不登校の子どもたちも、心の奥底では「考えている」に違いない―アメトーーク「高校中退芸人」を観て

先週、人気深夜番組「アメトーーク」で、高校中退芸人という企画を放送していました。
アメトーーク自体バラエティ番組なので出演者もおもしろおかしくトークしているところも見受けられましたが、時折「中退したことを後悔している」「いま中退を考えている人は一度考え直してほしい」という発言も出るなど、真面目な中身も収録されていました。
そのなかで、「学校が楽しかった」という高卒の立場で出ていた千鳥の大悟さんが、笑いもない神妙な表情をしながらこんなことを言っていました。
「ワシらのほうが、よく考えたら何も考えずに生きてたんかな、と思いますね」
この視点が、この番組の中で一番重要な視点だったのかもしれない、と僕は直感しました。
出演者の中には「番組内では触れなかったけど、退学後通信制高校に編入して卒業した」と補足した出演者もいるので(参考:紺野ぶるま “高校中退芸人”の表彰受けSNSで「通信制で高卒」を補足|ニフティニュース)、これで言うなら僕自身も高校中退の枠組みに入ります。
そして僕自身がなんで「高校中退」したかといえば、それは教員の圧力に負けたからだと言えます。
僕が最初に進んだ学校は、入学前に見学すると「不登校のヤマモトくんがひとりで見学に来た!」と諸手を上げて歓迎してくれるような学校でした。ところが、入学すると、あれだけ歓迎してくれた教員は、みな鬼の表情をしていました。
静かにしろ。お前何やってんだ。ふざけるな。
たった数日しか通うことがなかった学校ですが、どれだけこんな怒声を聞いたかわかりません。当たり前ですが不登校あがり、しかも非常に繊細な性格で怒鳴り声が耐えられない僕にとっては、それがたとえ他人に向けられた怒鳴り声であったとしても地獄も地獄だったことは言うまでもありません。
裏切られた。
そんな思いでいっぱいでした。その学校の教師は、とにかく「自分たちに従わない生徒はどんな手でも使って従わせる」というスタンスの持ち主ばかりでした。僕が宿泊研修でリタイアを希望したときの教師の対応は、タバコを吸って強制帰宅させられた生徒へのそれといっしょでした。
僕は2時間、しかもほかの客も通り掛かる宿舎のロビーで教師と泣きながら押し問答しました。「しんどいなら帰っても大丈夫」と誘い出した教師はいざそのカードを使おうとすると全力で阻止してきました。最後は校長も出てきて、ようやく解放されることになったのですが、あのときのことは今でもトラウマです。
「ワシらのほうが、よく考えたら何も考えずに生きてたんかな、と思いますね」
この冒頭の大悟さんの言葉。確かに僕も僕なりにちゃんと考えていたのかもしれない、と思いました。
なぜなら、本当に何も考えていないのであれば、ただただその教師の恐怖感、威圧感に服従して3年間を過ごしていたと思うからです。もっといえば、何も考えていないのであれば不登校にもなっていないと思います。ただただ大人が敷いたレールに乗っかっているだけだったでしょう。
ちなみにこの発言には、同じく高卒という立場である司会の雨上がり決死隊の2人も「高校時代考えてないよね」「あの繊細な感じないよね」と同調していました。
正直なところ、高校を2ヶ月で辞めた15歳の僕に、それこそ中退を考えたという記憶は一切ありません。とにかく圧力をかける教員に耐えながらひたすらあの場に通うべきか。それともドロップアウトすべきか。そんなことばかりずっとずっと朝になるまで悩んでいました。
でも、それが学校が楽しかった人達の言う「考えていた」ということなのかもしれません。
そしてこれは、不登校の子どもたちも同じことが言えるような気がします。
ただただ先生の言うとおりに、学校の言うとおりにしておけば、学校という場は淡々と過ぎていく場所です。ちゃんと聞いたことを実践すれば、受験でも有利になるのは確かです。でも、それが耐えられない子もいるのが事実です。
いろいろと考えて考えた末の結論が、いまこうして「学校に行かない」という選択なのかもしれない。
不登校の子どもたちは、学校に行きたくないと言い出したときに理由を話さないことがあります。それは当たり前のことなのかもしれません。自分が学校に対して思っていること、考えていることを言葉にすることが難しいのでしょう。
中学3年間不登校だった僕も、いま思い返すと学校に行けない理由ってよくわかりませんでした。集団行動がだめだったとか、自分が繊細すぎる性格を持っていたとか、大人になってからいろんなことが考えられますが、あの当時はいくら考えてもそれを言語化することができなかった。
でも、確かにあのとき、言われてみれば「考えていた」のは事実です。
不登校の子どもたちは、無意識のうちに、しかもまったく自覚もなく考えているのかもしれません。
そんなときに、「何を考えているの!」「話さないと何も分からない!」などと子どもたちを責めても、余計に閉じこもってしまうだけだと思います。もしかしたら、そう責め立てる大人の方が考えていないかもしれません。
今回の「高校中退芸人」、僕は芸人の世界にこんなにも高校中退者がいたんだという驚きもあったのですが、それ以上に楽しく学校に通っていた人が高校中退の話を聞いて「自分のほうが考えていなかったのかも」という感想を抱いたのが、すごく新鮮で、なかなか表現しにくい嬉しさがありました。
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