もしかしたら、高校生が大人よりも計画力をつけられる日がくるかもしれない

「9月が勝負だな。夏休み明けだし、文化祭もある。ここでのモチベーションが鍵になるなぁ」

僕は、その光景を信じられない気持ちで見ていた。
生徒である高校生が、長期計画を楽しそうに立てているのだ。

「英語は、得意な友達がおるし、あいつに教えてもらったらいいな。あっ、大学行ってる人に大学生活についても教えてもらおうか」

自分で考え、やるべきことを書き出し、計画を立てている。

 

やっと、見つかった……。
僕は喜びよりも、安堵の気持ちで、生徒が計画を立てている姿を見ていた。

ずっと課題だった。
ずっと悩んでいた。

どうすれば、子どもたちが計画を立てられるだろうか?
目標を立て、行動計画を立てることができるのだろうか?

いろいろな方法を試してみた。

“目標達成”と書かれている本を片っ端から読み、やってみた。

でも、ダメだった。
目標が立てられないのだ。

子どもたちに、やりたいことがないんじゃない。
やりたいことはあるけれど、「できる」と思えないのだ。

「どうせ、できひんし……」と言って、子どもたちの手は止まった。
心が乗らないままに、目標を立てる。
もちろん、達成することなんて出来るわけがない。

小さな目標を立てることはできるけれど、いつまでたっても中長期の目標を立てることはできなかった。

今だけを見て、目標を立てているだけでは、計画力はなかなか身につかない。

いつまでになにをしなければならない。
だから、今日はこれをする。
そうやって、目標や期限を意識することが、計画力がついたと言えるだろう。

今までできなかったことをするだけでは、計画力とは言えない。
実行力や行動力は、ついたかも知れない。

でも、それだけでは、これから自分自身で目標を設定して、達成していくことは難しい。
 

僕は、TRY部で子どもたちに、将来に生きる力をつけて欲しいと思っている。

極端なことを言えば、TRY部をさっさと辞めるくらいでいいと思う。

TRY部を卒業しても、自分でやりたいことを見つけ、どうやって実現するかを考え、行動ができればそれでいい。

TRY部は、そうやって自力で生きるための力を養う場所だ。
まるでフィットネスジムのように、筋力を鍛えるところ。

なのに、今のままでは、計画力という筋肉は身につかない。
いつまでたっても、重たいバーベルを上げることはできない。

どんな方法がある?
どうすればいい?
 

いろんな本を読み、その中で「もしかしたらこれなら、うまくいくかも知れない……」
今回も、淡い期待を抱いた。

本を参考にしながら、ワークシートを作る。

「もう、できなくて当たり前だ」と、僕は開き直っていた。

うまくいけば儲けものくらいの気持ちで、資料を作り、授業準備をした。
 

始めた途端、壁にぶち当たる。

「そもそも受験なんてしたくないし、やりたい目標ちゃうねん」と、生徒が言った。

彼にとって、目下の目標は1年後に控えた大学受験だ。
でも、いきなりの前提をひっくり返す言葉。

「うそでしょ?」と内心思いながらも、優しく諭す。

「そうなんやぁ。まぁ、今回は練習やと思って、とりあえずその目標でやってみたら? 別に何回でも書き直してもいいし」

そういうと、「うん……」と、少し腑に落ちないような顔をしながらも、ワークシートに取りかかってくれた。

あぶない、あぶない。

うまくいかないかもとは思っていたけれど、まさか序盤でつまづくとは、思ってもいなかった。

なんとか危機を脱し、次のワークシートを勧める。

今までだと、すぐに手が止まっていた。
すぐに書けないようになっていた。
「もっと書けるのに……」と思ってみていた。

でも、今回はそうならなかった。

次々と文字を書いていく。

「う〜ん、分からへん……」と言って悩むものの、ギブアップすることはなく、ワークシートと格闘し続けていた。

目標やすべきことを考え、半年後までの計画を立てていた。

イヤイヤというより、少し楽しげに。

 

今まで、なにを試してもうまくいかなかった。
ペンが止まった。
「書けない」と、泣き言をいっていた。

でも、今回は違った。

どんどん書いていく。
自分からスイスイやっていく。

どうしてだろう?
どうして今回の方法はうまくいったのだろう?

振り返ってみると、今までやっていた方法と大きく違ったポイントがあった。
ほとんどの計画や目標は、「やるべきこと」を書いていた。
しかし、今回の方法では、「やるべきこと」や「タスク」を書かない。

それが功を奏したのかも知れない。
「やるべきこと」を書かせていないのに、生徒たちは気がつけば、自分でやることを書き出していた。

「そうや。英語得意な友達おったし、LINEの連絡先聞いておこう。うん。2月にできそうやな」と。
 

あれだけ計画や目標設定が苦手だった子たちが、自主的に計画を立てられているのだ。
この方法で、きっと子どもたちはどんどん計画力を身につけていくだろう。
長期的な計画もできて、目標達成の達人への道を歩んでいくだろう。
大学生、いや社会人すらも凌駕するチカラを身につけていくかも知れない。

親が「勉強しなさい」と子どもに言っていたのに、いつの間にか、子どもが「そろそろ洗濯物やったほうがいいよ」と言う日が来るかもしれない。

そんな成長を見せてくれることを思うと、ワクワクしてたまらない。

やりたいことが見つからない。
計画を立てるのが苦手。

そういう子が、TRY部に来て、変わっていくのを想像しただけで楽しみで仕方がない。

子どもたちはどんな計画を立てるだろう。
どんな成長を遂げてくれるだろう。

ああ、子どもの成長が待ち遠しい。
 

 
 

TRY部 体験したいかた募集

対象:中学1年生 〜 大人だけ(保護者のみ)の参加もOKです。
(大学生も参加できます!)

参加費:無料

場所: 草津市立まちづくりセンター(JR草津駅すぐ)

持ち物:筆記用具

受付日:毎週月曜日に体験を受付しております。

時間:19時15分までに草津市立まちづくりセンターの教室にお越しください。

申込み方法:info@dlive.jp まで、「TRY部体験参加」と記入し、お名前と学年(年齢)、簡単な動機、参加希望日を書いてお送りください。

※ お問い合せもinfo@dlive.jpまで

TRY部の詳細についてはこちらから

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この記事を書いた人

1984年 大阪生まれ 立命館大学文学部卒

中学時代は、部活に打ち込み、勉強では学年で常にトップ10以内。
しかし、中学3年生のときから学校がしんどくなり、誰とも話さなくなる。
野球選手を目指し、大阪の野球強豪校へ行ったものの、自信を失い退部。そこから学校へ行かず、河川敷で過ごす毎日をおくる。
浪人して立命館大学へ入学したものの、なにをしたいかが分からなくなり、行く意味を失う。1回生の夏から1年ほど、京都の下宿で引きこもる。
友人の支えもあり、復活。政治家の秘書やテレビ制作などのインターンをおこない、期間限定のカフェも開く。「自分のようにつらい思いをさせたくない」と思い、D.Liveを立ち上げる。
フリースクールや自信を取り戻す教室を運営。不登校に関する講演や講座もおこなっている。
京都新聞にして子育てコラムを連載中。
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