なぜ、不登校の小中学生が「2万人」も増えたのか?―平成30年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」から:その1

文部科学省が毎年秋に公表している「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」の平成30年度版データが今年も10月17日に公開されました。
平成28年度・平成29年度と調査結果を踏まえた記事を書いていますが、例によって今年も平成30年度のデータをもとにいろいろと分析していこうと思います。
過去最多、どころか急激に増えた不登校
この調査では、「年度間に連続又は断続して30日以上欠席した児童生徒数」のうち、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない 状況にある者」を不登校と定義しています。なので、病気や経済的理由の欠席は除かれています。
平成30年度の小中学生の不登校児童生徒数は164528人。昨年度からほぼ2万人増加しています(平成29年度は144031人)。そして高校生の不登校生徒数も昨年以上の増加が見られ、小中高生の不登校児童生徒数を合算すると20万人を越えました。
とくに小学生の不登校児童数が昨年度と比べて1万人近く増えており、いよいよその差が1万人を切るほど高校生の不登校生徒数に肉薄する勢いを見せています。また小学生の不登校児童数は調査後はじめて4万人を越えており、高校生を上回る可能性も十分に考えられます。
中学生に関しては1万人以上の増加を見せ、ついに12万人台目前の数値が示されていました。平成13年度に112211人という数値となったことはあるのですが、30年度の数値が過去最多ということになります。
ここで出てくるのが「なぜいきなり2万人も増えたのか」という疑問です。先のグラフを見て分かるように、小学生、中学生とも、1万人前後も不登校が増えた年というのはここ数年でも例がありません。いったいなぜ、こんなにも不登校が増えているのか。
僕はこれについて、要因は多々あると思っています。
まずひとつ大きいのは、不登校支援が「転換期」に入ったこと。
平成30年度は、教育機会確保法により「必ずしも学校に戻ることがゴールではない」と文部科学省が自ら方針転換を打ち出しはじめた時期でもあります。これを受けて、社会全体で「学校がすべてではない」というメッセージが広く発信されているような現象が起こっているように見受けられます。
山田ルイ53世『ヒキコモリ漂流記』、岡田麿里『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』などのように、有名人が不登校経験について本を出版したり、NHKなどが不登校の特集を組み、有名無名問わず経験者がテレビでつらい思いを語ることもなんら珍しくなくなってきました。
これらはすべて、15年くらい前に僕が不登校だった時期には考えられなかったことです。
また、細かいところでは「HSC」(Highly Sensitive Child:人よりも敏感な特質を持つ子ども)の存在がここ数年でクローズアップされたことも考えられます。学校生活や怒鳴り声が苦手なのはその子の特質、という理解が広まって、学校がしんどいことに一定の理解を得られやすい社会にもなってきました。
しんどくなったら学校を休む、という選択肢を考えることに違和感のない社会に、たとえゆっくりでも近づいている証なのかもしれない、という気がします。
おそらく来年公表される平成30年度の不登校児童生徒数も過去最多を更新するであろう、と容易に予想できます。それどころか、今後数年は増加の一途をたどり、毎年過去最多を更新し続けると睨んでいます。
引用:増え続ける不登校の子どもたちに、何が必要なのか―平成29年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」から – D.Live
昨年の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」のデータから読み取った記事でこう書きましたが、この見立ては(自分で言うのもあれですが)正解でした。正直な話、小中学生の不登校児童生徒数が2万人も増えたことに、僕はたいして驚きはありません。
忘れてはいけないのが、この調査結果に当てはまらない子どもたち、たとえば「学校がしんどいとは思っているが、無理しながら学校へ通っている子ども」や「学校がしんどい年間欠席日数が30日以下の子ども」の存在です。
2018年に日本財団が行った調査によれば、こうした「不登校傾向」にある中学生が約33万人いる可能性が指摘されています。もとより文部科学省は「不登校は誰にでも起こりうる」という報告を平成4年に発表しています。僕がたいして驚きがない、と言ったのはここに起因しています。
前述しましたが、今年の小中学生の不登校児童生徒数は164528人です。このペースで行けば、おそらく数年後には小中学生だけで不登校児童生徒数が20万人の大台を越える可能性も考えられます。ですが、仮に実際に越えても僕はなんら不思議に思わないでしょう。
僕がより大事だと思うのは、この「不登校の子どもたちが増えている」現実よりも「じゃあ、この子どもたちをどう支援していくのか?」という点です。
現状、不登校の子どもたちはどんな支援を受けているのか。そして、いま足りていないもの、これから先どんな支援が必要なのか。引き続き平成30年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」のデータから、別記事にて考えていきたいと思います。