【京都】探究堂は子どもの好奇心を引き出す場づくりと関わり方がすごかった【出町】

みなさんは、「探究型学習」という言葉をご存知でしょうか。
「探究型学習」とは、1つのテーマに対して仮説を立てて調べてみたり、生徒同士で対話を重ねたり、最後にはプレゼンをしたりしながらテーマについて自分なりの答えを見つけていく学習です。関西圏では、京都の堀川高校が「探究型学習」を推進している一番有名どころですね。
しかし、堀川高校だけでなく京都の出町でも探究型学習を塾としておこなっている所があります。
それが今回ご紹介する「探究堂」です。
探究堂のHPはこちら
探究堂さんへは、この秋に発刊する”子どもの自信白書’16”に掲載するために取材に行かせていただきました。
以前、ライターの大江が取材レポートをあげていましたが、自分が行くのは初めて。
「体験学習」や「総合的な学習の時間」というのは聞いたことがあるけど、「探究型学習」というのは正直耳慣れない言葉でした。なんとなくのイメージはつくけど、どんな学習をしているのがすごく興味津々でした。
約1時間ほど、塾長の山田先生にお話を伺いましたが、探究堂でおこなわれている学習は僕に言わせると「頭の筋トレ」でした。そして山田先生は、すごく優秀な「頭の筋トレ」コーチです。僕が探究堂について、どうしてこう思うようになったのか。実際におこなったインタビューを紹介しますので、みなさん自身で感じてください。
——探究堂を立ち上げたきっかけについて教えて下さい。
山田先生:私の前職が、全日制のオルタナティブスクール「東京コミュニティスクール」でした。そこの売りが探究型学習だったんですね。僕自身そこで、修行していずれは地元でそんな教育を広めたいなという思いがあって、去年こちらに戻ることになって始めるようになったというのがきっかけですね。
——具体的にどんな授業をおこなっているんでしょう。
山田先生:今やってるのは参加する子ども達が一つのプロジェクトにとりくむ、プロジェクト型学習をしています(たくらみコース)。1つのプロジェクト期間が6週間。だから年間で6つのプロジェクトに取り組むことになります。当然、取り組むプロジェクトには答えがない。そういう中で、実際にフィールドワークに出てそこで感じたことを議論したりだとか、新しくこういうことしたらいいのではということを通して、自分なりの意見や形あるものを作っていき、6週間の最後に大人に向けてプレゼンをします。それが一つの区切りとなるプロジェクトですね。
この前は「詩人の旅」といって、子ども達が詩人になるということをやりました。詩人と知っても机に張り付いてるわけじゃなくて、イメージを広げるために実際の詩人と同じように詩作の旅に出るんですね。鴨川デルタに行ったり、動物園や植物園にいったりして、そこで詩を作るんです。詩を作るだけだったら面白くないので、自分が気に入った詩を選んで大人に発表できるように推敲するんですね。自分が一番伝えたいことを、より厳選した言葉の中で自分が伝えることに子ども達が挑戦する。それで最後に、本当に磨き上げた詩の言葉を実際オーディエンスにむけて聞いてもらうというプロジェクトでした。
——子ども同士の話し合いというと、話すことをためらう子どももいると思うんですが、どのような工夫をしていますか。
山田先生:ルールをまず決めていて、哲学対話をするために3つの約束を掲げています。1つは否定しない。2つめは、あきらめずに考え続ける。3つ目は、人の話をしっかり聞く、ですね。結局、自分が意見を言ったときに「違うよ、間違ってるよ」って言われたら、とたんに言う気なくしてしまいます。だから、そうならないようにここでは「否定しない」ということを明示してる。
やっぱり、安心して発言できるって思わないと発言できないから、そこは僕が保証するよっていうことを最初に僕が提示してますね。それはルールを示していると同時に自分もその姿勢で向き合うよって意思表示でもあります。
子どもが言ったことに対して「ん?なにいってるの?」って思うこともあるんですよ。子どもが言ってることだから、語彙が少ないので一見すっとんきょうに聞こえることもあるんだけど、子どもなりにいま話してることをつなげて考えてるのは間違いない。その裏の意図をちゃんと聞くようにしてる。だから、分からないことはちゃんと質問するようにしてる。そこで、違うと思った時は「僕はこう思うよ」っていうようにしてる。単純に「ふんふんすごいね」、ではない。なるほど、君はそう思うんだね。だけど僕はこう考えるけど、それに対して君はどう思うって感じです。これが対話ですよね。僕の意見に対してもなんか言うたりするもん。単に大人が言ってるからってならないですよ。
——たくらみコースのプロジェクトのテーマはどのように決めていますか?
山田先生:一つ言えるのは、そのテーマを設定する時に子どもがやりたいことやってるわけじゃないんですね。詩人の旅って言っても、子どもが最初から詩を作りたいわけじゃないんですよ。子どもからしたら「ええ!?」って感じですよね。「なんで詩つくるの!?」って。
でも結構それが大事と思ってて、やりたいこと突き詰めるのも良いんだけど、一方で大人に限らず社会に出た時にやらないといけないことが急にふってわくこともあるでしょ。それに対して、やったら意外に面白かった思う経験が僕が大事だと思ってて、じゃないと本当にやりたいことしかやらなくなってしまう。それよりもとりあえずまあやってみよかって気持ちの方が大事だなって。
とはいえ、その詩を作るにあたって、詩を作ることを面白く思ってもらえるように工夫はしてるよ。その中で、詩を楽しんでもらうためには、プロの楽しい詩を読んでみてそれで興味関心をもってもらったり、それは当然する。だけど、子どもに「今回は何やりたい?」って聞く感じじゃない。
やることはこれだ!と天から降ってきたみたいな感じですよね。詩人の旅では一番最初に、僕たちは詩を発表するんだっていうが今回のミッションだと話します。だけど、どんな詩をつくるのかは決まってないからそこは試行錯誤する。だから、大人がやってる仕事と同じだよ。ゴールは決まってるけど、その過程はみんなで一生懸命悩みながら進んでいくぞってこと。そこには答えがない。道は決まってないんです。
——山田先生の子ども観について教えて下さい。
山田先生:子どもはみんな好奇心をもっているってことだね。発揮できてるかどうかは別にして。子どもというか、人はみんな知的好奇心をもってるはずだというのが前提だし、それは磨き続けていくことができるはずだというのが前提としてあります。
——なるほど、では探究堂に通う子ども達はどんな風に成長していくのでしょう。
山田先生:保護者の人から言われたのは、一年生の子なんて去年まで幼稚園の年長さんだったわけで、その子が幼稚園の発表会でセリフ一行すら覚えられなかったんですって。出町を歩き回って発見したことを最後に写真一枚で2分間語るっていうプロジェクトで、その子が2分間語ってるのをみて親がびっくりしてたね。こんなしゃべるんやーって。子どもがそんなこと考えたってことを初めて知りましたって言ってくれましたね。
それは別に探究堂に来ただけではないと思うけど、やっぱり話す機会がちょっと増えたと思うんですね。人数少ないから意見求められることも多いでしょ。40人クラスで発言しないまま、ぼーっと終わることもあるけど、ここは「君どう思うねん」って何回も何回も聞かれるから話す機会は当然多くなることが、成長の要因としてあると思いますね。
——話を伺っていると子ども達の学びの過程をすごく大切にされていると感じますが、過程に対する関わりや評価はどのようにお考えでしょうか。
山田先生:評価をネガティブに捉える人もいますが、評価とはよりよくするために、僕はこう思うよっていうのが評価だと思ってるから、僕はつどつど評価をしている。僕は子どもだからこのレベルだろうって線引きはしてしまわないかな。もうちょっと良い表現ないかなぁって、だから子どもからしたら結構大変ですよね。もっとええ表現ないやろうかって。だから努力してることに対しては当然言葉にして伝えるけど、作品そのものについてはこれでよし、このレベルで良しっていう風にレベルを留めてないです。
——ありがとうございます。では最後に子どもと関わる大人へメッセージをお願いします。
山田先生:結果だけにあまり捉われすぎないでほしいですね。結果だけ評価してしまうとじゃあなんかうまくいかないとアカンのかなぁとか、良い結果でぇへんからやめてしまおうかなぁってなってしまう。結果も当然大事だけど、結果に至るまでのプロセスをちゃんと見てあげてほしいなとは思いますね。それまでの過程をちゃんと頑張れたかの方が僕は大事だと思うんです。
というのは、やっぱり結果だけだとマグレ当たりもあるし、マグレ当たりだと次同じことにチャレンジした時結果出ないでしょ。ちゃんと正しい努力をした結果こうなってるんだ。その努力した自分を認める。認めてあげる。本人も認めてあげてられるようになってほしい。
だから、自信について話す時に僕が思っているのは、自信とは自分を信じることであって今までやったことないことや難しいチャレンジでも、やりきったぞという気持ちが積み重なっていけば、次ちょっと高いハードルでもチャレンジできるんじゃないかと思うんです。
単に結果の積み重ねだと、難しいのがきたときにしゅんとなってしまいますから。そうじゃなくて難しい課題にチャレンジしてやりきったじゃないかと。今回も難しい課題だったかもしれないけど、君やりきったよねと。今回も行けるはずだよねっていうことを常にメッセージとして送り続ける。失敗した時は、どこがダメだったのか。次もチャレンジしようって考える安心して失敗できる場をつくってあげて鼓舞するってことをします。そういう場をつくって安心して失敗できるということを僕は意識しているので、大人の人もプロセスを意識するのと安心して失敗できる環境をつくってあげたらいいんじゃないかなとおもいます。
まとめ
子どもだからと見限らず、常にもっとできないかという姿勢で子ども関わる山田先生と、テーマに向かっていく塾生達の様子がインタビューからありありと浮かぶようでした。
僕、この夏は体幹トレーニングに挑戦したんです。1日目は20秒で、2日目は30秒、3日目は45秒とどんどん秒数を増やしていくやつです。僕の体幹トレーニングは探究堂とは違って先生がいなくて、トレーニングの記事を読んで毎日の目標を確認して1人でトライするものでした。でも毎日目標を確認するたびに、記事から「まだできる、まだできる」と言われている気分でした。この体験と、探究堂での学習が重なるんですね僕には。
「まだできる」と言われても、実際トレーニングは苦しいわけですからなかなか頑張る気にならない時だったります。僕はこっそりトレーニングをサボった日もありました。でも、探究堂では山田先生ががんばってるプロセスを認めて、励ましてくれるのですから、子ども達が楽しく学習に取り組めるのだと思います。
山田先生が用意した数々の仕掛けに興味を引かれながら気づけば大人もびっくりするような結果をだし、テーマについても深く思考する力が付いている。探究堂には頭の鍛えるための様々な工夫がされている素敵な場所でした。
お知らせ
今回ご紹介した探究堂さんの記事や、子どもの自尊感情についてのアンケート結果、保護者の子育てホンネ座談会などが収録された「子どもの自信白書’16」は、この秋完成です。作成のためにクラウドファンディング(webでの寄付)を募っております。下のバナーより、詳細や現状の支援総額をご覧いただけますので、ぜひごらんください。みなさんからの温かい寄付をお待ちしております。