アフターコロナの不登校支援と、オンラインで生まれた読み切りマンガから週刊連載マンガへの関係性の変化

 

 

昨日、滋賀県で不登校支援をされている林ともこさん(NPO法人好きと生きる理事)と、youtubeで対談をした。

「アフターコロナと不登校」をテーマに、林さんがこの二ヶ月でされてきたオンラインでの実践や、これからの学校に対する予測などを伺った。

 

どの話もとても興味深くてあっという間の一時間だったけれど、特にオンラインで教科書を読みあう実践の話がぼくの心をグッと掴んだ。この実践は、休校中でもこれまでと同じように勉強がしたい子たちを募って、zoomをつないでそれぞれが持っているまっさらな教科書の中から読みたいものを音読する活動だと教えていただいた。

 

音読を楽しんだり、読み方を工夫したりする単元は、小学校だとだいたいどの学年でも国語の授業の1つに設定されている。ほぼ初対面の子ども達が勉強がしたいという気持ちで集まり、それぞれの音読を聞き合う。はからずも、学校でされるような授業が自然と行われていることに感動した。

林さんの話では。たまたま同じ会社の教科書を使っている子達もいて、一人が読んだ話の続きを別の子が読むなんてこともあったそうだ。

 

オンラインの特性上、少人数だからできる実践だろうけど、一人ひとりの音読を聞き合うこの実践は休校措置で日常が変わってしまった子ども達にとって、とても豊かな時間だったんだろうと林さんのお話から想像した。

(youtubeで林さんと対談した動画はこちらからご覧になれます)

 

 

D.Liveはこの二ヶ月、どんなことができただろう。

教室を全てzoomを使ったオンライン体制に移行し、zoomに入れないなどのトラブルをサポートするためにSlackというコミュニケーションアプリも活用し始めた。それだけじゃなく、休校中に渡されるたくさんの課題を一人で抱え込まなくていいようにオンライン自習室も5月からスタートさせた。

 

自転車をこぎながら問題のあるところ修理するような、とにかく取り組みながら考える二ヶ月だったように思う。

 

自転車を修理したかったら普通は自転車を停めて、まずは問題のありそうな箇所をチェックする。チェーンのサビやタイヤの空気量、ブレーキの効き具合なんかを一通り見てから自転車屋さんにまとめて修理をお願いする。D.Liveで何か新しいことを始めるときも同じで、下調べや会議なんかを重ねてからスタートさせる。

普段のD.Liveだったらこんな急ピッチな対応はしない。

 

例えばSlackの活用を決めるときも、トラブルが起きるのではないか、ルールはどうするのか、どんな活用をするのかを検討してから実施するかを決める。

 

D.Liveでは万が一のトラブルを避けるために、もともと生徒と大人がSNSなどで個人的にやりとりすることを禁止していた(どうしても必要な時だけOKにしている)。だからSlackの活用を決めるときは、抵抗や心配な気持ちもあった。けれど、子ども達の現状は待った無しだった。とにかく関係性を保ち続けるためにもSlack活用を決めたあとは、使いがならルールを追加したり、スレッドを増やしたりしながら最適化していった。

 

 

オンライン自習室にしてもそうだ。本当なら、すでに同じ取り組みをしている所がないか調べたり、ニーズや方法を検討したりしてからリリースする。もしコロナ禍がなくて、これまで通りの日常だったならオンライン自習室は検討もされなかっただろうし、されたとしても三、四ヶ月ほど会議やプレスタートなどを重ねてからのリリースだっただろう。

 

 

子ども達の待った無しの現状に対応するために、とにかく取り組みながら考え続けた二ヶ月。そんな二ヶ月をふり返ると、オンラインツールを活用してから子ども達との関係が変化したように思う。読み切りマンガから、週刊連載マンガに変わった。

 

これまでの教室だと読み切りマンガ。つまり一話完結で、その場限りの面白さや楽しさが中心だった。というのも、D.Liveの教室では週一回だけ通う子が多くて、毎日通う子が多いフリースクールと比べると連続性が薄かった。「昨日のかくれんぼ面白かったし、今日もやろうよ」みたいな会話が出にくいのがこれまでのD.Liveの教室だった。

 

けれど、オンラインに移行してからは休校中ということもあって、生徒と話す機会が増えた。教室の時間に盛り上がった話題の続きがSlackでも投稿されたり、教室の時間に話せなかった悩みを別日のオンライン自習室でこっそり聞いたりできるようになった。

新しいツールの導入とオンラインで参加できる機会を増やしたことで、「昨日のお絵かき面白かったし、今日もやろうよ」と言えるくらい関わりの連続性が生まれた。先週の話を受けて、今週の話が展開できる週刊連載マンガと同じだ。

 

 

全てオンラインなので、これまでのような一体感や face to face の楽しさは減ってしまったけれど、代わりにコミュニケーションを取れる方法が増えたので、子どもとの関わりに連続性が生まれ、気持ちをキャッチできる機会が増えた。

 

6月から本格的に学校も再開される。D.Liveの教室も少しずついつも通りに戻すけれど、この二ヶ月で活用したオンラインツールは残していくつもりだ。昨日の対談で林さんが言っていたが、心のケアが必要な子ども達も増えてくるだろうし、NHKのニュースでも同じような予測をされている方の意見も放送されていた。

 

そうなると、D.Liveがこれまで関わってきた子ども達や、これから出会う子ども達の気持ちを受け止められるようにしたい。取り急ぎのオンラインツールではなく、これからは気持ちを受け止め関わりの連続性をつくるためのオンラインツールになる。

 

子どもの心のケアなんて言われるとカウンセリングだとか、きっちりしたものをイメージしてしまうけれど、多分そうではない。オンラインでもいいから、子どもが心地よくいられる居場所にアクセスすることがケアになる。

 

建前や言い訳は結構大事で、悩みを相談する場所に今から自分は行くのかと思うとそれだけで気持ちが沈むことがある。オンライン自習室でこっそり悩みを聞くことがあるといったけれど、子どもにとっては勉強するという建前があるから参加しやすいし、ついでに話もできるんだろう。

 

大人が何をするでもなく生徒から相談を持ちかけられたときに、支援の意図をわざとずらすことが大事だと何かの本で読んだことを思い出した。言い訳って大事なんだなぁと。

 

 

このコロナ禍で、子どもの居場所を運営している団体の中でもオンライン体制に踏み切ったところは少なくない。まだ感染の第二波が心配されるいまの社会情勢を考えると、オンラインでの居場所もそれなりに残していくんだろうと考えられる。

 

そうなると、利用できる居場所が増えたと見ることができる。以前調べて、「うちの子どもには合わないかもなぁ」と思ったところも別のサービスを始めているかもしれない。子どもが言い訳に使える場所もあるかもしれない。

 

学校が再開されてしばらくした後。子どもの様子から、どこか息抜きできる場所がいるのかもと思ったら、以前調べたところも含めてぜひ一度、オンラインで活動している子どもの居場所も検討してはいかがでしょうか。

 

 

オンライン自習室無料実施のクラウドファンディングが5/31で終了してしまいます。ゴール達成のために最後のご支援を!

 

GW明けから始めたオンライン自習室を無料で子ども達が利用できるためのクラウドファンディング。

いよいよ明日(5/31)で終了していまいます。まだ、この記事を公開している時点では目標額に届いておらず、最後の一押しが必要な状況です。

いただいたお金は、子どもの悩みを聞きつつ勉強のサポートを実現するために必要なスタッフの確保と、スタッフの指導力をあげるために使わせていただきます。

どうか、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

クラウドファンディングキャンペーンサイトはこちら

 

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この記事を書いた人

D.Live副理事/元小学校教員
自分に自信が持てない、自分を好きになれない、そんな人が自分を好きになり前向きにチャレンジできる社会を創るためにD.Liveを立ち上げた。
自尊感情に関心が高く、D.Live内では主に自尊感情に関する事業を担当。

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