不登校の子が劇的に変わるのは、あることを”知っている”から。

ある日のこと。
見学に来られた保護者さんがおっしゃった。
「どうして、そんなにじっくり子どもと関わることができるのですか?」
子どもとの関わりで大切にしていること、どうやっているかを伝えたときだった。
僕は、子どもの話をとことん聞くし、どんどん質問する。
空が青い理由を聞く園児のように、「なんで?」「どうして?」と、子どもにたくさん質問をする。
「しんどくないんですか? やっぱり、ご自身が不登校の経験があるからできることなのでしょうか?」
「あ〜、それはね……」
まるで自慢の宝物を披露するように、僕は少し誇らしげに答えた。
「知っているからですよ」
「え? 知っているから?」
「はい。知っているからです。
もう、子どもが劇的に変わるのを知っているんです。
だから、楽しくて仕方ないんですよ。
ここって壁を乗り越えていったら、子どもは勝手にグイグイ育っていく。
それがわかっているから、そのサポートを僕はしているに過ぎません。
だから、しんどいなんて全然ないんですよ」
そんなやりとりをした数日後。
まさに、“子どもが変わる瞬間”がやってきた。
昼TRY部の生徒と話をしているときのこと。
「体調は、どう?」
「以前よりは、ずっと良いです。ただ、少し眠たいですね……」
「そっか。まずは、寝る時間を決めて、できるだけ同じ時間に寝るようにしようか。
あとは、毎日5分でも外へ出ることが大事だよ」
不登校になると、外出する機会が減る。どこかへ行く用事もないし、人目を嫌うから。
一緒に話をしていた彼も同じだ。
学校へ行けていない罪悪感から、外へ出ることを極端に嫌っていた。
ここの居場所へ来るまでは、ほとんど外出することも出来なかった。
だから、僕は「まぁ、出られたらでいいよ。散歩とかでもいいし」と付け加えた。
すると、彼は驚くことを言う。
「どこか出かけたいんです」
おおおおおお!
僕は、心の中でスタンディングオベーションをした。
きたきたー!
3ヶ月前までは、外へ出ることがほとんど出来なかった。
「行ってみたいけど……」と、意欲を見せるものの、まだ自信がなかった。
でも、今回は違う。
「出かけたい!」と言ったのだ。
僕が、“知っている”と言ったのは、こういうことなのだ。
不登校の子は、学校へ行けるようになる以外の変化は、どうしても見過ごされてしまう。
でも、子どもは徐々に変わっていっている。
一番の変化は、言葉だ。
彼は、前までは「出かけられたらいいな……」だった。
けれど、今度は「出かけたい!」に変わった。
この変化は、大きい。
願望から意欲への変化。
僕はこの瞬間を見ているから、どれだけ時間がかかろうが、子どもと関わることができるのだ。
「おお! いいやん。出かけよう! どこ行きたいん?」
いくつか行きたい場所をあげてもらったあと、彼が言った。
「それと……。サッカーの試合を見に行きたいです」
サッカーが大好きな彼。
半年前には、「行けたら良いよねぇ」と言っていたサッカーの試合。
今は、ハッキリと「見に行きたい」と言っている。
近くの競技場を調べ、チケットの値段などを一緒に調べる。
「あれ? 今度、スペインのクラブチームが来るよ?」
「え? あれ? この監督、元チリの代表監督じゃないですか〜?
うわー! あっ、この選手もおるっ!!」
彼は、サッカーの海外リーグファンだった。
夜中まで試合を見ていることもあると言う。
「これは、絶対おもしろいじゃないですかぁぁぁぁぁぁ!」
さっきまで眠たそうな顔をしていた表情とはうって変わって、キラキラした目で画面を見つめている。
そして、話が落ち着くと、「いやぁ、あと映画も見に行きたいんですよ」
もう、どんどん来る。
「テレビで見てて、ちょっと見たいホラー映画があるんです。行ってみようかな」
スイッチさえ入ると、子どもは勝手にどんどん変わっていく。
まさにこの瞬間が、そうだった。
やりたいことがあふれ出してくる。
こうなると、あとは時間の問題だ。
子どもは、せきをきったように、動きだす。
数ヶ月前までは、引きこもっていた子が、自分でサッカーの試合を見に行く。
知らない人から見ると、「え? なんで?」と思うかも知れない。
けれど、それくらい子どもってのは劇的に変わるのだ。
その瞬間が見られるから、この仕事はやめられない。
不登校の子には、可能性しかない。
どんなことだって出来る。なににだってなれる。
変化や成長は、日常の中に眠っている。
注意深く見ていたら、その変化が見えてくる。
ただ、行動は、なかなか変わらない。
「よし! 今日から学校へ行こう!」とは、簡単にはならない。
だから、まずは意識や意欲が変わるのを目指して、関わっていけばいい。
意識が変われば、言葉が変わる。
「やりたいなぁ」が「やりたい!」に変わる。
そして、そのあとは「やろう!」になっていく。
そこまでいけば、行動がついてくる。
そうやって関わっていくと、子どもが自らやりたいことを見つけて、どんどん行動をしていくようになる。
結果、学校へ行けるようになったり、進路を自分で考えるようになる。
僕は、これからも子どもと粘り強く付き合っていく。
だって、僕は“知っている”から。
◆小冊子『不登校の子が劇的に変わるヒミツ』をプレゼント中◆
下記フォームでお申込みいただくと、
メールにファイルを添付し、お送りいたします。