夏休みに自信がついた出来事vol.3「小学4年生のヨーロッパ遠征」

時差ぼけ、恋しい日本食。
味噌汁がこれほど美味しいと感じたのは、はじめてだった。


小学4年生の夏。
僕は、ヨーロッパにいた。

その半年前、「オーストリアにいけるかも知れないよ」とレッスンの先生に言われた。

バイオリンをしていて、オーケストラに入れば遠征でヨーロッパへ行けるというチャンス。

でも、実力的にまだまだの自分はそのままではオケに入るのは難しかった。

遠征メンバーに選ばれるために、必死で練習した。
人生で、あれほどなにかを必死になったのは10年ほど生きてきて初めてだった。

ずっと楽譜とにらめっこする生活。
弾けない曲を何度も何度も繰り返し練習する。
夢に楽譜が出てくるくらいに没頭していた。

なんとかメンバーに選ばれたものの、実力が全然足りない状態。
オケの練習も毎日のように入る中、空いている時間は自主練に当てる。

 

こんにちは、ヨーロッパ

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はじめての海外。胸は高まるばかり。
20時間近いフライトを経て、スイスへ。

そこから、小型飛行機でオーストリアに。
(機内食で食べたスイスのパンがとても美味しかった)

ヨーロッパは、とても美しかった。
まるで映画の中にいるような世界。

ドナウ川を見て、ヨハン・シュトラウス2世の曲が頭の中に流れる。

 

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シェーンブルン宮殿は、とても美しく、今でも中を歩いていたときのことがありありと思い出される。

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正直、当日の演奏についてはほとんど記憶にない。
ただガムシャラに演奏していたのだけは、かすかに覚えている。

でも、終わったあとの満足感だけは今でもカラダが記憶している。
充足感、充実感、達成感。

それまでの時間、ほぼ全てをバイオリンの練習に充てた。
小学生の夏休み。
友達と遊んだり、ゲーム、旅行。

夏休みらしいことは、なにひとつしていない。

今でも思い出すのは、ずっとクラシックを聞いていたことくらい。
それだけの時間を費やし、没頭できたからこその満足感だった。

「もっと練習したかったな」と終わったあとに思ったけれど、「これだけ出来た」とも思えた。
小学4年生、夏の想い出。
このときの感情や経験の全ては、今でも僕の中に生きている。

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はじめて、なにかに没頭した。
「ガンバる」ってことがどういうことかを知った。
いろいろなことを経験した。

ホームシックも味わった。
はじめて海外へ行った。
子どもだけでヨーロッパのまちを歩いた。
近くでプロオケの演奏会も見た。
正直、本番ではそこまでうまく弾けたとは思わない。
まだまだ実力が伴っていなかったから。
それでも、あれだけの準備が出来たのは僕の中で大きな自信になった。

「こんなにガンバれる」って思えた。

なにをやっても続かない。
すぐに興味を失う。

自分のダメなところばかりが目に付く中で、この経験は僕の中に光を当ててくれた。
夏休みが明けて学校へ行って、僕は衝撃を受けた。
クラスメイトの名前を全員忘れていたのだ。

それほど、音楽にのめり込んでいた小学4年生の夏休みだった。

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この記事を書いた人

1984年 大阪生まれ 立命館大学文学部卒

中学時代は、部活に打ち込み、勉強では学年で常にトップ10以内。
しかし、中学3年生のときから学校がしんどくなり、誰とも話さなくなる。
野球選手を目指し、大阪の野球強豪校へ行ったものの、自信を失い退部。そこから学校へ行かず、河川敷で過ごす毎日をおくる。
浪人して立命館大学へ入学したものの、なにをしたいかが分からなくなり、行く意味を失う。1回生の夏から1年ほど、京都の下宿で引きこもる。
友人の支えもあり、復活。政治家の秘書やテレビ制作などのインターンをおこない、期間限定のカフェも開く。「自分のようにつらい思いをさせたくない」と思い、D.Liveを立ち上げる。
フリースクールや自信を取り戻す教室を運営。不登校に関する講演や講座もおこなっている。
京都新聞にして子育てコラムを連載中。
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