フリースクールを運営しているけど、不登校の子どもたちにとってフリースクールがすべてではないよ、という話。

「うちの子、そんなガヤガヤした場所なら行きたくない、って言うんですよ・・・」。
弊団体では「昼TRY部」というフリースクールを運営しています。常時6人~7人程度の子どもたちが思い思いに過ごしているのですが、ある一角では同じゲームで盛り上がり、違う一角ではスタッフも交えて白熱したカードゲームをしていたり、などと、かなり賑やかな部類のフリースクールだと思っています。
あまりの雰囲気に、「本当にここに通っている子どもたちは不登校なのですか?」とびっくりして帰られる見学者の方もいらっしゃるほどです。
しかし、不登校の子どもたちの中には、こうした賑やかな雰囲気を好まない子どももいます。
不登校の子どもの多くは、人間関係に深い悩みをもっています。友達とうまく接することができない、クラスで浮いた存在になってしまう。こういうことが発端で学校に行かなくなることも往々にしてあります。なのに、学校以外の場所で不得意な人間関係を構築することを強いられるわけです。
まして、フリースクールは学校とは違い、少人数の子どもたちが何年もいっしょに過ごしていることもザラにあります。「いまさらこの輪に入るの?」と不安や恐怖をいだく子どもたちがいることも、なんら不思議なことではありません。
「フリースクールに行くぐらいなら、学校に行ったほうがマシだ!」
そんなことを思っている子どももいるはずです。
僕は、それでもいいと思います。
というか、そもそも不登校の子どもは必ずフリースクールに通わなければならない、というほうが酷だと思います。もちろんフリースクールという場所は必要ですし、それぞれ環境やプログラムなど、数多の特色を活かした毎日を過ごしています。日本中探せばどこか合うところを見つけられるかもしれません。
もっといえば、いまは共働き世帯がまったく珍しくありません。お母さんも昼間はパートタイムで働いているという家庭の場合、不登校の子どもをひとり家に置いたまま出勤することになります。もしかしたらそれがお母さんにとってかなり不安な要素になっているのかもしれません。
そういう意味では、フリースクールなど「不登校の子どもが昼間に通える場所」を保護者の方が求めているのは自明の理だと思います。実際に弊団体の「昼TRY部」も、こうした要望がもとになって立ち上げたものです。開設して3年目で生徒数も定員ギリギリという日々が続いています。
ところが、そのフリースクールに実際に通うのは、保護者ではなく「子ども」なのです。
ここだけは履き違えてはいけません。
フリースクールによっては保護者会を組織していたり、弊団体でも「不登校のおはなし会」など、不登校のお子さんを持つ保護者の方々向けのイベントを開いたりしていますが、「フリースクールに実際に通うのは、子ども」という大前提は揺るぎないものです。
部屋にこもってばかりでたまには外に出てほしいという気持ちはよくわかります。人と接することでコミュニケーション能力を磨いてほしいということもよくわかります。でも、それを大人の側でセッティングしてしまうと、それは子どもからすれば「やらされている」に過ぎません。
外に出たくないのに親が連れ出そうとする。ここで断ったら親がいい顔をしないので、しぶしぶ外に出る。あーあ、本当はそんな気分じゃないのになあ。
もしも子どもがこんなことを思いながら、親の意のままにフリースクールへ見学に訪れていたとしたら、どうでしょうか。僕は、ちょっぴり複雑な思いがします。
これまで弊団体にも、こうした「親の気持ちが先走って」見学を申し込みされた方もおられました。もしかしたら「そんなつもりじゃないのになあ」という思いで昼TRY部を見学したお子さんもおられるかもしれません。繊細な子どもはこういうとき、親のメンツを潰さないという体で付き合ってくれるものです。
「フリースクールには、行きたくない」。
「ほかの不登校の人と友達になる気は、ない」。
もしも不登校の子どもがこんなことをポロッとこぼしたら、ぜひそれを尊重してあげてください。この思い、めちゃくちゃ大事です。極端な話、人間関係を築くことはあとから取り戻すことも可能です。いまは外に出ずにひとりでじっくり過ごしたい、その気持ちを大切にしなければらない時期なのです。
ただし、ひとつだけ重要なことがあります。
たとえフリースクールを拒否したとしても、だからといってその子どもを「支援する必要はない」というのは大間違いです。
不登校の子どもたちが笑顔を取り戻せるように、これから社会で活躍できる人材になれるように、大人の側は放置してはいけません。フリースクールに後ろ向きな子どもたちに対して何ができるのか?どういうサポートをすればいいのか?ということだけは、考え続けなければなりません。
もしかしたら、「こういうところなら行ってもいいかもしれない」とある日突然びっくりするようなタイミングで言うことがあるかもしれません。またはフリースクールではない、まったく違う居場所を望むこともあるかもしれません。もちろん「学校へ行く」という選択肢を行使する可能性もあります。
弊団体D.Liveでは、フリースクール「昼TRY部」のほかにも、スタッフが子どもと個別面談する「子どもメンタリング」、また不登校の保護者の方向けには「不登校サポートパック」をご用意しております。こちらは滋賀県に限らず全国各地よりお問い合わせをいただいております。
「フリースクールはちょっと・・・」というお子さんに対しても、なにか選択肢を提示したりいっしょにこれからを考えることのできるサービスがあります。ぜひ、ご検討ください。
サービスの詳細は こちら からどうぞ。