合宿が苦手な僕が、高校生の将来を考える合宿を手伝うただひとつの理由。

ある土曜の夜、大阪で僕と代表(田中)はとある打ち合わせに参加していた。
それは、高校生が2泊3日で自分や社会の将来をひたすら考え、企画などで形にして最後に発表する、という合宿。僕ら2人は今回3日間通しでスタッフとして参加する。渡された参加者名簿を確認すると、他にも何人か知っている他団体のスタッフも参加するらしく、おおこの人も来るのか、とちょっと驚いたりもした。
しかし、僕は打ち合わせの間、ある秘密をずっと隠し続けていた。
・・・そして打ち合わせの最後、感想を求められた僕は、思い切って秘密を正直に話した。
「実は僕、合宿と言うのが大の苦手でして・・・。」
子どものころから、「泊まりがけ」の行事がとてもしんどかった。理由はたくさんある。場に慣れるのも苦手だし、今でも旅に出るとひどいときは帰りの電車さえ決めずにノープランで動くこともあるだけに、何時から何時まではこの活動、などときっちり時間を決められるのも苦手だったりする。
僕は「あっ、こいつ怒られるぞ」という行動をしている人を見かけるとすぐに逃げ出したくなるほど「誰かが怒っている」と言う状況が本当に嫌なのだが、例え1泊2日でも寝食をともにする、ということは行動ひとつで「誰かが怒る」可能性もその分増える訳で、常にアンテナを張っていなければならないことになる。
これが、けっこうしんどい。
僕は習い事の関係で、小学校の頃は年に2,3度合宿に参加していた。合宿で浮かれた子どもたちが毎回羽目を外す行動を取ると当然大人が怒るのだが、それが本当に嫌だった。ひどいと、とばっちりが僕に飛んでくることもあった。恫喝まがいの怒られ方もされたこともあって、その習い事を辞める一端にもなった。
寝食をともにするということは自由時間でもない限り24時間常に全員同じ行動を取らなきゃいけない訳で、そこから外れてひとりの空間や時間をもつことは、すなわち「集団を乱す行動」だとみなされるのも、辛かった。
サッカー日本代表のキャプテン・長谷部選手は、たとえ合宿で共同生活を送ろうと1日の終わりに必ず30分ほど自分ひとりの時間をつくり、ボーっと天井を眺めたりして心を鎮めているそうだ。合宿に参加すると、たいてい1日目の夜にひとりぼっちの時間が欲しくなる僕は、この話を聞いてひどく共感した。
そんな僕が、3泊4日の合宿で人生を変えた。
これも自分から行くと言い出した合宿なのだが、正直日が近づくにつれてすごく憂鬱だった。合宿が苦手な人間としては、3泊4日大勢と寝食をともにするというのはある意味死活問題と言っても過言ではない。4日も帰れないのか、と大荷物を抱えて京都駅からバスに乗った瞬間のことはよく覚えている。
合宿の中身は、自分のやってみたいこと、社会の問題点を考え、解決策へ導くような企画を大学生や大人のサポートを得ながら考えること。主催団体こそ違えど、今回僕と田中が携わる合宿とほぼ同じような中身だった。
アイスブレイクからはじまり、毎日みっちりと考えるワーク。どれだけのポストイットを使っただろうか。3日目は特に深夜まで企画を詰めるべく睡眠時間は3,4時間。そして最終日にゲストを招いて企画を発表した。とても長くタフなものだったが、スタッフの方が温かく接してくれたこともあり、なんとか4日間を完走することができた。
そしてこの合宿は、僕の人生を大きく変えた。
ぬくぬくと高校生活を送ってきた僕にとって、少し年上の大学生との交流は、その後の大学受験にも大きくプラスに作用した。ここでの出会いが現在の人間関係の源流でもあるし、その後もちょくちょく交流があるので、この合宿がなければ恐らく今の自分は、ない。
NPOなど、いわゆる会社ではない働き方があるのを知ったのも思えばこのときだった。このころの僕は、将来社会に出て働くことにものすごい不安を抱えていた。でも「こういう世界や社会があるんだ」と気付いた瞬間、なんとなく気持ちが楽になったことも、この4日間で得た財産だ。
最初は憂鬱だった3泊4日も、今なら胸を張って言える。
行ってよかった!と。
だから僕は、3日間の合宿を手伝う。たとえ合宿が苦手でも。
今回お話を頂いたのは、認定NPO法人カタリバが運営している「全国高校生マイプロジェクト」と言う事業のスタートアップ合宿、「関西カイギ@大東」。
打ち合わせの中で詳細なスケジュールの説明を聞きつつ、ああこれは僕が高3のときに参加したあの合宿とそっくりだ、と思った。それは同時に、僕のようにこの合宿を土台として、将来「あの合宿があったから今がある」と思える高校生が誕生する可能性を秘めている、ということでもある。
合宿が苦手な僕が、この「関西カイギ@大東」に関わろうと思った理由は、ただひとつ。
この場に参加した高校生が、「行ってよかった!」と思えるお手伝いをしたいから。
「行ってよかった!」と思える日は、すぐじゃないかもしれない。3日後、数か月後、もしかすると何年も経ってからひょんなところでここで得た知識が役立って「行ってよかった!」と思うことがあるかもしれない。でも、それでもいいかな、と僕は思っている。
非日常の中で、自分と社会の将来について考え抜く3日間が、これを読んでくれている高校生のあなたにとって「将来への土台」になることは、間違いない。学校や塾の往復では出会えないような人たちとの出会いも、きっとプラスになることだろう。
僕もこの3日間がどんな時間になるのか、どんな高校生と出会えるのか、ワクワクしている。
認定NPO法人カタリバ・全国高校生マイプロジェクト「関西カイギ@大東」詳細
2016年10月8日(土)~10日(月祝) @大東市立青少年野外活動センター(大阪府)
参加費:5000円
※大東市の高校生は無料。また、遠方からの参加者には交通費補助あり
全国高校生マイプロジェクトや「関西カイギ@大東」の中身など、詳細は こちらのページ をご覧ください。