子どもがツラく当たってきたら―その行動、「試し行動」かも?

学習支援の場において、子どもがスタッフ(大人)に対してやけに横柄な発言をする場面が多々あります。突然、子どもに「バカじゃないの!」などと暴言を吐かれたりして、「この子に嫌われてるのかな」などと大きなショックを受ける教育従事者の方も多いのではないでしょうか。
こういうとき、「子どもはなぜ大人に対して冷酷な仕打ちをするのか」を考えると、ある答えが見つかります。
「バカじゃないの!」が、実は信頼への第一歩!?
子どもたちは、大人を「信頼する」ために、わざと「バカじゃないの!」と汚い言葉で罵っている、と言うことがあります。
あのお兄さんは「バカ!」と言っても怒らないから大丈夫。でもこのお姉さんに「バカ!」って言うと、ものすごく怒ってくるからお姉さんには言っちゃいけない。こうやって子どもたちはあえて冷たい言葉を大人に投げかけることで、大人たちとの適度な距離感や信頼度を測っている訳です。
こういった行為は「試し行動」と呼ばれ、ある種学習支援ボランティアに携わると最初の関門としても考えられる行動パターンのひとつです。裏返せば、ここで躓いて学習支援を続ける気力を失うボランティアも少なくありません。
また、試し行動のパターンにも様々あり、こうした「言葉の暴力」はもちろんのこと、大人を困らせるような危険な行為、さらには身体的なダメージまで諸々あります。もちろんこういったものをすべて受け入れると、今度は自分自身に大きな影響を及ぼすことになります。そうならないためには・・・。
線引きは、ハッキリと。
TRY部は基本的に「否定しない」スタンスで運営しています。が、このスタンスが、時としてスタッフを大きく戸惑わせることもあります。例えば、授業が始まっているのに違うことに集中していたり、生徒同士が会話に夢中なとき。そんなときは迷わず、こっちに集中するように生徒を促します。
「否定しない」と言うのは、何もすべての行動を受け入れろと言っているのではありません。駄目なことは駄目、という態度を示すのも重要です。
そして、この態度は試し行動をする子どもたちに向けても一緒です。子どもたちが自分に向けて「バカ!」と言うのがいたたまれないのなら、「バカというのを止めて」と頑なな意思表示をしましょう。こうすることによって、子どもたちも「この人にバカと言うのはいけないこと」と認識して、信頼関係を築く足がかりに変えていきます。
教育現場にとどまらず、家庭においても親との信頼関係を図るためにわざと困らせるような行動を取ることがあります。先日、北海道で小学2年生の男の子が家族にわざと置き去りにされて行方不明になったニュースがありましたが、事の発端は男の子が車や人に石を投げたことに対しての「お仕置き」だったと報じられています。
Twitterでは「石を投げたのが悪いんだからお仕置きを受けても当然だ」などという声も散見されましたが、僕はこの石を投げる行為も試し行動の一種なのではないか、と思っています。これは裏返せば男の子が親に対してもうひとつ信頼や愛着を形成することができていない、という表れでもある気がします。
(参考:ママをわざと困らせる「試し行動」の裏にあるもの [子育て] All About)
物事の善し悪しを判別することのできない子どもたちは、良いか悪いかはさておきとりあえず行動を起こして大人たちの反応を見ることによって「これはOK」「これはNG」と学んでいきます。もしもツラく当たる子どもがいたなら、「それは駄目」と線引きをしっかりしながら、この子との信頼を高めていく第一歩なのだと受け入れてあげましょう。