思春期の子どもがクリスマスリースなんか作るわけないと思ってました。ごめんなさい。
「今度のクリスマス会、みんなでクリスマスリース作りたいです!」
12月の中頃、フリースクールのボランティアさんからクリスマスリース作りを提案された私は困っていました。クリスマスリースって、あれでしょう。輪っかにいろんな飾り付けをして楽しむやつでしょう。生徒たちが楽しんで取り組むイメージが持てなかったんですよね。
私たちが運営するフリースクール昼TRY部では、思春期の男子が多く通っているフリースクールです。この時期の子どもって、失敗したら恥ずかしい気持ちが先行してチャレンジに及び腰になりがちです。少なくとも私が彼らくらいの年に、「今日はクリスマスリースを作るよ!」って言われたら、ちょっと冷めた気持ちになったでしょう。
だから、ボランティアさんに提案されたときは断ろうとも考えていました。しかし、リース作りのような工作活動はほとんどしてこなかったので、生徒たちの反応や表情に興味もありました。
キラキラした目で提案してくれたボランティアさんの熱意に押された格好で、クリスマス会にリース作りをすることにしました。活動時間は30分。時間を過ぎてもやりたい人は作り続けていいということにしました。
準備を終えて、当日。
「今日はクリスマスリース作りをするよ!」
元気に作り方を説明してくれるボランティアさん。それを聞いている生徒たちが、活動についてどう思っているか探ろうとしました、いつも通り淡々と聞いているので表情からは読み取れません。スベったかもなぁと、不安になりました。しかし、活動が始まったらそんな不安はすぐに吹き飛びました。
リースの素体と接着剤を受け取り、早速それぞれに飾り付けを始める生徒たち。
マスキングテープでリースをぐるぐる巻いたり、綿をちぎって引っ付けたり、嬉しそうにオーナメントを選んだり、説明を聞いている表情からは想像できないくらい楽しそうに嬉しそうにリース作りをしていました。
「うわ、接着剤手についた!」
「ハサミ使う?はい!」
「これ、葉っぱの部分だけ切って貼り付けたらどうなるんやろう。」
話しながら集中して作っている様子がとても良い雰囲気で、私はずっと写真を撮り続けていました。これまで見たことない表情を見せる生徒もいて、リース作りはなんて素晴らしいんだと感心しました。提案してくれてありがとうとボランティアさんにも何度もお礼を言いました。
結局生徒たちみんな、予定の30分を過ぎても作り続けていました。完成したリースが下の写真です。
リース作りを終えて、自分って頭でっかちなんだなぁと反省しました。
これまで勉強してきた知識から「失敗を怖がる思春期」という勝手なイメージを持っていました。そういう傾向があるにせよ、環境と教材で失敗を怖がる気持ちは緩和され、思春期でも楽しく取り組めるのだと実際にチャレンジして気づきました。作ることの良さにしてもそうです。
SNSの爆発的な普及により相互に参照し合う傾向が強まった今の社会では、お互いに自分はやばいやつじゃないと確認し合うだけのコミュニケーションに耽溺している。こんな時代だからこそ、一人で何かを作る作業に没頭する時間を持つことが必要だ。こんな主張を展開する人文系の本を何冊も読んできました。私自身も、書籍に書かれているように没頭することであえて孤独の時間を持つことの大切さを今の社会を見ていると感じます。とはいえ、自分自身が何かを作って没頭することはありませんでした。変わること、やってみることの抵抗があったんでしょう。
そんな頭でっかちな自分のためらいを吹き飛ばすようなボランティアさんの提案と、イキイキと活動する生徒たち。楽しい時間を提供しているつもりが、自分が学ばせてもらったようなクリスマス会でした。