引きこもりを経験したことのあるかたへインタビュー 〜 後編 〜
一度学校へ行かなかったことがキッカケとなって学校へ行くことが出来なくなった坂田さん。行かないといけないのはわかっているけど、そこから目をそらしていたそうです。1年半ほどたって、学校へ通えるように。
今日は、前回のつづきです。
―引きこもりから脱したきっかけは?
いい循環と悪い循環について書いていた心理学の本を読んだのがきっかけです。
イメージ出来たんですよ。自分で循環について図を書いたんです。
世界中を旅している自分をイメージしてたら、何て楽しいんだろうなあ、って。
それに比べて今はなんて冷たい夜の時代なんや、って。
イメージ出来たのは結構思い込みが激しいというか妄想癖というか、ころっと素直に信じちゃうんですよね。
―学校へ行っていないときの心境は?
夏休みの最後の日に宿題出来てない気分かな。なんかいたたまれない。
例えば落語が好きなんですけど、落語聞いてる時は確かに楽しいけど、今この時間他の人はもちろん授業を受けたりして社会を前進しているわけじゃないですか。なんかそこと比較するんですよね。
そう見た場合、自分は何も蓄積していないこの時間でみんなは進んでる。むなしい。
―子どもの頃比較しがちでした?
どうかな。自分ではそこまでって思ってるけど、比較してたんかなあ・・・。
両親は勉強に関して言わないんですよ。
結構マイペースに育った感じはするんですけど、でもやっぱり几帳面さとか、自分で自分に対してこれはだめだよっていう線があった場合それが強く働くかな。
要はちゃんと学校行かなきゃ将来どうすんねん、みたいな意識が働くと、そわそわする。
―学校に行けなくなったのは、理想と現実のギャップが原因?
まず最初に思ったほどおもしろくなかったこと。
レポートや試験期間に前の日まで色々調べてたんですけど、何を思ったか夏休みが目の前にきている、と。
そこへいきたいなと思ったんですよ。夏休みがいいなと思った。
なぜかそこでもういいや試験、と思って、それが今よくわからないんですけどね。
テストの前日とかそこまではうけなあかんと思って準備とかしてたんですけど、結局何もせず。
―ずっときっちりしてきたからこそ、どっかでしんどくなる?
そうですね。
本当にどうでも良かったら夏休み中もへらへらして次の日学校行ってると思うんですよね。
やっぱり自分の中できっちりしないとダメというか、そういうのがあったから、だからこそそれに目を背けようとした。
問題はそのテストの後の対応だったんだろうな。
要は受けなかったことはいい、次また行ったらいい。今から振り返ったらそんな大きなダメージじゃないし。
でもそうはならなかった。
何故なら自分の中に、すごい大きな失敗をしてしまったと思っていたから。
行くべきだって思ってたんでしょうね。あとは行かなかった、重大な失敗をしてしまったその出来事から目を背けたかったんでしょうね。
やっぱり人の顔が気になっていたのかもしれない。先生から見たら気にすることでもないのに。
―本を読んで、どう変わりました?
変わったというより勢いがついただけだなと思うんですよ。
―その本を読んで、まず一歩目って何しました?
まず科目の登録に。
そのときに進学部長に出会って、話したんですよ。
そしたら、その進学部長は「わしはそんなことではびっくりせえへん、4年間0単位だった奴を知っとる」と。
それ聞いてちょっとほっとして(笑)。
で、登録するときに、1年生だけがとっている必修の科目があって、もう1回受けるんですけど、その授業でキャンプみたいなんがあるんですよね。
それ参加するか聞かれて、別に行かなくていいんですけど、なぜか僕その時行きますって言って、いったら友達も出来て、自分の事をネタにして話せるようになったんですよ。
いろんなこと挑戦したかったし、いろんな世界を味わって、ほんとに暗い部屋でひとりでいたころの自分に対してご褒美をあげたかった。
それでいろんな部活を見に行って、ハンググライダーや乗馬、人形劇、科学の研究を見に行ったんですが、結局海外行っていろんなボランティアするっていうのがイメージしてた姿に近くて、そこでさらに成長させてもらった。
そこにいると素敵な人がいっぱいいるんですよね。
本当の自分のままでいられる。
チーム作って海外へ行くっていうリーダーもさせてもらったんです。
自分自身はすごい事出来なかったけど周りが支えてくれて、本当にありがたかったです。
―引きこもっていたとき、こんなのがあったらな、と思うことはありますか?
変わった生き方をしている人に出会えてたらなぁと思います。
そんな奴おんの?そんな生き方してる人おんの?
常識が崩れるような出会いがあったら面白かったかな。
小中高と勉強して人生進んでいかないといけないと思っていました。
情報って普通に生きてたらないじゃないですか、ましてや近所の友達と遊んだりするくらいで。
信頼する大人たちから言われる言葉は常識だったりありきたりだったり、その価値観になるのは当然だったなって思うんですけど、そうではない世界に生きたかったなっていうのはありますね。
―そういうのがあれば、こうしなければならないっていう幅が広がったと思いますか?
結構人の話を信じやすいほうなので、得られる答えが一種類だとその角度からしか考えられないんですよね。
こういう意見もある、こんな意見もあるって知っていたらちょっと楽だったかも、困ったときとか。
学校行ってない自分を親は心配したけど、ええでええでという大人がいてくれたら、それ自然の反応やがな、とか言ってくれたら。
もうちょっと自分を見つめられたかも。
―今後やってみたいこと、これからの目標は?
考え方を広めていきたいという柱はあるんですけど、その手段として家庭教師ともうひとつはアートなんですよね。
いろんな入口があっていいと思うんですよ。
アートの考え方と言うのを結び付けて、面白い事が出来たらと思っています。
―こどもたちに伝えたいことは?
そのままで十分素敵だよ、ということ。
何かができたから自分はいい、じゃなくてそのままで十分ほんとに輝いているということを伝えたいですね。
どうもありがとうございました。
坂田さんは、とても自分に素直なかたなんだなという印象です。
マジメで一生懸命に生きているからこそ、違和感があったときにしんどくなってしまう。
不登校になる子は、とても素直でマジメな子が多くいます。
それは、「行かなくてはならない」と考え過ぎてしまうから。
坂田さんがおっしゃるようにいろーんな考え方を知っていれば、きっと自分の考え方も変わったりするのだと思います。
たくさんの大人が子どもたちを見守ってくれる社会を坂田さんや多くの人たちとD.Liveは作っていきたいと考えています。