学校再開にあわせて不登校の生徒たちの教室復帰を考えている先生に事前確認してほしい4つのポイント

こんにちは、D.Liveスタッフの得津です。

 

3月から始まった突然の休校措置。自宅学習の準備にオンライン授業の検討など、普段の年度末業務に加えて、現場の先生達は本当に難しい判断を迫られることが多かったのではないでしょうか。

 

そしていよいよ始まりつつある学校再開。D.Liveが活動する滋賀県では、緊急事態宣言も解除されて分散登校がはじまった市町もある状況です。(5月16日時点)

 

短い時間でも、これまで会えていなかった生徒たちの顔が見られることや、授業が少しずつおこなえることに安堵や嬉しさを感じておられる先生も多いことと思います。

 

学級びらきや学級づくりに向けて、前年度まで不登校だった生徒たちにも学校に来て欲しい。五月中は分散登校で、授業時数も少ないし、今から少しずつ学校に慣れていけば教室復帰もできるんじゃないか。

今日は、そうお考えの先生方に、休校期間中も不登校の生徒たちと関わってきた視点から、「学校来てみない?」と前年度まで不登校だった生徒たちに声をかける前に確認して欲しい4つのポイントをお伝えします。このポイントが押さえられていると、生徒たちも(まだ)教室復帰の提案も受け入れやすいのではないでしょうか。

 

<教室復帰の前に確認して欲しい4つのポイント>

1、休校中の課題がある程度できている

2、分散登校のクラスに苦手な生徒がいない

3、朝起きれるくらいには生活リズムが整っている

4、休校中にコミュニケーションが取れている

おまけ:生徒がオンライン授業には参加していた場合

 

それぞれのポイントについて詳しく解説します。

 

 

1、休校中の課題がある程度できている

不登校の子どもが教室に戻るとき、私たちが考えている以上に子どもにとっては勇気が必要です。

「いきなり来て、変に思われないかな。」

「特別扱いされるのも嫌だな。」

「浮きたくない。普通にすごして、普通に帰りたい。目立ちたくない。」

などなど、いろんな気持ちを背負いながら学校へ向かいます。

 

学校が再開されると、まず休校中の課題を回収すると思うんです。そのときに、課題ができていないと恥ずかしいわけです。悪目立ちしてしまう。かといって、課題ができていなくても自分はセーフみたな空気も同じくらい悪目立ちしてしまう。

だから、教室に入るかどうかの話をする前に、まずは個別で休校中の課題について取り組んだかどうか話しましょう。不登校の原因が、勉強についていけないからであったり、学習量が多いからという場合には絶対に聞いて欲しいです。もし課題ができていないなら、「この部分だけ一緒にやろうか」とか、「これだけできればOKらしいよ」とか声をかけつつ、まずは個別の信頼関係づくりから始めましょう。

学級びらきもしていない状況ですから、生徒も先生のことをよく知りません。知らない人にあれこれと勧められるのは怖いので、教室に来る来ないよりもまずは信頼関係をつくるところからスタートです。

 

 

 

2、分散登校のクラスに苦手な生徒がいない

クラスに誰がいて、誰がいないかはどの生徒にとっても重要です。苦手な生徒に会わなくて済むというだけで登校へのハードルはグッと下がります。分散登校チームが誰と一緒か事前に伝えてもいいと思います。

一方で、6月以降に完全に通常通りに戻った場合、「やっぱりあの子がいるから行けない」となる可能性も考えられます。分散登校中に少しずつ、どうすればいいか当該の子どもと一緒に考えていきましょう。結果、週2ペースで来れていたのが週1になったとしても前進です。

 

 

 

3、朝起きれるくらいには生活リズムが整っている

どの生徒もこの休校期間中に生活リズムは乱れています。深夜まで起きてゲームやYouTubeにハマっていたり、昼前に起きてきたりなんて当たり前です。私たちのフリースクールでも、通っている生徒からそんな話はしょっちゅう聞きます。

完全に昼夜逆転が常態化しているようでしたら、ご家庭にも協力を求めて生活リズムを少しずつ戻すところから始めましょう。夕方からしか話せないなら、まずは夕方からでも生徒とコミュニケーションを取るのは全然アリです。

「とりあえず1日だけ早起きして学校おいで」と声をかけるのもナシではないんですが、起きれなかった時のフォローと、がんばって学校に行っても疲れただけにならないような工夫は必要だと思います。これは不登校の生徒に限らずです。

でも、きっとどの先生も「久しぶりに学校に行って楽しかったな」と生徒たちが思える準備をされているんだろうと思っています。

 

 

 

4、休校中にコミュニケーションが取れている

手紙でも電話でもいいんです。休校中に少しでもコミュニケーションが取れていると話も聞き入れてもらいやすいはずです。初めてのコミュニケーションで教室に来ることを勧めるのは、引っ越したばかりのお家に新築物件を勧めるのと同じくらい難しいと思います。

 

他の生徒と登校スタートの足並みが揃わなかったとしても、この先生となら話してみたいと思える体験を、電話や手紙、可能なら家庭訪問などで積み重ねていくほうが、登校の話をされるよりも子どもにとってはずっと嬉しいことです。フリースクールに通う生徒たちも「先生って、わたしの話聞いてくれへん」なんてちょこちょこグチをこぼしています。実際のところは知り得ませんが、子ども達は話を聞いてくれる先生を望んでいることは伝わってきます。

 

 

 

ポイントを満たしていなかったら登校を勧めないほうがいいのか?

この三ヶ月間は本当に慌ただしかったでしょうし、正直一人ひとりの細かなケアまで手が回らなかった学校も多くあると思います。それは別に悪いことではありません。誰だってこんなに社会が様変わりするなんて思っていませんでしたから。

ですから、4つのポイントを満たしていなかったからと行って登校を勧めないほうがいいわけではありません。ただ、強くプッシュしても成功しにくいとは思います。

私なら、休校期間中の過ごし方をお互いに話してから学校や教室復帰について生徒が思うことや感じていることのヒアリングから始めます。特に不安を感じる部分を知りたい。

 

「ようやく新学期が始まるけど、学校行ってみようかなとか思う?もし、行けたらいいけど不安もいっぱいって気持ちなら、どんなことに不安を感じるか教えて。」

 

という具合でしょうか。不安のタネの解消に時間をかける必要がありそうなら、その場では登校について話をするより、どんな風にして不安を解決できるかを一緒に考えていきます。

 

ゲームの難易度にたとえるなら、どの生徒にとっても三ヶ月間のイージーモードから、いきなりエクストラハードモード(とにかく大変モード)になるくらいの気持ちです。いきなり何もかもいつも通りにするよりも、肩の力を抜いて助走期間をとりながら長い目で登校復帰や、新しい「いつも通り」の構築に時間を割くほうが健全です。

 

この三ヶ月間は、50m走のように忙しく準備と対応をしてきましたが、ここからはマラソンです。先生にとっても、子ども達にとっても無理のない形で学級づくりをおこなってください。

 

 

 

おまけ:生徒がオンライン授業には参加していた場合

おまけの解説が遅くなりました。オンライン授業を始めた学校の中には、これまで不登校の生徒が授業に参加するようになったというケースもあるでしょう。

 

これは、オンライン授業をスタートさせたとある学校の先生から聞いた話なんですが、このままオンライン授業の方がいいと答えた生徒が3割ほどいたそうです。今回の休校に伴うオンライン化で浮き彫りになったことの1つに、元々オンライン授業の方が合っていた生徒もいたということです。

 

オンライン授業をスタートさせて、それなりに回るようになってきた学校にとっては、不登校の生徒への対応だけでなく、学びの個別最適化や感染の第2波に備える観点からも「オンライン授業クラス」を残すのは学校運営の中で検討されていいトピックだと私は考えます。

 

 

 

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この記事を書いた人

D.Live副理事/元小学校教員
自分に自信が持てない、自分を好きになれない、そんな人が自分を好きになり前向きにチャレンジできる社会を創るためにD.Liveを立ち上げた。
自尊感情に関心が高く、D.Live内では主に自尊感情に関する事業を担当。

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