大学生に送るラブレター 『授業は、まるでバレンタイン』
ふと不安になること、あるんです。
このままでいいのかなって。
大学は楽しいし、授業もしっかり出て単位も取れている。
けど、就職とかを考えると、なにかしなきゃいけないとのかなぁと思います。
楽しいのはいいんだけど、果たして充実しているのか。。。
って考えると、ハテナなんですよね。
大学1回生の彼女は、「かといって、なにをしたらいいのかわからないんです」と話してくれた。
きっと多くの大学生は、同じような不安を抱いているのだろう。
僕自身も、学生のときには同じことを思っていた。
なんとなく「マスコミに行きたい」と思っていたけれど、「じゃあ、なにをしたらいいんだ?」と思い、なにもしないまま、ただただ時間が過ぎていった。
(僕の場合は、学校へ行く意味すら失って大学へ行かなくなったけれど、それはまた違う話なので割愛)
今でこそ、NPO法人の代表をしていて講演が出来るくらいになったけれど、大学時代はもう悩んでばかりだった。
大きく変わったキッカケは、インターンシップへ行ったこと。
大学から外(社会)へ出ることで、今まで出会わなかった人に出会い、大学の中では学べない、知れないことを得た。
法人の設立と教室の立ち上げ
高校生のとき、僕は不登校になった。
大学生になっても、なにをしたらいいのかわからずに学校へ行かなくなり、引きこもっていた。
やりたい気持ち、なにか行動したいという気持ちは、あった。
けれど、なにをしたらいいのかがわからなかった。
そして、行動をおこせる自信もなかなか持つことが出来なかった。
僕は運がいいことに、周りの人たちのお陰で一歩を踏み出すことが出来た。
けれど、自分のように苦しんでいる人たち、子どもたちは、日本中にいる。
「自分が苦しさを経験したからこそ、出来ることがある!」と思い、D.Liveという団体を立ち上げた。
現在、TRY部という教室を草津(滋賀県)でおこなっている。
僕がずっとやりたかった中高生向けの教室。
学校でも塾でもない、もう一つの場所(サードプレイス)を作りたいと思って、TRY部という教室を立ち上げた。
今、空き地が減り、子どもたちの居場所がなくっている。
親にも友達にも、言えない悩みを話せる場所が子どもたちには必要。
「ここにいてもいいんだ」
「ここならなにを言っても受け止めてもらえる」という安心できる場所があれば、しんどさを抱えた子でもラクになる。
たとえば、不登校の子。
どうして学校へ行けないのか、子ども自身でもわかっていないことが多くある。
いじめられているわけでもない、スゴく嫌いな先生がいるわけでもない。
なぜか、行けない。
本当の悩みは、親や先生には言えない。
本人ですら気がついていないことすらある。
そういう子たちの受け皿として、TRY部はある。
別に不登校の子だけではない。
自分に自信が持てない。
なぜか、やる気が出ない。
思春期の彼らは、大人が思っている以上に考え、悩んでいる。
勉強をしないといけないのはわかっているし、将来のことも漠然とだけど考える。
でも、そんなことを親や先生、友達には言えない。
高すぎる目標を掲げると「もっと勉強をしろ!」と言われ、夢みたいなことを語ると「現実を見ろ!」とどやされる。
そこまでではないにしても、やっぱり子どもたちは、親や先生に相談するのは苦手だし、あまりしたくないって思っている。
けれど、自分で考えていても答えは出ないし、ただただ悶々とする。
1人で苦しむのは、孤独で、不安だ。
学校に行きたいけど、行けない。
勉強が出来るようになりたいけど、 どうしたらいいかわからない。
そんな彼らのチカラになりたいと、強く思った。
親でも先生でもない、ナナメの関係となって、子どもたちと関わっていきたいと思い、TRY部をつくった。
子どものホンネが見える場所
TRY部は、家族でも友達でもないけど、なんでも言い合える場所やねん。
やりたいことがあったら言うし、失敗したことでも話せる。
どんなことを言っても許されるって雰囲気がある。
「それは無理やで!」と言われるのではなく、「じゃあ、どうしよう」と話し合えるねん。
by 生徒
スタッフは、なにかを教えるということはない。
TRY部のスタッフは、先生ではない。
子どもたちのお兄ちゃんやお姉ちゃんのような存在。
彼らをありのまま受け止める。
「勉強したくない」と話してくれば、「そっか。勉強したくないんやなぁ」と返し、「学校行きたくない」と言えば、「学校行きたくないのか」とただただじっくり話しを聞く。
対策や行動を考えるのは、次のステップ。
まずは、じっくりと耳を傾けてあげる。
しっかりと受け止めてあげることで子どもは初めてホンネを話すことができる。
ホンネは、締めた蛇口から水がポトポト落ちるように、少しずつ少しずつ出てくる。
その小さな水滴を僕たちスタッフは、大事に大事に受け止める。
TRY部は、中高生の生徒(小学生もいるけれど)が毎週通う教室。
システムとしては塾と同じ。
ただ、勉強は教えないし、カリキュラムも全く違う。
授業内容は、どこにもないオリジナル。
いつも「授業なにしようかな?」と考えている。
指導案を作ったことがある人ならば、「きっと授業づくりは、しんどくて大変なんでしょう?」と思うかも知れない。
けれど、僕はいつもワクワクしながら授業案を考えている。
まるで子どもがゲームに夢中で時間を忘れるように、熱中するくらいに楽しい。
授業づくりは、バレンタイン
僕は、授業づくりは、バレンタインのようなものだと思う。
大切な人へ届けるために、どんなチョコにしようか。
味は甘い方がいいのか、ビターなほうがいいのか。
ナッツを入れる?生チョコ?
好みを考え、当日へ向けて準備をする。
箱はどうしよう?
手紙はつける?
どんなシチュエーションで渡そう?
なんて言葉をかけよう?
ドキドキしながら当日をおもい、少しワクワクする。
喜んでくれるかな。
受け取ってもらえなかったらどうしよう?
TRY部の授業づくりも同じ。
相手を想い、反応を想像してはワクワクする。
「ああ、このプログラムやったら、あの子はこんな反応しそう」
「これ、絶対成長出来るな」
バレンタインのチョコ作りをしている人に、「めっちゃ努力しているね!」と言う人はいない。
楽しいし、相手のことを大切に思っているからこそ、時間や手間をかけて準備をするのだ。
TRY部の授業づくりも同じ。
子どもたちに成長して欲しい。
喜ぶ顔が見たい。
キザに言うと、「授業は、“愛”でつくる」ものだ。
チョコに愛情を込めるように、1つ1つのプログラムに子どもへの愛を詰める。
「あの子は、どうやったら学校へ行けるようになるかな?」
「どうすれば、勉強が出来るようになるんだろう?」
考えるテーマは様々で、正解の授業はないので、毎回が手探り。
うまくいくこともあれば、イマイチだったなと思うこともある。
けれど、その先にはご褒美がある。
この仕事をしていて、一番嬉しい瞬間。
それは、生徒の成長を垣間見たとき。
TRY部は、学校でも家でも話せないことが言える場所。
どこにも、誰にも話したことがないことをポロッと話してくれる。
結果、学校や家でも見せたことがないその子の新たな一面や成長を見ることが出来る。
子どもたちの成長を一番に、目の前で見ることが出来る。
これは、お家の人や先生にもない、僕たちだけの特権。
赤ちゃんが初めて立つ瞬間を見た親のように、僕たちスタッフは、そんな感動的とも言える場面を何度も見られる。
成長の瞬間は、いきなり訪れる。
「自信がない」と言っていた小学生が、ある日突然に「ぼく、医者になろうと思う!出来るか出来ひんかわからんけど、ガンバるのが大事やと思うねん。まずは、医学部へ行けるように勉強ガンバるわ!」と話す。
「医者になりたいなんて親に言ったら、どうせムリやって言われるし」と言っていた彼が見せてくれるような変化は、いつだって僕たちの心を捉えて離さない。
ハリーポッターやスターウォーズ、パディントン。
どんな物語も基本は成長のストーリーだ。
TRY部には、映画のような成長物語がたくさんおこる。
大切なのは、行動することよりも決意すること
僕は、学生のとき、なにをしたらいいのかわからなかった。
正解を探し、なかなか一歩が踏み出せなかった。
でも、今になってわかる。
正解なんてなくて、大切なのは直感。
「やりたい!」
「おもしろそう!」
まるで衝動買いのように、ピンッと来たものに反応して、動けばいい。
それがTRY部のスタッフでも、学校を建てるボランティアでも、スクールサポーターでも、なんでもいいと思う。
一歩踏み出せば、景色が変わる。
もしかしたら、踏み出した先にはなにもないかも知れない。
けれど、大丈夫。
一歩踏み出した瞬間に、もう変わる準備は出来ているのだから。
僕は、生徒を見ていて、成長する瞬間は実は行動ではないと知った。
「これやろうと思うねん!」
医者を目指す彼もそうだけれど、行動の前に、人は“決意”をする。
揺らぐこともある。
イヤになることもある。
やっぱり、やめてしまうかも知れない。
けれど、“決意”は、大きな変化だ。
迷い、悩みながら進めばいい。
直感に任せて。
大学生のアナタ へ
スタッフとして子どもと関わっているあなたの姿を見るのを楽しみにしています。