不登校の子どもを新年度から担任することになった先生が知っておきたい8つのこと
こんにちは。D.Liveスタッフの得津です。
まずは、この記事を見つけていただいてありがとうございます。きっとこのブログを読んでいる先生は不登校になってしまった子どもに何かしたいという気持ちのある先生だと思います。
というのも、前々からこのブログを知っていない限りは、この記事にはたどり着くには自分で検索するしかないからです。自分から検索して少しでも良い情報は無いかと探す時点で熱意があるなとぼくは思うわけです。だってそうでしょう。4月は、新しく担任する子どもたちを迎える準備をしたり、新しい分掌を受け持ったりで忙しい時期です。ほとんどの先生は、前年度の担任から引き継いだ情報だけでなんとかしようとするはずです。であるはずなのに、わざわざ時間を割いて新年度から不登校の子どものために自分で情報を探すなんて本当に立派です。
私たちD.Liveは普段、フリースクールや定期面談などで不登校の子どもたちやその保護者さんと関わる機会が多くあります。この記事では、これまでの面談で教えてもらった保護者さんの気持ちや先生へのホンネ、事例などを踏まえて先生に役立ててもらえるだろうことをお伝えいたします。
1、長期戦を覚悟する
前年度、あるいはそれ以前から不登校の生徒を受け持つということはそれだけ時間が掛かることになります。始業式に気合いを入れて登校するケースもありますが、多くは長く続きません。年度が変わったはずみに登校が続くケースは稀です。でもこれは悪いことじゃありません。少しずつじっくり関係を作って変化をお互いに感じていけるのは、先生としてやりがいや楽しさを感じられることでもあります。三歩進んで二歩下がるくらいの気持ちでいましょう。
2、保護者は頼れる味方
保護者さんは味方です。学校に行かなくなり、家で引きこもるようになったケースは特にそうです。家での過ごし方、子どもが好きなこと、子どもとの面談の調整。これらは全て保護者さんの協力なくしては成り立ちません。
先生をしている知り合い筋から聞いた話ですが、「あそこの家は保護者がアカンねん」なんて言いかたで、不登校の難しさを簡単な言説に落とし込もうとする先生がいるそうです。この言説に乗っかってしまうとはっきり言って、思考停止モードに陥ってしまいます。後述しますが、保護者さんも困っていたり傷ついていたりします。だからこそ、味方となって子どもにどうなってほしいかのゴールを一緒に探るところから始めましょう。
3、保護者さんも子どもと同じく傷ついているので、見通しや情報でサポートする
ネットには不登校に関する情報や経験談が多くあります。中には「親が悪い!」とか、「こんな対応はダメ!」みたいな情報もあって、それを読むたびに保護者さんが傷つくという現実があります。ほとんどの保護者さんは不登校の経験なんてありません。だから子どものことが分からないし、困るし、今までの子育てが間違えていたのかと傷ついたりします。先生との面談では隠しているだけで、実際のところは子どもと同じくどの保護者さんも悩んでいます。
ですので、一緒にゴールイメージを共有したり、支援機関を紹介したり、不登校の親の会があることを伝えたりして欲しいです。カウンセリングに不満を持っていた保護者さんが言っていました。
「話聞いてくれるのは良いけど、ほんで次どうしたら良いねん。そこが分からんから困ってるねん。」
※滋賀県・京都市と周辺の市町くらいならD.Liveに連絡いただければ公的な機関が知らないだろうフリースクールや保護者さんがやっている親の会などの情報はいつでもお伝えいたします。
4、きっかけや背景が変わっている場合がある
不登校の子どもを理解する視点の一つに「きっかけと背景」があります。きっかけは不登校の引き金となった直接的な出来事です。たとえばイジメや、友だちとのトラブル、成績不振などです。背景は引き金となる前から少しずつ積もっていた学校への不満や苦手意識、その子だけの不安感など漠然としたものです。
多くの対応が引き金を解消するようなものです。「イジめてきたやつには、もう絶対すんなって指導したしクラスも別やから大丈夫。おいで。」みたいな対応がありがちな例です。でも、それが効かないケースがあります。このケースには背景にあるもっと漠然としたものへのアプローチが必要です。
この背景にアプローチするのは時間がかかります。なにせ子ども自身も学校に行けなくなった理由が言葉にできないことがままあるからです。それに、学校に行けない期間が長くなるにつれて不登校のきっかけや背景が変わっている場合もあります。
前年度の先生から引き継いだ情報や保護者さんから教えてもらったことは子ども理解にはもちろん有益ですが、話すきっかけくらいに使いつつ、今の子どもの気持ちの中で言葉にできる部分とできない部分を知ることが大事です。
5、学校に戻ることがゴールじゃない
先ほど紹介した「きっかけと背景」の話と関連しますが、学校に戻ることをゴールに設定しないほうがいいです。もちろん生徒が再び登校できるようになったり、クラスに戻れるようになったりすることは素晴らしいことです。一方で、背景へのアプローチをせずに学校に来ることだけに狙いを絞って関わった結果、また不登校になってしまったケースもあります。
こんなことにならないためにも、学校に戻ることをゴールにするのではなく、子どもにあったゴールや居場所を探すほうが建設的です。先ほどはイジメの例を出しましたが、「学校の先生が嫌い」「先生の対応に不信感を感じている」「自分が怒られているわけじゃないけど、怒鳴っている姿が怖すぎて行きたくない」などの理由も聞きます。
そんな理由の場合、学校復帰をゴールにしてしまうと学校として対応がしづらいことが出て来る可能性があります。学校にも限界があります。できること、できないことが当然あります。誰もが理解していますし、学校を責めたりもしません。学校復帰だけでなく、教育支援センターやフリースクールなどの別ルートの可能性を視野に入れつつ、子どもに合った指導をしたほうが結果的に先生にとっても子どもにとっても保護者にとっても良いだろうと思います。
6、成功例は一味唐辛子のようなもの。かけすぎ、当てはめすぎに要注意
先生の中には、過去に不登校の子どもを担任して学校復帰につなげた先生もいるでしょう。あるいは、そんな先生からアドバイスがもらえる先生もいるでしょう。はっきり言います。過去の成功例は一味唐辛子です。確かに実績があれば自信もつきますし、保護者さんからも信頼を勝ち得やすいでしょう。でも、不登校の子どもはクラスにいる子どもたちと同じく千差万別です。だから同じことをやっても逆効果な場合もあります。生徒からのお手紙とか、交換ノートとか、毎日の訪問とか。
ぼくの母はうどんに一味唐辛子をかけて食べるのが好きです。あれはちょっとだけかけるから味が決まって美味しいのであって、かけすぎたら辛くて食べれたものじゃありません。過去の成功例も同じです。ちょっと成功例から考えてみる。ちょっと成功例と同じ方法も選択肢に入れてみる、それくらいの扱いで良いです。
7、関係づくりは子どもの関心をベースに
新年度で初めての子どもとの出会い。すぐにでも学校の話をしたいでしょうが、ここはちょっと堪えてください。1時間くらい話せる時間があるなら別ですが、10分、20分くらいしか取れないのなら学校の話をするんじゃなくて、子どもの好きなことを話題にしましょう。最初の面談で大事なのは、というかどの面談でも大事なのは、次も話したいと思ってもらったり、次も話す理由を作ったりすることです。最初のデートで告白しないでしょう。普通。まずはお互いを知って関係をつくっていくじゃないですか。デートと同じです。
子どもの好きなことをベースに話と分からない単語がいっぱいでてきます。「そのゲーム何?」とか、「え、そんなマンガあるの?」とか、ぼくが子どもと面談をしていても驚くことばかりです。知らないことを教えてもらったら「次、絶対調べてくるからまた話そう」と言ってみたりして、次も会う約束をします。
次回も同じように、調べてきたことから話して関係づくりです。ぼくはゲーム持ってないのでしないですが、うちの代表は面談のときに一緒にゲームをして距離を縮めることもあります。他の先生が見てるわけじゃないですし、先生も少しくらいならゲームしてもいいんじゃないでしょうか。
8、分からなかったら子どもに聞く
今後のことを考えるにあたって、いろいろ方法が浮かぶと思うんです。交換ノートをしようか、進路はこの高校がいいんじゃないか、勉強は別室登校かプリントを渡そうかなどなど。決めきれないときは子どもに聞くのが一番です。ぼくもよく聞きます。
方法もですけど、嫌いな先生や学校の悪口も聞きます。先生としてはなかなか聞きづらいかも知れませんが極めて貴重な情報です。嫌いなタイプや苦手なタイプがわかれば、自分はそんなタイプがしそうなことをしければ良いし、「きっかけと背景」の理解にも役立ちます。分からなかったら子どもに聞くという教えは、きっと先生もベテラン先生から聞いていることでしょうが不登校対応においても含蓄のある言葉です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。自分でも言ったように不登校になるケースは千差万別です。ぼくが書いたことが通じないケースだってあります。ですが、ここでお伝えしたことが新年度から、あるいは新学期からの先生の糧になれば幸いです。
最後になりますが、子どもが不登校になったのは誰も悪くありません。子どもも保護者も先生も悪くないんです。なるべくしてなったのです。先生によっては自分の評価に影響したり、教師としての力量が低く見られることを心配したり、先生としての自信を無くしたりする先生もいるでしょうが、そんなことを思い悩む必要はどこにもありません。先生は努力しています。それが伝わってる子どもたちがいることを先生自身がよくご存知のはずです。
どうぞ自信を持ってください。
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