マズローの5段階欲求説が教えてくれる不登校支援や解決のポイント
こんにちは。スタッフの得津です。
フリースクール昼TRY部を始めて2年。手探りの不登校支援だったので、本を読んだり、不登校経験者のかたを招いて勉強会をしたり、自分なりに不登校について学習してきました。そんな中で不登校について学習すればするほど、正しい現状把握をした上で、現在地からゴール(将来的な子どもの自立)までの見通しを持つことが大切だと感じるようになりました。
不登校を解決するにあたって、とにかく休ませて見守れば解決するわけでもないし、無理やり登校させれば良いわけでもない。
経験談や書籍を鵜呑みにして実践しても上手くいかない場合があります。それは子どもの現状に対する見立てが間違っているからです。今日は子どもの現状を把握をする上で、マズローの5段階欲求説が使えると思うのでご紹介します。
そもそも、なぜ現状把握が大事なのか。
すぐにマズローの説について話の舵を切りたいのですが、その前になぜ現状を把握することが大事か自分の考えをお伝えします。西條剛央さんが提唱した構造構成主義の中に「方法の原理」という考え方があります。あ、難しい話じゃないです。「方法の原理」について西條さんが過去に述べた記事から引用しますね。
すべての“方法”と呼ばれるものに共通する理路が「方法の原理」です。それによれば、方法の有効性は、(1)状況と(2)目的に応じて決まる、ということになります。まず、正しく「状況」を把握することが大事です。(全文はこちらから)
お腹いっぱいの状況なのに元を取りたいからと、食べ放題のお店でたくさん頼んでも苦しくなるだけで元なんて取れません。早くお風呂に入って欲しくても子どもがゲームに夢中になっているときに声をかけても。往々にして生返事がくるか無視されるかです。
方法が状況と目的に応じて決まるなんて、言われたら当たり前のことです。当たり前のことですが、不登校というこれまで事態にあって私たちは混乱し、そんな当たり前のことを忘れてパニックになっちゃいます。とにかくなんとかしなくちゃと。
気持ちは分かりますが、登校への声かけやたっぷり休ませることなどの方法を決める前にまずは現状を把握しましょう。マズローの話に進みます。
マズローの5段階欲求説とは
マズローの5段階欲求説とは、アメリカの心理学者マズローが提唱した人間の欲求についての階層ピラミッドのことです。ピラミッドは下の図のように表されます。
第一階層の「生理的欲求」は、生きていくための基本的・本能的な欲求(食べたい、飲みたい、寝たいなど)のことです。
第二階層の「安全欲求」は、危機を回避したい、安全・安心な暮らしがしたい(雨風をしのぐ家・健康など)という欲求のことです。
第三の階層である「社会的欲求(帰属欲求)」は集団に属したり、仲間が欲しくなったりする欲求です。この欲求が満たされない時、人は孤独感や社会的不安を感じやすくなると言われます。
第四階層である「尊厳欲求(承認欲求)」は他者から認められたい、尊敬されたい気持ちのことです。
最後に「自己実現欲求」は自分の能力を引き出し創造的活動がしたい等の欲求です。他者に何かを求めるというより、自分の活動や成長に強い関心を持つようになります。
マズローの5段階欲求説を参考に、子どもが欲しているものや失ったものを考える
不登校と言ってもその原因はさまざまです。母子分離不安の文脈から学校を行き渋る子もいれば、エリート校の雰囲気についていけず学校がイヤになった子もいます。とにかく新しい進路を決めるのでもなく、とにかく休ませるのでもなく、このピラミッドをベースに子どもの欲求という点から現状を把握して方法を考えましょう。
以下、いくつか例で考えてみました。
・友だち関係がきっかけで不登校になった場合
私たちのフリースクールに来るケースで一番多いのが友だち関係です。真ん中の社会的欲求が満たされていない状況ですので、まずは学校以外の居場所に通うことを目標にして、同年代との安心できる関わりを実感できると良いです。
ただ、このような社会的欲求が満たされていないケースは学校に行けないことで自分はダメだと自己否定感に陥り、一個下の安全欲求もまた満たされていないことがあります。自己否定感を子どもが持っているようなら「学校に行けないことはダメなことじゃない」と言葉にして安心させてあげてください。
・家族との別れや経済状況、虐待などで不登校になった場合
確実に一番下、もしくは二つ目の欲求が損なわれています。このケースはおそらく学校と家庭だけでなく、様々な支援機関が関わっているはずです。教育ではなく福祉の文脈から考えた方がいいかもしれません。
学校にできることとしては、もし学校に来たときは一緒に給食を食べたり、こっそり衣類の清潔さを保てるようにしたりと勉強よりも特別な配慮を優先して欲しいです。周りの生徒への理解をどう促していくかなど、悩ましいことも多いでしょうが担任の先生だけで抱えこまないでください。
・進学を機に不登校になった場合
中学校や高校に進学し、これまでの学校生活とのギャップから不登校になる場合があります。その場合、クラスの雰囲気が合わないという社会的欲求に関するケースや、実は勉強なんてしたくなかったけど親から見放されるのが怖くて仕方なく勉強していたという安全欲求に関するケースもあります。
まずは子どもの話を聞くことです。学校へ連れ戻すために聞くのではなく、どうしたいか教えて欲しいから聞くというマインドセットで子どもの話を聞いてください。ぼくも理屈で説明できないのですが、経験から分かるのは子ども達は大人の下心を見抜く力を持っています。
結論ありきで話を聞こうとすると乗ってこないので、関心100%で聞きましょう。自分の聞く態度について、子どもに話すとものすごく丁寧でより一層信頼につながるはずです。
マズローの5段階欲求説をベースに支援の方向性を話し合う
先生以外はほとんどご存知ないでしょうけれど、学校では不登校は進路の問題として考えるようにと、先生たちは文科省から通達されています。ですから、不登校になった場合は学校へ来るように促しますし、登校が難しいようなら今後の学習・進路方針について話したりします。間違ってはいません。
保護者さんも、このままだと将来生きていけないのでは?という心配と不安から、いろんな形の学校やフリースクールを提案したり、子どもが好きだろうと思うことを見つけて仕事につなげるように促したりします。これも間違ってはいません。
方法は間違っていないんですが、現状を見誤ると方法の有効性が著しく下がります。ぼく個人の見解では進路の話は上位の欲求に位置付けられるので不登校の解決法としては時期尚早だと考えます。
これからの話をしても子どもがピンと来ていない場合は上位の欲求の一つ下、あるいは二つ下が損なわれている可能性があります。進路の話や学校復帰の話をしたくても取りつく島が無い場合は、一つ二つ下の欲求をケアするような関わりをしてみてはいかがでしょうか。
最後になりますが、マズローの5段階欲求説でも他でも良いんですけど不登校支援については何かしらの仮説や見立てをベースに複数で関わるようにしてください。私たちのフリースクールに相談にこられる保護者さんの中には、どこかへ相談することも出来ずに一人で抱え込んでいる方も多くおられます。
ほかの記事でも繰り返し言っていることですが、一人で抱えるのではなく誰かと分かち合ってください。保護者さんも先生も、ケースワーカーさんも頑張っておられます。孤軍奮闘する必要なありません。どうぞいろんなところを頼ってください。
近くに相談先がなければ私たちにも相談ください。遠方でも何かできることがあるかもしれません。
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