学校が楽しくない子ども達は同調圧力と戦っているかも知れない AERAdot.の鴻上さんの記事から

こんにちは。D.Liveスタッフの得津です。
先日あるメッセージが届きました。
「この記事、得津さんの活動にダイレクトにつながらないかもしれませんが何かの参考になれば幸いです。」
教えていただいたのは、AERAdot.の連載記事「鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい『世間』を楽に生きる処方箋」でした。記事の読者がお悩みを作家の鴻上さんに送り、鴻上さんが記事で答えるという企画です。
ぼくが教えてもらった記事はどうやら企画の2回目らしく、帰国子女のお子さんを持つ保護者さんからでした。
相談内容はこんな感じです。
帰国子女の娘(小5)の、個性的な洋服がクラスで浮いた存在になっています。おしゃれが好きな娘だけど、新しく普通の服を買ってあげたほうがいいのか、それともこれまで通りの自分を貫いたほうがいいのか、どうしたらいいでしょう?
このような相談に対して作家の鴻上さんは、お子さんは日本が宿痾(しゅくあ)として長く抱えている同調圧力の強さと自尊意識の低さがこの問題を引き起こしている。クラスの子がどうこうという個別の話ではなく、まずは日本に根付くこの同調圧力の強さと自尊意識の低さが問題だということ知ってください。そしてこの問題に対して、同調圧力が弱い場所に行くか、戦略的に戦う方法があるのでは。
大まかな要約ではありますが、このようにお答えされていました。
この記事を読みながら、学校の同調圧力と戦っていたり悩んだりしている子どもはこの記事のお子さんだけじゃなくて、きっとたくさんいるだろうなと、これまで私が関わってきた子ども達の顔を浮かべながら考えていました。
学校は同調圧力が強い場所です。いろんな形の同調圧力がいくつもの層になって存在しています。
例えばルールや学校のきまり。ルールやきまりを守ろうとする意識が強い子ほど、ちょっとでもそれから逸脱した人を見つけると「それダメだよ」と注意します。本人は悪気があるわけではありません。むしろ善意からの場合がほとんどです。
他には、友だちやグループの雰囲気や空気もそうです。友だちがチェックしているものは自分もチェックする。グループで行動するときは必ず一緒。意見も一緒。なんでも一緒にしたがる場面を特に女子グループに見られます。こういうことを経験された女性もおられるかも知れませんね。息がつまるのは分かっていても、仲間外れにされていじめられたらと思うと従った方がいいかという気持ちになります。
有名進学校では、とにかく勉強して成績をあげることが支配的なところもあるそうです。学校から帰ってきてもたくさんの宿題が出されて、ついていけないと落ちこぼれのレッテルを貼られてしまうから寝る間も惜しんで勉強する生活だと教えてもらったことがありました。
こういう学校やクラス、友だちグループが持つ独特の空気感や同調圧力は大なり小なり、どの学校にもあります。うまくやれる子もいれば、空気が合わなくてしんどい思いをしている子もいるでしょう。
いま学校が楽しくないと感じているお子さんは、もしかしたらこの学校が抱える同調圧力にやられているのかも知れません。この同調圧力はやっかいで、誰かが作り出そうとおもって作られているわけではないし、圧力のただ中にいる子どもはこれが普通だ、当たり前だと思っていることが多いです。なんか学校楽しくないけど、何が楽しくないのか分からないというのが実際だと思います。
これは考えてみれば当然です。多くの子どもにとっては、今の校区や住んでいる町が生活の中心ですから、他にもいろんな世界があるよと言われてもなかなかピンときません。いろんな世界があるよという言葉が通じるのは、生活の移動範囲が広がった大人や、自分の通う学校とは違う文化の場所を実際に見たり体験したりした子どもだけでしょう。
だから、何か分からないけど学校に行くことがしんどそうな場合は鴻上さんがいうように、今いる場所とは別の場所にいくのも気持ちを和らげる1つの方法です。
もちろん同調圧力をやり込める方法は他にもあります。それはいろんな物語が教えてくれます。
例えば「もののけ姫」がそうです。もののけ姫は自然と人間の共生の物語ですが、同調圧力とうまくお付き合いする物語でもあります。主人公のアシタカは最終的には人間の言い分にも、自然の言い分にも与せず、お互いを行き来する存在になることを選びますよね。1つの場所にだけ腰をおくのではなく、いくつもの場所を行き来することは同調圧力から自由になる1つの方法です。実は「ワンピース」の主人公ルフィも同じソリューションをとっています。
あとは「君に届け」という少女マンガの2巻も参考になります。
主人公の爽子がよからぬウワサをたてられて、友情にヒビが入りかけるんです。けれども、主人公の友だちが勇気を出してこのピンチを乗り越えます。少女マンガですし、恋愛が話の中心なんですが2巻のエピソードだけは違うんです。2巻に収録されているエピソードはまさしく同調圧力に立ち向かっていくお話です。
映画だと「プラダを着た悪魔」がおすすめです。
このお話は、いったん職場の持つ強固な同調圧力に完全に身を染めるのですが最終的にはそれから脱却するという離れわざを見せます。同調圧力の象徴であるメリルストリープ演じるミランダに、アン・ハサウェイ演じる主人公のアンディが別れを告げるラストシーンは本当に痛快です。
学校に行くことがしんどくて休みが続くと、保健室に登校したりフリースクールに通ったり、しんどさを和らげる方法はいくつもあります。ですが、「それは普通じゃない。空気感から外れる行為だ」という理由で、中身もよく知らないまま拒むケースがあります。
そんなときは映画でも漫画でもアニメでも、なんでもいいので物語から力を得るという方法があります。
「しんどさを解決するために見るんだ」と息巻いてマジメに見るんじゃなくて、ただただ純粋に楽しむ中でエネルギーが蓄えられたり、気づきが得られたりします。同調圧力とたたかったり、逃げようとしたりする物語はたくさんあるので、学校がしんどいなと思ったときは単純におもしろそうな話を選んで、たくさん物語にふれてみてください。
D.Liveでは、思春期の子育ての相談を受け付けています。些細なことでも構いません。