ぼくたちは水を吸いすぎて割れてしまうトマトになっているときがある

先日、友人たちとバーベキューをした。

お肉やお酒を楽しみながら、ひとしきりそれぞれの仕事や近況を話し合って、さあ片付けという頃に友人の一人がぼそっと言った。

「実は気になる人がいて…」

 

アラサーばかりの集まりだったけど、いくつになってもみんな恋バナは大好きだ。

駅までの帰り道は恋をしている友人にあれこれと質問しっぱなしだった。

 

「いま、相手とどんな感じ?」

「デートとかしようよ!」

「足湯カフェに連れて行くとかいいと思うよ。意外性があって楽しいけど。」

 

友人への質問から、だんだんと無責任なアドバイス大会へと会話の比重が移り始めたあたりで、友人の一人がこう言った。

 

「でも、好きって告白するのって勇気いるよね。わたし、好きな人がいても今の関係を壊したくないから告白しないときあるもん。」

 

 

今の関係を壊さないために告白しないことがある。

友人の意見に、ぼくは深く頷いた。

自分にもそういう関係がたくさんあるからだ。

 

別に恋愛に限った話じゃない。仕事でもなんでも、「これは言わない方が良いんだろうな」と思う場面や、「いま、これを言うときっと困らせるかもしれない」と思う場面がある。

 

 

大人になればなるほど、関係を保つために口をつぐむことが増えて、大人になるとは言えない気持ちや言わない気持ちが増えてくることなのかもしれない。なんて、シニカルな態度になったりもする。

 

けど、そんなことが言いたいわけじゃない。

言わない気持ちや言えない気持ちがあるのは別に良い。

 

ただ、そんな気持ちの中にはストレスに転化するものもあって、

言わないことでどんどんストレスやフラストレーションが溜まってしまう場合がある。

この、「ストレスに転化する気持ち」が溜まりすぎるとよくない。

 

 

仕事柄、子どもの不登校や思春期で悩む親子とお話をすることがある。

保護者さんの中には、ご主人にも友人にも自分の気持ちを話せずに辛そうな顔で来られる方もいる。

「実は…」とポツポツお話しされる言葉の一つひとつに、どれほどのご苦労があったのだろうと想像すると胸が苦しくなる。

 

 

子どもだってそうだ。

思春期の頃になると、親や先生が自分に何を期待しているのかなんて聞かなくても分かっている。

だから、その期待を疎ましく思う気持ちがあっても言えない子どももいる。

 

そんな子は、ぼくのところへ面談に来ても、「この話は親にも伝わるんだろうか…」と心配して、言いたいことを言えないまま帰ることがある。顔を見ればそれくらいわかる。

 

 

 

どんなときにも素直になれたら良いんだろうけど、そんな簡単にはいかない。

この言葉を言えば関係がよくなるかもしれない。でも、反対に壊れてしまうかもしれない。

相手との関係を大事に思うからこそ言えない言葉や気持ちがぼくたちにはある。

 

 

相手が大事だから言わない。

ぱっと見、ステキな言葉だ。

ドラマのキャッチコピーにありそう。

 

しかし、さっきも言ったように相手に気持ちを言わないことで、ストレスに転化することもある。

 

だからこそ、相手とは関係のなさそうなところでも良いから気持ちを吐き出すことが大事だ。

美容室のお兄ちゃんでも、アロママッサージのお姉さんでも、最近連絡を取ってなかった友人でも良い。

「ここだけの話なんだけど」と前置きして、ぶわっとしゃべってしまおう。

話すのがしんどいときはノートに書きなぐっても良い。

 

 

人はストレスが溜まりすぎるとトマトみたいにパーンと弾けてしまうと友人が言っていた。

恋をしている方じゃなくて、あえて告白しない方の友人がそう言っていた。

トマトは大量の水を吸いすぎると割れたり弾けたりしてしまうらしい。

 

 

植物は、実が割れた後はタネを土に残して、また新しく生命を始めることができる。

けれど、ぼくたち人間はストレスでパーンと弾けても新しく人生を始めることはできない。

 

 

もし弾けたら、かんしゃくを起こしたり、思い切り鬱々としたりしたあとのゴミが残るくらいだ。

そのゴミを片付ける姿を想像しただけでイヤな気分になるので、やっぱり適度に気持ちは発散していきたい。

 

我慢する、耐え忍ぶ、努力する、辛抱する。

 

ぼくたちは頑張ることばかりを教えられ、息を抜く方法を教えてもらったことがほとんどない。

「これが究極のストレス発散法!」なんて方法をぼくは知らないけれど、少なくともストレスを感じだしたら吐き出せば良いことはトマトから教えてもらった。

 

 

言い出しにくいことや、言えない気持ち。それらは、加工したり発酵させたりしていずれ伝えるときが来るかもしれない。加工して伝えたおかげで関係が壊れないまま相手に受け止められる日も来るだろう。希望はある。

 

その日を良い気持ちで迎えられるように、まだ素材のままの気持ちはよそで吐き出してしまおう。

 

 

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この記事を書いた人

D.Live副理事/元小学校教員
自分に自信が持てない、自分を好きになれない、そんな人が自分を好きになり前向きにチャレンジできる社会を創るためにD.Liveを立ち上げた。
自尊感情に関心が高く、D.Live内では主に自尊感情に関する事業を担当。

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