自分のできることを。―熊本地震に寄せて

先日、熊本県で震度7を観測する地震が発生しました。
たまたま地震発生の1週間前に福岡へ遊びに行っていた僕は、地震発生の報を知った瞬間思わず言葉を失いました。九州には友人が多数いますし、大分に親戚もいることもあって、地震発生後1週間は収まる気配がない大きな余震の情報と睨めっこしながらの日々を過ごしました。
大事なのは、「自分のできること」をする、こと。
さて、地震発生後すぐは安否確認情報や被害状況で埋め尽くされていたTwitterのタイムラインですが、時間が経つにつれてライフラインの状況や炊き出し、不足している救援物資、それに地震のメカニズムや断層についての情報がメインになってきました。
それと同時に、自分は被災地に対して何もできていない、と無力感を感じるつぶやき、というのも散見されるようになってきています。しかし僕はそこまで自分の無力さ、何もできないと嘆いて自分を責めるようなことはあってほしくない、と思います。
その人には、その人なりの「自分のできること」があります。もしかしたら仲の良いあの人はすぐに街中で募金活動を始めたり、必死に救援物資をかき集めたり、現地入りして被災者を励ましているかもしれない。でも、他人は他人です。彼らなりの「できること」を実践しているだけ、という見方ができます。
そして、今回の地震に対して「できること」は、救援物資を送ったり、現地でボランティアに携わること以外にも、たくさんあります。
例えば、「これ以上地震が起きませんように」と祈ること。これも立派な「できること」です。その他にも、今この瞬間を必死になって生きることも実は「できること」。しっかり働いて世の中の経済を回し、ちょっとはずんだお給料で募金する、という使い方もできます。近所のスーパーや物産展で熊本の名産を買う、というのも支援になります。
今はそれどころではありませんが、僕は落ち着いたら熊本へ遊びに行き、たらふくうまいものを食べに行こうと思っています。九州は本当に食事が美味しいところが多いですが、もちろん熊本も名物がたくさんある街。大分の親戚を訪ねる旅もしたいですね。とにかく1日も早くにぎわいを取り戻すことを祈るばかりです。
もうひとつ。直接地震に遭遇していなくても「被災者」になり得る、ということ。
Twitterには、熊本地震で倒壊した家屋の映像やSNSの情報、さらに緊急地震速報のサイレン音で東日本大震災のことを思い出した、という方が多くいらっしゃいました。こういうときについて、大阪・毎日放送(MBS)の西靖アナウンサーが、5年前に興味深いツイートをしておられます。
放送局の人間が言う事ではありませんが、しんどくなったらテレビを消して下さい。好きな音楽をかけて下さい。お風呂に入って下さい。これは未曾有の大災害です。みなさんが全てを受け止めようとして心が荒んだり、折れてしまってはいけない。無事な人は心に余裕をもてるように。
— 西 靖 (@y_west) 2011年3月13日
いま、ニュースを観ていると、どこのニュースでも倒壊した家屋や地震発生時の映像を流しています。中には家屋に生き埋めになった人の家族が、大きな嗚咽を漏らしながらインタビューに答える姿も放送しています(こういう映像ってどこに需要があるのか僕には意味がわかりませんが・・・)。そんな映像はやはり辛いものがあります。
そんなときは、この呼びかけのように、目の前のその情報を発する機械の電源を切ることを、強くおすすめします。
東日本大震災のとき、災害によるPTSDというのがひとつトピックとして上がりましたが、実はこのPTSDの症状が出たのは被災地から遠く離れた人の中にもいました。そのほとんどの方々が、次々流れるテレビの津波が押し寄せる映像、SNSの被害情報などに圧倒されて大きくストレスをため込んだのが原因だったそうです。
東日本大震災のドキュメンタリーが放送されるとき、必ず「津波の映像が流れるので気を付けてください」と注意喚起がなされるのは、そういう背景もあってのことです。
災害時は次々といろんな情報が出てきます。情報を拡散していち早く現地に届けなきゃ、という使命感もすごくわかりますが、それは同時にものすごく精根が必要な作業でもあります。生々しい情報と対峙するのはもちろん、その情報が誤ってないか?という精査も必要不可欠になってきます。
淡々とこなしながらも、自分では気づかないほどの大きなストレスを抱えていることもあります。そんなときは、いくら被災地から離れていても「自分を守る」ことも必要です。上記の西アナのツイートのように、すべてを受け止めきる必要はないと考えます。こういった形で被災する、ことがない取り組みも大切だと思います。
このことは「共感疲労」ということばで置き換えられるようで、新潟青陵大学の碓井教授のコラムにも詳しいことが書かれています。こちらもぜひ一読してみてください。
最後になりましたが、今回の地震で被災された皆様にお見舞い申し上げるとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。また、1日も早い地震活動の終息、ならびに熊本の街の復興を心から願っています。