ときとして、子どもたちが「先生」になることだってある

僕はよく、子どもたちと関わるときに「教えてもらう」という手段を取ることがあります。
日々、弊団体D.Liveの教室や職場の学校で、小学生~高校生まで幅広い年代の子どもたちと関わっています。とくに職場では「先生」と呼ばれる、いわゆる子どもたちになにかを教えるという立場にいますが、それでも逆に「教えてもらう」ことがよくあります。
それは子どもたちの何気ない一言でその子が何を思っているのか、何を感じているのか、という意味合いの「教えてもらう」ものもありますが、一番教えてもらうのは実は「流行りモノ」だったりします。
たとえば、いま僕が使っているiPhoneケースは「iFace」というブランドのものですが、これは生徒や子どもたちが多く使っているのを見て「それ便利なん?」といろいろヒアリングして買ったものです。そういえば最近購入した「ワイヤレスイヤホン」も、使いごこちを子どもたちにリサーチして買いました。
当たり前ですが、子どもたちは僕よりも流行りモノをよく知っています。それは全国的に流行しているものはもちろん、局地的に流行しているものもたいへんよく知っています。この仕事をしてなかったらまず間違いなく「iFace」は使ってないですし、スプラトゥーンやK-POPの世界も知らぬままだったでしょう。
そういったものを子どもたちから教えてもらうたびに「こんな世界があるのか!」と、いちいち新鮮な気分になります。
それが子どもたちとの会話のきっかけのひとつにもなりますし、僕は教えてもらったものを買ったら買ったで「あれ買ったよ!」ときちんと報告するようにしています。子どもたちとお互い、目を輝かせて買ったものの便利さを話し込むこともしょっちゅうあります。
こういう話をしていると、僕は「大人側はもっと子どもたちに学ばなくてはならない」のではないか、というようなことを感じます。
ときに子どもたちは、「どこから仕入れてきたの?」とびっくりするような知識を大人に披露することがあります。あのポケモンはこういう特徴があってこんな強さがある、とか、あの電車は何々系で、普段はこのあたりを走ってるからこの駅に来るのはめちゃくちゃ珍しい、とか。
確かに大人の側からすれば知らない話かもしれませんし、なんなら興味のない話かもしれません。でも、そういった話を逃して、そのジャンルが学校の勉強に関係ないからといって「で?宿題したの?」という返事をした日には、もう子どもたちの心が離れていくことになるでしょう。
当たり前ですが、子どもたちは「勉強してないアピール」のために自分の知識を披露しているわけではありません。「で?宿題したの?」という返事は「宿題をしないあなたには興味がない」と言っているようなものなのです。実は、僕にもすごく心当たりがあります。とても残念な気分になりました。
そうではなくて、その知識に興味を持つことが大事なのです。それだけで「学び」につながります。僕はこれを「子どもの興味に興味を持つ」とよく言っています。
すると不思議なもので、たとえばある子どもが大好きなアイドルグループがいたとして、ネットニュースにそのアイドルグループのニュースを見つけると「あの子が言ってたのってこれか」と、ついつい読んでしまうのです。そして「こないだのニュース見た?」と、その子との会話の材料にもなるわけです。
これだけではなく、電車好きならばその知識を活かして旅行の計画を任せてみるとか、ゲームをするにあたって操作方法を教えてもらうとか、「大人より子どものほうがよく知っていること」を役立たせる手段はいくらでもあります。
再び僕の話ですが、だいたいのゲームの操作方法や遊び方は子どもたちに教えてもらいました。
たとえば「スマブラ」。僕はWiiU版のスマブラは持っているのですが、Switch版は持っていません。というか、そもそもSwitchがないので、WiiUとはまったく違うリモコンに四苦八苦していました。これも、子どもたちにいろいろと操作方法を教えてもらい、それなりに戦えるようにはなりました。
そして、最近夜の教室「TRY部」がはじまる前にボードゲームで遊ぶ時間を設けているのですが、ここでも遊んだことのある生徒にやり方やコツを教えてもらうことがよくあります。
わからないものは、年齢関係なく素直に頭を下げて教えてもらわなければなりません。
大阪の認定NPO法人D×Pさんで運営されている出前授業「クレッシェンド」の参加姿勢のひとつに、「様々な年齢やバックグラウンドの人から学ぶ」というものがあります。この姿勢は、3年ほど前にクレッシェンドに参加させてもらった僕自身いまだに役立てている姿勢でもあります。
ちなみに、「教える」という行動については記憶力を定着させる効果もあって、菅広文『身の丈にあった勉強法』(幻冬舎)など勉強法に関する本には「エア授業をすると効果的」と論じているものもあります。
「このジャンルに関しては、自分よりもこの子のほうがよく知っている」ならば、変なプライドにこだわらずにいろいろと聞いてみるのが一番の近道です。それが思わぬコミュニケーションにつながったり、子どもの側にも「役に立っている」という実感を持たせるまたとない機会になるでしょう。