26歳、「ナナメの関係」を目指します。

「じゃ、来週のTudoTokoはこういう流れでいきまーす。あ、ちなみに僕は来週お休みです」
「えっ、しゅんおらんの?」
「そうやねん、ごめんなー」
「なんでこーへんの!?」
毎週木曜日夜に草津市役所近くで開催している中学生の居場所事業「TudoToko」(つどとこ)。「毎週」ゆえに参加するスタッフは週によって違うので、たまにこんな会話が飛び出すことがある。
「あれ?今日ひでぼーは?」
「ひでぼー、今日別の仕事で休みやねん」
「えー、聞いてへんわそんなこと!」
そんなやり取りで中学生たちが寂しそうな顔をする度に、彼らにとっての「ナナメの関係」になれているんだなあと再確認すると同時に、ここを居場所だなあと思ってくれているのだと感じると、少しうれしくなる。
私事ながら、先日ひとつ年を取った。
25歳の1年間は不思議なことに子どもたちと関わることの多い1年だった。毎週月曜日のTRY部はもちろん、夏から始まったTudoTokoで中学生と関わるようになった。さらに秋になると、認定NPOカタリバの「全国高校生マイプロジェクト」という合宿にも参画し、たくさんの高校生と向き合う時間もあった。
たぶん、ここまで異年齢の子どもたち、生徒たちと日頃から接する25歳というのも珍しいだろう、と自分でも思う。
そんな1年を通してあることが見えてきた。
子どもたちは、実は心の奥底で「ナナメの関係」を欲しているのだろう、と思うことがよくあった。
ナナメの関係、というのは、「親」「先生」のような縦のつながりでもなく、「友達」のような横のつながりでもない関係を指す。例えば近所のおっちゃんおばちゃんだとか、サザエさんでいえばノリスケや三河屋のサブちゃんだとか、家族を描いたアニメやドラマには大概こういう存在が描かれている。
TRY部では小学生の生徒と「ポケモンGO」の話をよくするし、TudoTokoでも地域のおかあさんの温かい食事をいただきながら中学生と他愛もないやり取りをする。そんな「雑談」から、生徒たちのテンションや様子、今どういう気持ちなのか、を推測することができるし、気が付けば悩み相談に発展することもままある。
しかし、そんな他愛のないやり取りができる「大人」がいる子どもたちは、おそらく少数派だろう。
「全国高校生マイプロジェクト」に同じく参画した弊団体代表は、高校生からこんなことを言われて打ちひしがれる思いだったらしい。
「こんなに話を聞いてくれる大人は初めてです。」
もちろん、何十、何百もの生徒を束ねる中でひとりの生徒の話をゆっくり聞いてたら先生の身体が足りないのは百も承知だし、家事や仕事に忙殺されて子どもたちに向き合う時間が満足に取れないかもしれない。しかし、子どもたちはそれでも心の底で、話を聞いてほしい、分かってほしい、という無言の叫びを発している。
そんなときこそ、「ナナメの関係」にあたる僕たちが、それをキャッチアップしていかなきゃいけない。話に耳を傾けるとまではいかなくても、ノリスケやサブちゃんが「やぁ、カツオくん!」と会えば笑顔で語りかけるように、子どもたちの様子に気をかけることが、無言の叫びに応えることにつながる。
学校だけじゃない、家庭だけじゃない、子どもたちは「社会ぐるみで育てる存在」なのだ。
親にも言えない。先生にも言えない。学校の友達にも言えない。大人ならば学生時代の友人に会社の愚痴を、なんて話をよく聞くけど、まだまだ人脈が広いとは言えない思春期の子どもたちはそんな悩みをどこにも吐けない。これは本当に辛いことだし、周りの大人が助け舟を出してあげないといけないと思う。
「全国高校生マイプロジェクト」に参加した高校生のひとりは、学校でも家庭でも自分の落ち着くところを見つけられない中で出会った「居場所」にものすごく救われたことを打ち明けてくれた。屈託のない笑顔で誰とでも分け隔てなく接する高校生ですら、そんなことを思っていたのだ。
その事実に僕は心が震えた。そして痛感した。
やはり、足りていないのだ。ナナメの関係となり得る逸材と、出会うきっかけ、そして居場所が。
もちろん、ひとつ間違えば不審者と言うレッテルを貼られるこの時代。子どもたちに何をやってもいい訳ではない。一歩関わりを間違えたら信用を失うこともある。しかし、先生や両親ではない「大人」の存在が、子どもたちの成長にとって必要不可欠なのは事実だし、それが「子どもたちを社会ぐるみで育てる」ということでもある。
来月、TRY部は小学部・中高部設立という大きな「変化」を迎える(詳細は後日!)。TudoTokoは年内の予定も固まりつつあり、全国高校生マイプロジェクトにもできる範囲で参画していきたいと考えている。僕は今、小学生・中学生・高校生と「下の世代」の子どもたちとしっかり向き合える、ものすごい環境にいる。
だからこそ、関わる子どもたちの「ナナメの関係」でいられる居場所をつくること。
これが、僕の26歳の抱負だ。