おふくろの味が詰まった子どもの居場所〈TudoToko卒業式〉

「はじめてここへ来たとき、柄にもなく緊張していたことが今でも覚えています」

今日は、僕たちがおこなっているTudoToko(つどとこ)の卒業式。

卒業生の一人として、挨拶をしてくれた中学3年生の彼は誰よりもこの場所を愛し、楽しんで参加してくれました。

やんちゃで、うるさくて「静かにっ!」と怒られることも多々あった彼ですが、慣れていくうちにリーダーシップを発揮し、今では見違えるようなお兄さんになっています。

彼が堂々と挨拶をしている姿を見て、スタッフの一人は涙を流していました。

「ここまで育ったか!」と、感慨深かったと言います。

このTudoTokoは、一人親の中学生を対象にした居場所です。
草津市の委託をいただき、D.Liveが7月より運営を始めました。

「本当に申し込みがあるだろうか?」
「誰も来なかったらどうしよう?」

不安を抱きながらのスタート。
しかし、初日から7人もの子どもが参加。

初めは緊張し、なかなか話さない子どもたちでしたが、時間がたつにつれて、仲間のようになっていきました。

TudoTokoは、子ども食堂のように、子どもたちがご飯を食べるところです。

ただ、登録制になっており、毎週同じ子どもたちが参加。
休む場合も、連絡をいただいております。

1人1人の子どもたちの状態を市と共有し、気になる子にはご家庭に連絡するなどもおこなってきました。

学校がしんどくなって行けなくなってしまった子。
部活が忙しくてなかなか顔を出せなくなっている子。

いろいろな子がいます。

普段は楽しそうにしているのに、少し聞いてみると、家庭のことでしんどさを感じていると言う子もいました。

でも、みんなTudoTokoへは楽しそうに来てくれています。

正直、「どうしてなんだろう?」と思うのです。

豪華なディナーが出るわけではない。
テレビゲームをするわけでもない。

なのに、みんな本当に楽しそうに来てくれる。

疑問に思いながら、TudoTokoで夕食を食べていたときでした。

この日は、デミグラスハンバーグ。

食べると、デミグラスがめちゃくちゃ美味しい。

すぐに、調理ボランティアさんへ「このソースどうやって作っているんですか?」と聞いたのです。

すると、彼女は「これはトマト缶を煮込んでるの。そして、赤ワインも入れてるよ」と。

そういえば、来るときに細長いボトルケースを彼女が持って来ていることを思い出しました。

わざわざ家からマイワインを持ってきて、ハンバーグを作ってくれているのです。

スタッフの1人は、仕事を休んでここへ毎週来てくれます。
「子どもたちの笑顔が見たいのです」と言って。

このTudoTokoは、プログラムが秀逸だとか、スタッフの関わりかたがすっごくいいとか、ご飯がホテル並みに豪華だとかはありません。

もちろん、できるだけ子どもたちが喜び、提供できる授業内容を考えています。スタッフの関わりも大切にしています。

でもね、小手先ではないんですよ。
スキルとかテクニックじゃない。

もう、ただただあったかいんです。

TudoTokoの全てが“おふくろの味”みたいなのです。

「学校行きたくないって言われたんですけど、どうやって関わってあげたらよかったのかモヤモヤしています」と、子どもたちが帰ったあとの振り返りで語る大学生スタッフ。

「あの子、最近よく笑うようになりましたね!」と嬉しそうに語る人。

「新しく来た子、あんまし話していなかったけど大丈夫?」と聞いてくれる調理ボランティアさん。

たくさんの人たちが、子どもたちに愛情を持って接してくれている。

きっとその気持ちが、子どもたちに伝わっているのでしょう。

だから、どんなにしんどくても、大変でも、誰1人イヤになって辞めることなく、TudoTokoに来てくれています。

「学校の友達は、あんまり好きちゃんねん」
「実は、最近こんなことでしんどいねん」

TudoTokoでは、子どもたちがボソっとホンネを吐くときがあります。

ここなら安心して言っても大丈夫だと思ってくれているのでしょう。しんどく思っていることや悩みもここでは話してくれます。

もう、ほんとに恵まれているなと思うのです。

関わってくれるボランティアの人たち。
ご飯を作ってくれる調理スタッフの方々。

担当課の職員さんは、祝日でも関係なく、毎週顔を出しに来てくれました。

ほんとにありがたい。

みんな、1人1人の子に対して愛情を持ち、「大丈夫かな?」「楽しくやれている?」「元気かな?」と関心を持ってくれています。

みんなが“おかん”みたいなのです。
だから、子どもたちは安心して、どんなことでも話せるのです。
TudoTokoに来ると「ほっとする」となるのです。

不思議なもので、その愛情は子どもたちにも伝わり、子ども同士もすごく仲が良い。

教育委員会のかたが来られたとき、「中学生で男女がこんなに仲良いのは珍しいですね!」と、おっしゃるほど。

何週も続けて来ない子がいると、心配して、「あの子、どうしたんやろう?」と気にかける。

同じ学校の子は、「明日、その子のクラスへ行って声かけて見るわ!」と言います。

しばらく来られなかった子は、「ごめん、最近これていなくて」と、友達に謝る。(別に悪いことはしていないのに!)

きっとなにが欠けていても、今のようなTudoTokoは出来ていません。
僕は、正直怖いです。

TudoTokoは、草津市の子どもの居場所モデル事業です。
来年度からは、取り組みを広げていくために、地域との連携なども深めていきます。

違う場所でもオープンし、他の人たちでも運営出来るようにしていきたい。

でも、今のTudoTokoが良すぎて、恵まれすぎていて、ここ以上のものが果たして出来るのだろうかと心配しています。

それくらい、このTudoTokoという場所はいいなと思っています。

4月からは、新しく1年生を募集します。

今度は、どんな子たちに出会えるのか。
2年目のTudoTokoは、どんな場所になるのか。

今から、楽しみで仕方ありません。

ps

TudoTokoは、毎週木曜日の夜におこなっています。
調理ボランティアさんや子どもと関わりたい大学生も若干名募集しております。
4月より、このTudoTokoで一緒に活動しませんか?

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

1984年 大阪生まれ 立命館大学文学部卒

中学時代は、部活に打ち込み、勉強では学年で常にトップ10以内。
しかし、中学3年生のときから学校がしんどくなり、誰とも話さなくなる。
野球選手を目指し、大阪の野球強豪校へ行ったものの、自信を失い退部。そこから学校へ行かず、河川敷で過ごす毎日をおくる。
浪人して立命館大学へ入学したものの、なにをしたいかが分からなくなり、行く意味を失う。1回生の夏から1年ほど、京都の下宿で引きこもる。
友人の支えもあり、復活。政治家の秘書やテレビ制作などのインターンをおこない、期間限定のカフェも開く。「自分のようにつらい思いをさせたくない」と思い、D.Liveを立ち上げる。
フリースクールや自信を取り戻す教室を運営。不登校に関する講演や講座もおこなっている。
京都新聞にして子育てコラムを連載中。
詳しいプロフィールはコチラから

目次