【6/23講演レポート】「1時間で子どもの自信を育てる方法について話してください」と言われて駆け足で伝えたこと

ある日、D.Liveに講演依頼メールが届いた。
「はじめまして。京都府山城教育局です。6月23日(日)に地区のPTA役員さんや教育関係者の方に向けてフォーラムを開催します。そこで1時間ほど、子どもの自信を育てるためにそれぞれの立場でできること、というテーマでご講演いただけないでしょうか。」
本当はもっと丁寧な文面だったけど、まとめるとだいたいこんな感じのメールだった。
「えっ!1時間しかないの!?」
正直に言うけれど、メールを読んでとても驚いてしまった。(依頼してくださった京都府山城教育局の皆さま、ごめんなさい。)
これまで2〜3時間の講演依頼が多く、短くても1時間半+質疑応答という形しか経験していなかったからだ。しかも参加者は400人の見込み。保護者の皆さん、学校長や教育委員会の方々、地域で子どもと関わる大人の皆さんと、参加者層も広かった。
「できるかなぁ。何を話そうかなぁ。」
不安や心配もあったけど、400人の前でD.Liveのことを話せるチャンスはなかなか無い。
断るなんて選択肢は無かった。
「やります!」
他の予定が入っていないかスケジュールを確認して、すぐに返事をした。
念のために言っておくけれど、依頼してくださった京都府山城教育局の皆さまを悪く言うつもりはない。むしろ、貴重な機会をくださって感謝の気持ちでいっぱいです。
「さて、どんな内容にしようか。」
できるだけ立場の違いに関わらずに、誰もが使える内容や知ってほしい内容をメインに据えて、親・学校・地域、それぞれの立場だからできる子どもとの関わりは最後の方に伝えることにした。
言うなれば映画の予告編みたいな講演をめざして内容を組み立てた。
講演を聞いて「もっと話が聞きたい」とか、「もっとこの部分について知りたい」と思ってもらおう。
そんな気持ちで事前準備に取り掛かった。
当日。
駅から車で送ってもらった会場には400人を超える人が来られていた。
ご依頼くださった京都府山城教育局の方々と挨拶をし、司会の方に紹介されて袖から舞台へ。
すぐにマイクを掴み、1時間ノンストップで話し続けた。
自分がこれまで出会ってきた子どもたちの中に、やりたいことがあっても自信がないからと諦める子どもがたくさんいたこと。
そんな子どもがたくさんいる事がベネッセやD.Liveの調査でも明らかになっていること。
自信のなさ、自尊感情の低さが不登校やいじめの加害にもつながっていること。
けど、子どもの自信や自尊感情を大事にしましょうなんて現場ではお題目でしかなく、実際はもっと緊急性の高い教育課題に向き合うことで精一杯なこと。
だから、D.LiveというNPOは子どもの自尊感情を育てるための居場所づくりを主な事業として取り組んでいること。
今日はD.Liveが出会った子どもたちとのエピソードからテーマに迫る話をすること。
自己紹介も含めてここまでで10分くらい。
悪くないペースだ。
ここからは当日のスライドを出しながら、話したことをご紹介する。
子どもに関わるそれぞれの立場に関係なく、特に大事だと思うのはこの2つだ。
まずは自己開示について。
フラれた、失敗した、断られた、わからなかった、なんでも良い。
自分のみっともない部分やエピソードを子どもに話すことは、子どもが自分を受け容れられるようになるためにすごく有効だ。思春期の子どもにとって、こういった出来事は恥ずかしいしみっともない。だから心に隠したまま、どう扱えばいいか分からないでいる。
そこで、大人が率先して自己開示をして、みっともなさを受け容れるお手本を子どもに示してほしい。すると子どもは「あぁ、そうするのか」と分かってくれる。
次に、無理はしないことについて。
スライドにある通り、自分のご機嫌がなによりも大切だ。数ある子育て・教育本には、「こうしたらいい」というテクニックがたくさん書かれている。この講演でもテクニック的なことはお伝えした。
それらを実践して、うまくいかなかったときに凹む人がいる。
これは良くない。子どもの自尊感情を大切にしようとして、自分の自尊感情がないがしろになってしまっては本末転倒だ。誰だって不機嫌な人のそばにはいたくない。
何か新しいことを実践しようとするのはとても良いことだけれど、危機感や不安感からそれらを実践しようとするのではなくご機嫌な気分の中で実践してほしい。やってみたら分かるけれど、ご機嫌なときのほうがクオリティが高い。何事においても。それに凹む必要なんてない。自分がこれまでと違うことに取り組んだだけで花マルだ。
まずは自分自身がご機嫌でいることが大切だし、そのために自分のご機嫌スイッチを持っておくといい。クッキーを焼くとか、ライブに行くとか、マッサージを受けるとか、花を買って家に飾るとかなんでも良い。
ただ、1つだけ注意してほしいことがある。それは、ご機嫌スイッチを他人に委ねないことだ。
お父さんが昇進したとか、子どもがテストで100点を取ったとか、まだ小さい下の子が自分でおもちゃを片付けたとか。そういう誰かの行動によって自分がご機嫌になることはご機嫌スイッチに含めないでほしい。あくまで自分がコントロールできる範囲の中でご機嫌スイッチをつくることが肝心だ。
想像するとすぐに分かるけれど、他人の行動に自分のご機嫌を委ねると途端に自分が不機嫌になってしまう。子どもがテストで100点を取らなかったらこっちは失望するし、子どもは親の失望を知ってひどく傷つく。相手からすると勝手な話なのに。
続いて、学校・親・地域のそれぞれの立場でできることについて。
当日はもうこの時点で残り15分しかないので、駆け足で重要なところだけお伝えさせていただいた。
学校の中に「異」場所をつくるとか、子どもの溜めを地域でつくるというのは、それだけで1時間は話せるトピックなので今後このブログで書けたらと思う。
他の内容については、だいたい似たようなことをこのブログで書いてるので、気になる人はブログメニューの講演レポートやコラムを参照してほしい。
講演では、最後にD.Liveで作成した「子どもの自信白書」の案内をして終わった。
予告編はそれだけで完結してはいけない。映画館に足を運んでもらうためにある。
この講演も同じだ。聞いて終わりにしたくなかった。
だから、次のアクションにつながるよう「子どもの自信白書」の問い合わせがその場でできるようにした。実際、講演の後にすぐ問い合わせがきた。
お越しいただいた方々の反応も上々だった。
「いま聞きたい話がちょうど聞けた!」
「私の家ではこんなことやってるんですけど、これでいいですかね?」
「めっちゃよかった!」
などなど。
本当にありがたい。
中には、「実はうちの子が不登校でして・・・」という相談もいただいた。
自分はできるだけ講演のあとは参加者の方と話せるように時間ギリギリまで会場に残るようにしている。質疑応答の時間があってもプライベートな相談をいろんな人の前でするのは気が引けるだろうと思うからだ。
この日も、相談を受け付ける事ができて良かった。
1時間の中でどれだけの内容が参加された方々に残ったかは分からない。
けれど、白書の問い合わせや不登校の相談のように、聞いて終わりではなく、次に繋がるアクションを作れたことはD.Liveにとって本当に有意義だった。
改めて貴重な機会を作ってくださった京都府山城教育局のみなさま、ありがとうございました。
D.Liveでは子どもの自尊感情や、不登校の現状と対策などを中心に講演や研修を受け付けています。