真面目に学校へ通う子どもたちだからこそ、周りが伝えてあげたい「休む勇気」

今から9年前、僕が大学に入ってすぐのときの話です。
僕は大学時代を親元を離れた岐阜県で過ごしました。半分一人暮らしがしたかったという理由で家を出たわけなのですが、当たり前のように今までの環境とは大きく変わったものになりました。
家で寝ていても勝手に食事が出てくるわけでもない、洗濯もひとりでしなきゃいけない。週に3日の通学でよかった高校と違い、大学は週5日、しかも朝9時過ぎの1限に間に合うように登校しなくてはいけない。大学の単位は15回中10回の出席が必要で、3回休んだら大学側から警告が出るシステムもありました。
正直、疲れていました。ものすごくしんどかった。でも「がんばらなくちゃいけない」と、必死に朝になれば無理ぐり身体を引きずって大学行きのバスに乗る生活。家に帰っても疲れた身体で包丁を握り、あれやこれやと自炊しながらギリギリの生活を送っていました。
そんなある日の授業で、ある教授がこんなことを言ったのです。
「そろそろ疲れが溜まってくる時期だと思います、そんなときは1回ぐらい授業休んでみるのもいいかもしれませんよ」
・・・この一言が、自分の中で驚くほどすっと腑に落ちたのです。
あ、そうか、休んでもいいのか、と。
親戚も友達もいない、完全に「人間関係をリセット」した世界で何ヶ月も過ごしてきたストレスと疲れは尋常ではありませんでした。その矢先に突然出会った、教授からのこの一言。僕がはじめて大学を「自主休講」したのは、この数日後のことでした。
立命館大学の春日井敏之先生の著書『思春期のゆらぎと不登校支援―子ども・親・教師のつながり方』にこんなデータが掲載されています。
2002年の立命館大学の授業アンケートで「欠席回数とその理由」を尋ねたところ、欠席ゼロと回答した学生の中に以下のような理由が含まれていました。
「休むという勇気がなかった」
「学校=休んではいけないところ、というプレッシャーみたいなものがある」
「友人や知人が全くいないので、授業に出席するのが唯一の生きがい」
春日井先生はこのデータを踏まえて、この生真面目さが続きすぎて息切れを起こし、研究室に相談に訪れるケースが案外多いという問題点が隠されていることを指摘しています。研究室のみならず、大学が設ける相談室やサポートセンターを利用する学生数も、年々増加しているそうです。
もちろん、授業に毎回出席するということは大事なことです。が、純粋にその授業に興味があったりおもしろさを感じているのならまだしも、「学校は休んではいけない」などというプレッシャーを抱えていたり、苦痛を感じつつ毎回出席していた場合、はたしてその「皆勤」に価値はあるものなんでしょうか。
実はここ最近、「皆勤賞」を設けない学校が増えているそうです。とくに島根県出雲市では全学校で皆勤賞を取りやめています。その背景には、たとえ体調不良でも皆勤賞目当てに無理矢理登校するケースなどで「健康に影響を及ぼす」ことを危惧したところがあるようです。
TRY部のある生徒に、その名も「有給休暇」と称して月に1~2度学校を休む生徒がいました。
彼は不登校ではありません。ですが、たとえば土日と泊まりがけでどこかへ出かけたり忙しい週末を過ごしたときには、明けた月曜日に必ず学校を休むのでした。もちろん、担任の先生に「こういう理由なので月曜日は休みます!」と宣言することは忘れません。
この生徒にとって「休むこと」とはすなわち、家で1日何もせずゴロゴロすることなのでした。
僕はこれ、うまいこと考えたなあ、と思いました。
この生徒は、こういう経験を通して「休むこと」を学んでいるわけです。それは確実に、将来社会に出たときに役立つスキルだと思います。今の世の中は「休まずに仕事することが偉い」社会だと思います。たしかに大事なスキルですが、人間休まざるを得ないときだってやってくるはずなのです。
以前コンビニに入ったら、店員が冷えピタにマスク姿でレジを打っていたことがありました。あきらかに風邪のようなだるさがその店員の様子から伝わってきます。さすがに休めよ、と思ったのは言うまでもありません。
2学期がはじまってはや1ヶ月。もしかすると、1学期に続いて我慢、我慢でこのひと月を過ごした子どもたちもいるかも知れません。
そんな子どもたちに、ぜひ「休む勇気」を伝えたいです。
きっと我慢、我慢で学校へ通い続けている子どもたちの中には「学校を休んではいけないプレッシャー」に苛まれている子どもたちが多いと思います。もしかしたらそんな子どもたちは、「上手に休むこと」を知らないのかもしれません。
不登校になった子どもたちの体験談を読んでいると、「お母さんが『もう学校休んじゃえば?』と言ってくれて、気持ちが楽になった」という声が意外と多いです。つまり彼らはそれまでずっと、「学校を休む、という選択肢がある」ことを知らず、行きたくもない学校へ生真面目にずっと通っていたのです。
「休むこと」は、いけないことではありません。
ぜひ、子どもたち、いや休まずに日々頑張るすべての人たちに「上手に休むこと」を教えてあげてください。
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