子どもが「学校に行きたくない」と言い出したとき、いの一番にやらなくてはいけないこと
我が子がある日突然、「学校に行きたくない」と言い出した。
こんなとき、あなたはどうしますか?
たとえ元気に学校へ行っていても、翌日いきなり学校に行きたくない、と言い出す可能性は、どの子どもたちにもあります。「100%不登校にならない」子どもなんて、どこにもいません。だからこそ、「学校に行きたくない」と子どもが漏らしたときに、ひとつ対応を間違えると、親子関係に亀裂が走ります。
では、「学校に行きたくない」と子どもが漏らしたとき、真っ先にどういう行動を取ればいいのか。
それは、「事実を肯定する」ことです。
いくら学校に行きなさい、早く起きなさい、と言ったところで、目の前の子どもは学校に行きたくないし、起きるのがしんどいのです。つまり、そこには「目の前の子どもが学校に行きたくない」「起きるのがしんどい」という事実があるわけです。
そこで、「早く学校へ行きなさい!」「さっさと起きて!」と声をかけてしまうと、学校に行きたくない本人は「学校に行きたくない気持ち」を否定されることになります。起きるのがしんどいこの状況を受け入れてもらえないということになります。
学校へ行く、行かないはこのさい関係ありません。もしかしたらその後行く方向に転ぶかもしれないし、結局休まざるを得ない状況かもしれない。判断に時間がかかる場合は、ひとまず「学校に行きたくない気持ちがある」という事実を肯定し受け入れることは、すぐにでもできます。
先日、『「この人、痴漢!」と言われたら―冤罪はある日突然あなたを襲う』(中公新書ラクレ)という本を読んでいました。
それによると、もし痴漢冤罪に巻き込まれたとき、絶対にやっちゃいけないことが「とにかく否定する」ことなんだそうです。確かに、なんの脈略もなく「いや自分はやってません」と否定すると、被害にあった側からすればさっき起こった痴漢すら否定されてるように聞こえるわけです。
そうではなくて、「確かに痴漢があったんでしょうが、自分はやってないですよ」とまず相手に痴漢被害があった事実は認めた上で自分が犯人ではないことを伝える、というのが一番最善なやり方である、とこの本では述べられていました。
やはりここでも、「事実を肯定する」ことが重要なのです。
秋学期がはじまってから、僕はこの「事実を肯定する」ことを意識して、子どもたちと関わっています。
学校に行きたくない。あの授業の先生が苦手。隣のクラスの○○さんが嫌い。こうしたマイナスな感情を吐き出したとき、「いや、学校は楽しいよ」「あの先生はおもしろい人だよ」「○○さんは良い人だと思うけど」と返したところで、それは単純に「そう思っている相手を否定している」だけにすぎません。
相手とその人や物の印象が違ったり、意見が合わなかったとしても、ひとまず「相手はそう思っている」という事実を受け入れることにしています。たとえその人や物の印象が自分の中で良いものだとしても、それとこれとは別として、相手が不快感を覚えていることに寄り添うことを心がけています。
なにせ、「あの人が嫌い」と目の前の相手が言っているのは、理由はどうであれ紛れもない事実なのです。
たしかに理由を聞けばとてもくだらないことだったり、なにか誤解しているところがあるかもしれません。もしくはそもそもの理由を話してくれない可能性もあります。そうなれば、「あの人が嫌い」と言われた側は、きっと困惑するでしょう。それこそ「学校に行きたくない」というのも同様です。
しかし、その問題を解決することと「事実を肯定する」ことはまったくの別物です。
なんと返せばいいかわからない。下手にアドバイスしたら火に油を注ぐことになる。そういったときは、「ああ、この子はあの人が嫌いなんだな」「学校に行きたくないのか」と思いつつ、話に耳を傾けるだけで相手が受ける印象は大きく違ってくるはずです。
事実を肯定しているだけではたしかに問題解決につながらないかもしれません。しかし、話している側からすれば、「解決はできなくても、とりあえず悩んでいる気持ち」を他人と共有できただけで気が楽になるものです。それがきっかけで、対処の方法を自ら考えるようになるかもしれません。
当たり前にみんな学校へ通う中で、自分だけその学校という場所があわない、行きたくないと思う気持ちは、当然言い出すことにものすごいパワーが必要なことです。だからこそ、あえて「学校に行きたくない気持ち」を肯定してあげてほしいのです。
もしもそこでその気持ちに気づかずに学校へ行くよう促したら、その子にとってあれが好き、これが嫌いという「自分の気持ち」を正直に吐ける場所がいよいよなくなってしまいます。家庭の中でも落ち着けずに、自分の居場所をどんどん失ってしまうことにつながりかねません。
ここまで書いてきましたが、「事実を肯定する」ことは、思った以上に難しいです。ついつい「え!あの人そんな人じゃないのになあ」と言ってしまうこともありますし、僕自身も「こう思ったって事実はあるんだけどなあ」、と自分の気持ちが受け入れられなかったときにしょっちゅう思います。
「事実を肯定する」ことはすなわち、「相手の話を否定しない」ということと通ずるところがあります。子どもたちはもちろんのこと、大人同士でもこのことを心がけていれば、よりよい人間関係が築けるのではないか、と思います。
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