生に、『夢』について聞くと、「プロ野球選手」や「アイドル」など、とても大きな理想を掲げる子がほとんどです。

しかし、高学年になると、「保育士」や「エンジニア」など、現実的なものが増えます。

それは、客観的に自分を見ることが出来るようになったからです。

「私は、クラスの〜くんよりも勉強ができない」
「僕は、運動ではクラスで5番目くらいだな」

周りと比較し、自分のポジションを把握していきます。

そうやって、全能感(万能感)を手放していくのです。

全能感とは、「自分は、なんでもできる」という感覚です。
「なんでもできる」と思うから、低学年の子は、大きな夢を描きます。

でも、周りの子と比較し、失敗することを通して、だんだん全能感を手放しいくのです。
客観的に自分を見るようになっていく。

全能感がなくなるとどうなるか?

自信がなくなります。
「なんでもできる」と思っていた自分が、実は「なにもできない」となってしまう。

だから、思春期になり、全能感を捨てた子は、「どうせ……」とか「なにやっても無理」と言うのです。

しかし、これは悪いことではありません。

他の調査でもこのグラフと同じ傾向があります。
どんな子でも、思春期になると、自信がなくなっていくのです。

だから、全能感を手放すのは、成長に必要な過程なのですよね。

もし、全能感を手放すことなく、大きくなってしまうと、“ピーターパン症候群”といって子どものまま大人になってしまいます。

ピーターパンを卒業するのは、子どもにとって成長の1つです。
そして、「なんでもできる」という全能感を捨て、自信を探す旅に出ます。

中学3年生になると、グラフがあがっていますよね?
これは、自分の進路などが決まったり、やりたいことが見つかったからです。
「これならできる」「私は、これをする」というものを見つけたことで、小さな自信になるのです。

今まで持っていた根拠なき自信を手放し、小さくても確かな自信を得ていくのです。

 
 

どうして、子どもは親や大人に反抗するのか?

思春期は、親離れをする時期でもあります。

今まで、親の保護下にいた子どもたちが、少しずつ巣立っていく準備をするのです。

小学生くらいのときまでは、大人が面倒を見る必要がありました。
だから、言うことも聞くし、なんでも話してくれる。

でも、「巣立とう」としている子は、だんだん親から離れていきます。
脱皮をはかるのです。

だから、自我が強くなり、言うことを聞かなくなります。

これも、成長の1つです。

もう、思春期になると、親の言うことを聞きません。
自分で考えて行動をするようになります。

反発しているというより、我(が)が出てきたといったほうが良いかもしれません。

なので、思春期の子は、もう自分の保護下にいると思わないでください。

親から見たら、まだ子どもです。
でも、本人はそう思っていません。

着々と大人になる準備をしているのです。

抵抗したくて反抗をしているのではなく、もがきながら、親からの脱皮を図っているのです。

 
 

放っておくと心配。干渉すると反発がくる。どうすればいい?

今日のご質問でもありましたね。
「思春期の子とどうやって関わったらいいかわからない」というもの。

難しいですよね。

今までどんなことでも話してくれたのに、中学生くらいになると、全然話してくれない。

どうしてかって言うと、自我の目覚めによって、情報公開してくれなくなるんです。

低学年とかは、もう全部情報開示してくれます。
でも、思春期になると、ロックをかけるのです。
自分の情報を外に出さない。

だから、「なにも話してくれない」というのは、思春期には良くあることです。

でも、かと言って「じゃあ、放っておこう」となると、心配になりますよね。

そこで、オススメなのは、“ヒット&アウェイ方式”です。

ボクシングの技なんですけど、打ったらすぐ離れるというテクニックなのです。

こんな経験ありませんか?
お子さんを褒めたとしますよね。「すごいやんっ!」と。
でも、子どもは「いや、うるさいし」と、少し反発する。
すると、「なんなの? こっちは褒めてあげているのに!」(怒)みたいな。

お互いにイライラしてしまう。

これ、まったく得じゃないですよね?

思春期の子は、親に対して素直になりにくいです。
“脱・親”がテーマなので。

そこで、ヒット&アウェイ!

なにか言うときも、少しだけ言って、離れるのです。

「すごいやんっ!」と言って、その場を離れて台所へ行く。部屋を出る。

物理的に離れる。

これが、“ヒット&アウェイ”です。

言葉を置いてくるイメージ。

なにを言っても聞かないと諦めるのではなく、こちらとしてアクションをかける。
でも、リスクがないように、言ったら離れる。

関わり方が難しかったら、この“ヒット&アウェイ”を繰り返しながら、どんな言葉がけならうまくいくか、どんなふうに反応するかを見ていけばいいのです。

「おっ! このパンチは当たるぞ!」といったように。

 
 

阪神の金本知憲監督方式でいく

金本監督って、すごいなぁと思うのですよ。
若手をどんどん抜擢して、使うんです。

若手にチャンスをあげる。

先日、ある若手選手が試合で大きなミスをしました。
金本監督は、イスを蹴り上げて激怒するほど。

でも、試合が終わり、会見で監督はこう言いました。

「僕たちの指導不足です」と。

決して、選手を責めない。

そして、驚くことに、翌日もその選手を試合で使うのです。
前日にミスをしたのに。

これなにかって言うと、“出番”と“機会”を与えているんですよね。

「試合に出る」という出番。
「ミスを取り返す」機会。

すると、選手は奮起しますよね。
「監督の期待に応えたい」と思う。

今、阪神が好調なのは、金本監督のこういった選手との関わり方も大きいんじゃないかなと僕は思っています。

この方法、ご家庭でもぜひ採用していただきたいのです。

“出番”と“機会”をどんどん与えてあげてください。

うちの団体がおこなっている中学生の居場所では、みんなでご飯を食べるんですよ。
食事が終わったあと、子どもたちに言うんです。

「洗い物したいひとー?」と。

すると、「やりたーい」と言って、率先してみんなが洗い物やってくれるんです。

これ、“機会”であり、その子の“出番”ですよね。
本人たちは喜んでやってくれるのです。
嬉しそうに。

やっぱり、“出番”があると嬉しいんですよね。
学校の係活動とかもこの考え方からきています。

どんなことでもいいのです。

お子さんに、どんどん“出番”を作ってあげる。
“機会”を作ってあげる。

すると、自信になる。
「役に立っているな」と思えます。

阪神の選手みたく、意気に感じるのです。
「期待に応えたい」と思います。

たとえば、食事を作ってもらうのとかいいですよね。
全てを任せてみる。

コツは、具体的なオーダーをすること。

「なんでもいいから作って」ではなく、「美味しいカレーを作って」のように。

ミッション(指令)があると、子どもは燃えるのです。

「予算 2,000円で、家族4人分のカレーを作って」などのお題を出して、任せてみる。

一緒に買い物に行って、そこでお金を渡して、自分で選ばせてみるのもいいですよね。

大事なのは、途中で口出ししないことです。
金本監督は、選手がミスしても一切怒らないと言います。

なにも言わず見守ってくれると、「信頼されているな」と思えるのです。

でも、口だしをされると、「なんやねんっ!」となってしまう。

だから、ミッションを出すのであれば、最後まで口を出さない。手も出さない。
ケガなどを防ぐ以外は、黙る。

もしかしたら、ものすごくまずいカレーを作るかも知れません。
残念な結果になるかもしれない。

でもね、それは大きな経験なのです。
本人が考えて、作ったのだから。

工夫して、作ったことは、「良くやった」と認めてあげる。
その上で、「味、イマイチだわ……」と、フィードバックする。

「次は、もっと美味しいカレー作ってね」と言えば、本人は「次は、こうしようかな」「もっと美味しいカレーを作りたい」と思います。

自分が全てやったので、言い訳できないのです。

もし、途中でなにか口出しをされていたら、「美味しくなかったのは、あのとき、いろいろ言うてきたからやん」と、なにか別の原因にするでしょう。

だから、子どもだけで取り組ませることが大事なのです。

料理など手間のかかることだけではありません。

「アルプラでトマトを買ってきてね」と言えば、ただのお使いです。

しかし、「草津で一番美味しいトマトを探してきて」と言えば、それはもう立派なプロジェクトになります。

その子にとって、少し難しいくらいの課題を与えてあげる。
すると、子どもは「やってやろうじゃないか」と思えるのです。

 
 

子どもと恋人のように付き合ってみる

クラスに好きな子がいるとしましょう。

まず、どうしますか?

その子のことをもっと知りたいと思いますよね?

どんな音楽が好きなのか。
好きなブランドはなんなのか。

好きなものを知ったら次は、どうしましょう?

たとえば、音楽は『ゆず』が好きだと知ったら、あなたは今まで聞かなかったとしても、『ゆず』を聞くようになると思います。

相手が関心を持っていることに、自分も関心を持つようになると思うのです。

もっともっと知りたいと思いますよね?

子どもとの付き合いかたも、こんな風にしてはいかがでしょうか?

思春期の子は、なかなか自分から話をしてきません。
聞いても、「別に」と言うくらい。

ならば、こちらからどんどん関心を持っていけばいいのです。

子どもがハマっているゲームをしてみる。
好きなマンガを一緒に読んでみる。

僕も思春期の頃、親とはほとんど会話をしませんでした。
しかし、唯一、話すことがあったのです。

それは、“阪神タイガース”でした。
「今日は、勝ってる?」「誰が打ったん?」

短い会話も多かったですが、会話をするキッカケにはなっていました。

「話す話題がない」ならば、作ればいいのです。

好きな子とだったら、なんとか会話したいがために、相手が関心ある話題を知ろうとしますよね?

それと同じです。

「親だから……」ではなく、目線を子どもと同じ位置に下げてみる。

すると、子どもも「おっ!」となるのです。

 
 

ライオンのように崖から突き飛ばす

“出番”のところでも言いましたが、どんどんチャンス(機会)をあたえてあげるのです。

少し難しい課題をあたえると、子どもも「やってみよう」となります。

僕は、中学3年生の生徒をひとり旅へ行かせたことがあります。
長野県への1泊2日。携帯電話も持たずに。

帰ってくると、まるで別人のような姿になったのです。
もう、わかりやすいほど自信がついていた。

「自分でやってみる!」というのは、子どもにとってとても大きいのです。

大人が「もしかしたら、できないかも……」と思うようなことでも、積極的に背中を押してみる。

ライオンが崖から子どもを突き飛ばすように。

 
 

その子が好きなことをどんどんさせてみる

「どうやったら、子どもの良さを引き出せるか?」というご質問がありましたが、これ簡単です。

好きなことをどんどんさせてあげたらいいのです。

お子さん、韓流が好きとおっしゃっていましたよね?

でしたら、もうとことん韓流にハマらせてあげてください。

韓国ドラマをどんどん見せる。
ペヨンジュン作品を全て見せる。
韓国映画を見せる。
などなど。

まずは、1つの興味や関心をどんどん深めていく。

すると、どうなるか?

韓国の映画やドラマだけではなく、文化に興味を持つかもしれない。
韓国語を勉強したいと思うかもしれない。
韓国に行こうと思うかもしれない。

1つのことを深めていくことで、知識や関心は、どんどん広がっていくのです。

初めから、いろんなことに興味を持たせることなんてなかなかできません。

「子どもの強み」と言われても、そんなスグに見つかるものでもありません。

だからこそ、今、その子が興味を持っていることがあれば、もうとことんハマらせるようにするのです。

僕は、子どもたちに口酸っぱいほど、「マンガを読め!」「アニメを見ろ!」「ドラマを見ろ!」と言っています。

面白かったら、そこから好奇心って溢れてくるのです。

今、『キングダム』って中国の始皇帝のマンガを僕は読んでいます。
すると、もっと中国史を知りたくなってきたんですよね。
それで、世界史の教科書を買って勉強を始めました。
もっと知りたいなと思って。

はじめから、「本を読め」と言っても、難しいんでよね。
文字を読むのになれていないので。

それなら、マンガやアニメ、ドラマ、映画。
いろんなコンテンツに触れるようにして、好奇心を刺激していく。

すると、どこかで“ハマる瞬間”がやってくる。

そのお膳立てを大人がしてあげればいいのです。
あとは、子どもが勝手に走っていきます。

 
 

思春期の子どもたちから、「あの人は、わかってくれる」と信頼される理由

普段、僕がやっている教室には小学6年生から高校生までが来ています。
不登校のお子さんとの面談もあります。

そこで、子どもたちから、相談を聞く機会も多くあります。
初対面の子でも、すごく良く話してくれる。

どうしてか?

それは、正論を言わないからです。
ただ、「うん、うん」と聞いているのです。

たとえば、お子さんが先生の愚痴を言ったとしましょう。
普段、なんて言っていますか?

「先生のこと、そんな風に言ってはダメでしょ?」と、たしなめることありませんか?

子どもとの関わりで大事なのは、“傾聴”です。
ただ、じっと聞いてあげる。

別に、子どもの発言を肯定する必要はないのです。

「あの先生、もうダメダメやわ」と言われたときに、「そうやな。お母さんもあの先生は、ダメやと思う」となると、先生を敵にしてしまいます。

そうではなく、ただ、「うん、うん」と聞いてあげ、共感してあげたらいいのです。

「先生のこと、ダメダメやと思うんやなぁ」と。

「宿題したくない」と言えば、「そっか。したくないなぁ。お母さんも宿題めっちゃ嫌いやったわ〜」と、言ってあげたらいいのです。

これも同じ。

目線を子どもに合わせる。
子どもの感情に寄り添う。

チューニングをするように、子どもと自分の感覚を合わせてみるのです。

 
 

親は、子どもに背中で語る

思春期で悩むことって、いっぱいありますよね?
わからないことだらけだと思います。

僕も同じです。
高学年女子が、ほんと難しい。苦笑

でも、そこで「私は、ダメだ」とか「子育てに向いてないい」と思う必要は、全くありません。

僕は、親ができることって“背中を見せてあげること”だと思うのですよね。

よく子どもたちが言うのです。
「勉強しろって言うけど、親は全然やってないやん」って。

「いやいや、子どものときやってたよ」と言っても通用しません。

子どもが見ているのは、“今”なのです。
ならば、子どもが宿題をしている横で一緒に勉強すればいいのです。

子育ての本を読む。
絵の勉強をする。
学びたかったことを深めてみる。

どんなことでもいいのです。

「勉強する姿勢」を見せることで、子どもに背中で語るのです。

僕が今、高校数学の勉強をしているのも同じです。
自分がやっていないと、「勉強しなさい」って子どもに言えないんですよ。

でも、やっていたら、説得力がでる。
なにより、子どもの大変さが肌感覚で理解出来る。

すると、「勉強しんどいよね」って言葉にも、重みが出るのです。
だって、今まさに自分が感じているから。

大事なのは、子どもと一緒に学んでいくっていうこと。

思春期って、親離れであると同時に、親にとっての子離れでもあります。

お子さんと一緒に、ぜひ悩みながらも、楽しく学んでいってみてください。

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田中 洋輔

田中 洋輔

1984年 大阪生まれ 立命館大学文学部卒 中学時代は、部活に打ち込み、勉強では学年で常にトップ10以内。 しかし、中学3年生のときから学校がしんどくなり、誰とも話さなくなる。 野球選手を目指し、大阪の野球強豪校へ行ったものの、自信を失い退部。そこから学校へ行かず、河川敷で過ごす毎日をおくる。 浪人して立命館大学へ入学したものの、なにをしたいかが分からなくなり、行く意味を失う。1回生の夏から1年ほど、京都の下宿で引きこもる。 友人の支えもあり、復活。政治家の秘書やテレビ制作などのインターンをおこない、期間限定のカフェも開く。「自分のようにつらい思いをさせたくない」と思い、D.Liveを立ち上げる。 フリースクールや自信を取り戻す教室を運営。不登校に関する講演や講座もおこなっている。 京都新聞にして子育てコラムを連載中。 詳しいプロフィールはコチラから