不登校の子どもの気持ちを知る手始めには『学校へ行けない僕と9人の先生』が良い!

「これ、きっと仕事に役立つと思うんで。」

友人にそう言われて、先日『学校へ行けない僕と9人の先生』というマンガを貸してもらった。

漫画家の主人公が不登校だったころを書いた自伝的なマンガで、かなりサクサクと読める。

不登校になった子どもの気持ちを知りたい学校の先生や保護者さんにとっては、かなり参考になる。

特に主人公の心理と、大人と主人公の関心のズレを埋めないままに物事を進めることが、こうも子どもに悪影響なのかと自分も改めて勉強になった。

少しだけ話させていただきたい。

まず、不登校になった主人公の心理だ。

このマンガでは「普通になりたい」という主人公の訴えが頻繁に出てくる。

勉強して普通にならなくちゃ、学校に行って普通にならなくちゃ。

学校の宿題に手をつけたり、学校に行ってみたりもするんだけど、しんどくなって結局続かない。

こういう場面が、くり返しくり返し描かれている。

「普通になりたい」という訴えは、不登校を経験した社会人の方たちからも度々耳にする。

D.Liveは定期的に「不登校のおはなし会」という保護者さん向けの会を催している。

おはなし会では何度か不登校を経験した社会人や学生さんをゲストに招いて、学校に行けなかった当時のことをお話しいただいた。

会では、「普通になりたかった。特別優しくして欲しいわけでもないし、悪目立ちもしたくない。ただでさえ学校を休んで目立ってるし、手紙とかも書いてもらったんで、久しぶりに学校にいったら周りからたくさん見られるんですよ。それがすごくイヤでしたね。他の生徒と同じになりたかったです。」ということを複数のゲストがおっしゃってくれた。

普通になりたい、特別扱いはしてほしくない。

全く子どもに取りつく島がない先生にとっては、このような気持ちを知るだけでも生徒を理解するヒントになるだろう。だからといって学校に来たら他の生徒と全く同じようにしたらいいというわけではないのが、不登校支援の勘所だ。

マンガからは、主人公は他の生徒からのからかいやイジメが不登校の原因の一つだとわかる。

久しぶりに学校に来た主人公を、いじめっ子が「待ってたよ、一緒に遊ぼうぜ。」と声をかけている場面が大人側からは、学校やクラスと接点を持てる好意的な場面に捉えられていたり、教室に入ることがゴールになってしまい具体的な関係性の修復がされなかったり。

マンガを読んでいる第三者視点からすると、「これは放置したらダメだろう」と思うのだが実際は放置されていて、結局主人公はより一層学校から遠ざかってしまった。

こんな悲しい結果にならないためにも、学校にもどることを考えるなら悪い意味で特別扱いをせずに、必要な手助けを子どもにすることが肝要だ。

そのためにも、子どもと大人の関心のズレを埋めないといけない。

このマンガでは主人公の両親が主人公に話を聞いてあげる場面がほとんどない。演出のためだろうけど、両親と主人公が分かり合おうしたり、話し合ったりする場面が本当にない。ただただ学校に戻って欲しくて学校復帰をゴールにあれこれ手を尽くす両親と、その時々で関心が違う主人公のズレが描かれている。

ズレが放置されたままなので、無理やり担任の先生に教室に運ばれたり、納得しきれないままフリースクールに行ったりする。主人公としてはもっと自分の気持ちを知って欲しかったんだろうと感じた。

『不登校 母親にできること』という本では、不登校には「引き金」と「背景」があると述べている。

引き金は目に見える分かりやすい出来事で、背景はその奥にある目に見えない気持ちや心理状態のことだ。不登校は確かにある出来事が引き金で起こるけれど実はその前からずっとストレスが子どもの中で蓄積されている。引き金はあくまできっかけにすぎない。

これが『不登校 母親にできること』の不登校についての考え方だ。

この考え方に沿うなら、このマンガに出てくる大人たちは引き金も背景も知ろうとはしなかった。

とにかく今の現状を対処することしか考えていなかった。もちろん対処するのは必要なことだ。それは間違いない。しかし、だからこそ主人公の関心や気持ちや背景を知ろうとすることが大切だ。マンガを読んでいただくと分かるが、主人公は自分を知ってもらいたがっている。自分に目を向けて欲しがっている。

不登校の気持ちを知るための書籍や情報はたくさんある。

その中でも自分の経験談をマンガにしたこの一冊は、不登校を知るための手始めとしてうってつけだ。

試し読みもできるので一度読んで見てはいかがだろうか。

試し読みはこちらから

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この記事を書いた人

D.Live副理事/元小学校教員
自分に自信が持てない、自分を好きになれない、そんな人が自分を好きになり前向きにチャレンジできる社会を創るためにD.Liveを立ち上げた。
自尊感情に関心が高く、D.Live内では主に自尊感情に関する事業を担当。

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