ポロッと出てくる不登校の子どもの気持ちの聞き方
「おれさー、いじめられててさ、いじめられたっていうかハブられたっていうかさ。なんかそんなんあって不登校なってん。」
これは先日のフリースクールで、生徒がポロッと言った言葉です。
この言葉を聞いたとき、正直ちょっと驚きました。
自分が不登校になった理由なんて今まで言わなかった生徒だったこと、すごいカジュアルな感じで話し始めたこと、勉強の時間だったこと。これらのことから、私にとっては完全に虚をつかれた形です。
でも、ここで話を聞かないわけにはいかないと思い、勉強に必要なプリントを印刷しながらカジュアル感を出しつつ生徒の話を聞いていました。
生徒たちが帰ったあと、学生ボランティアさんに「あのとき、どんなこと考えて生徒の話を聞いてたんですか?」と聞かれました。その場面ではほぼ無意識に判断して行動していましたが、よくよく考えてみると無意識で動けるに至ったいくつかの背景があったことに気づき、ボランティアさんに話をしました。
この記事では、ボランティアさんに伝えたことをそのままご紹介し、不意に出る子どもの気持ちや本音をどのように受け止めればいいのかの参考にしてもらえたらと思います。
まず、ぽろっと出たような子どもの話をこの写真みたいな態度で聞くのは違うなと思ったんです。
この写真、「君の話を聞くぞ!」って態度がありありと表れていてカウンセリングや上司との人事考課みたいですよね。子どもにとっては職員室に呼び出されたときのように感じることでしょう。どれだけ笑顔でも威圧感が隠しきれません。
『不登校 母親にできること』という本には、不登校の子どもはカタツムリだと書かれていました。恐る恐る自分の殻から顔を出し、何か外からの刺激があるとシュッと殻に引っ込んでしまう。それが不登校の子どもだと。
この本の意見に私は賛成します。これまでの経験からわかってきたんですが、相手の準備が整っていないのに「あれやる?これやる?」と誘ったり、「なんか嫌なことあるんでしょ?言ってみて」なんて話しかけたりすると、子どもは引いてしまいます。自分も失敗してきました。言葉にならない本人なりのペースがあるようです。
聞く姿勢を出すことで、話したい気持ちが引っ込まれてはかないません。今回は、聞く姿勢を強く態度に出すことはやめました。もちろん、いろんな理由から生徒の話を聞くことは重要です。話は聞く。話は聞くけど、この場面では作業をしながら聞く「ながら聞き」をしました。普段、ボランティアさんには生徒の目を見て話を聞くことの重要性をしつこく説いていたので、きっと面食らったことと思います。
これが、「聞いてほしいんだけど」と切り出されたら話は違います。写真のようにちゃんと聞く姿勢を示します。話し手は、聞いてほしいことがあると切り出すことで、あなたに聞いてほしい話があるとメタメッセージを送っているからです。
この辺り、ちょっとややこしいんですけど、今回のポロッと出た場面は、宛先が指定されていなかったんです。私に話しかけたわけでもなく、ボランティアさんに話しかけたわけでもありません。まして、他の生徒に向けたものでもありませんでした。勉強中のプリントに向かって話していました。
でも間違いなく私に向けて話していると確信がありました。だからこそ、真っ先に私が相槌を打ったし、ながら聞きスタイルで話を聞こうと瞬時に判断しました。
態度だけじゃなく、もう一つ意識していることがありました。それは、共感を寄せすぎないことです。「わかるわぁ」とか、「それは辛かったねぇ」なんて言わずに、ひたすら相手の話すペースに合わせて頷くようにしました。理由としては、勉強の時間に話しかけてきたからです。
あくまで、この時間は勉強が優先されると生徒自身もわかっている。例えるなら自分の話は自習時間のおしゃべりと変わらない。しかし、おしゃべりとしてじゃないと切り出せなかった。だから、おしゃべりを本気で聞き、本気で共感を寄せられると、ちょっと困る。「勉強中のおしゃべり」という建前は崩してほしくない。
私は生徒の心理をこのように判断し、聞く姿勢だけじゃなく共感を寄せることを控えめにしました。
自分にとって言葉になりきっていないこと、これを言うことで次の言葉がどう続くか自分でも予想できないようなこと。今この瞬間に生成されているナマモノの思考は、面談やカウンセリングではなかなか言葉になりません。子どもならなおさらです。緊張しますもの。
ご飯を食べているとき、お布団に入ったとき、友だちとお茶しているとき。リラックスしているときにこそ、ナマモノの思考は生まれます。この思考に緊張を生む要素は不要です。聞き手はただただ頷くだけでいい。頷きだけは欠かさないで、たまに目線を合わせて、頭だけはフル回転で理解に努める。
子どもからポロッと本音の話が出たときはこれでいいと思います。
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