ボードゲーム「PANDEMIC」から考える、チームに貢献することの重要性

「PANDEMIC」(パンデミック)というボードゲームがあります。
簡単に書くと、全世界に蔓延したウイルスを撲滅していく、なんだか今のコロナ禍を想起させるようなボードゲームです。最近、弊団体のフリースクール「昼TRY部」京都校でもこのボードゲームで何度か遊んでいます。
このゲームの特徴は、チームプレイで進行していくということ。
たとえば、これも最近毎週のように昼TRY部京都校で遊んでいる「カタン」というボードゲームは、最終的にプレイヤーの誰か一人が勝者(10ポイント先取)となるゲームですが、この「PANDEMIC」は一蓮托生、つまり「全員勝つ」か「全員負ける」かのどちらかしかありません。
で、プレイヤーは各々「危機管理官」や「検疫官」などといった違う役割を持ち、それぞれが持つ効果を発揮しながら、未知なるウイルスとボードゲーム上で対峙することになります。全世界に一定のウイルスが蔓延したら負けとなるため、それを防ぐべく参加者全員で協力し合う必要があります。
「じゃあ、○○くん(生徒名)ブエノスアイレスで合流しよう!」
「イスタンブールに調査基地作って!」
「大阪へ移動するより先に台北の病原体を消したほうがいいんじゃない?」
こんなやりとりの末に、病原体を撲滅するワクチンを4つ開発できればクリアです。プレイヤーの役割は(人数が少ないとチームにいない役割も出てきますが)それぞれチームの中で唯一無二な存在なので、プレイ中必ずどこかで役に立つ出番が回ってくるようになっています。
つまり、このゲームのポイントは「いかに役割を分担してスムーズに一つの目標(=ワクチンの開発)に向けて動くことができるか」という点に尽きるので、自分の役割をきちんと理解した上で、その目標達成に向けてチームに貢献できなければ、自ずとクリアが難しくなるゲームなのです。
余談ですが、このゲームは実際の世界地図をもとに進められるので、世界各国の地名や地理にも興味を持つことができる、という大きな利点を持つゲームでもあります。
僕はこの「PANDEMIC」をプレイするたびに、「役割をもって集団で貢献することの大切さ」を痛感します。
振り返れば半年前、僕は職場が変わって最初の出勤後、すぐに緊急事態宣言発令のためにGW明けまで仕事を失いました。収入面(のちに定額給付金が来てその不安は和らいだのですが)もさることながら、僕が真っ先に感じたのは「役割がない」という焦燥感でした。
弊団体のオンラインフリースクールに参画していても、朝と夕方1日2回仲間内でZoomをつないで朝礼や終礼のようなことをしても、なんとなく「自分が誰かに貢献できている」という感覚がない。収入がない以上に、ここの不安だけが毎日募る自粛生活でした。
なにせ、島崎藤村が『破戒』という小説の中で「用が無くて生きているほど世の中に辛いことは無い」と書いているほどです。それほどに、人にとって何かの「役割」というものは生きる上でとても大事なものだということを、あの自粛期間で僕は痛いほど思い知らされました。
夏にようやく通常登校となったあとの僕の生活は大幅に変わり、秋以降はほぼ毎日子どもたちと関わる機会があるほどになりました。そこでもやはり、収入面というより「子どもたちに貢献できている」という、その気持ちが日々を過ごすモチベーションになっています。
生徒が自分の名前を呼んでくれたり、どうでもいい雑談からちょっとした悩み相談まで話を聞くたびに、実は救われているのは相手(生徒)ではなく自分のほうかもしれない、と思うことも、まったく珍しいことではありません。
「PANDEMIC」に話を戻すと、このゲームを、子どもたちはとにかく楽しそうにプレイしています。
繰り返しますがこのゲームは「一蓮托生」、つまりみんなで協力してクリアするものなので、バチバチのバトル要素はありません。そしてクリアが確定すると、みな一様になんとなしの達成感に包まれます。そのときの子どもたちもまた、いい表情をしています。
それは、ほかならぬ「このクリアに自分も携わった貢献感」からくる表情に違いありません。
これも前述しましたが、このゲームのプレイヤーはすべて唯一無二の役割を持って参加することになります。つまり「何もしない」プレイヤーの存在がなく、かつ各役割ともどこかで必ず自分が役に立つ出番がやってきます。これほどまでに「自分が役に立てる」ゲームというものも珍しいと思います。
そして、こうした小さい「貢献感」が、今を生きる子どもたちに必要なものだとも思います。
この数ヶ月、「なんで?」と思うほどに暗いニュースが毎日のように届きます。コロナ禍で自分の職や役割が失われ、なんのために生きてるのかわからなくなった人も多いのかもしれません。僕もいつ、どこで、自分の役割が消えてもおかしくないと思いながら毎日を生きています。
だからこそ、どんな場所でもいい、どんな形でもいい、何か集団に「貢献する」。何か人のために「お役に立つ」。そんな経験がほんの少しでもあると、世の中がグッと違う世界に見えてくると思うのです。
奇しくも今の状況を表すような感染症の蔓延を防ぐゲームに、そんなことを思いながら、今日も子どもたちと世界の各地へコマを進める自分がそこにいました。
お知らせ:昼TRY部京都校の説明会&体験会を10月27日に開催します
フリースクール「昼TRY部」京都校をスタートさせてはや2ヶ月、来月末10月27日(火)に3回目の説明会&体験会を開催することになりました。
弊団体の説明もさることながら、現在の教室の様子を見学していただける貴重な機会となっております。もしかしたら京都校の生徒とスタッフが今日ご紹介した「PANDEMIC」で遊んでいるかもしれません。
こちらの説明会&体験会の詳細は こちら をごらんください。