すべての不登校の当事者は、ひとりでは救えません。―「 #不登校は不幸じゃない 」プロジェクトで思ったこと
この夏、「不登校」の見方が大きく変わるだろうなあ、と思いながら動きを見守っていました。
ひとつは、先日も書きましたが文部科学省が不登校対応を大きく見直す、という点。
「教育機会確保法」の動きもあいまって、それまで「学級復帰」が何よりのゴールだった不登校対応について、文部科学省自らがそれを改め、学校にこだわらないゴールがあることを示すことになりました。文部科学省自ら「学校以外に道がある」と示すのは、実に画期的で多くの不登校当事者を救うことでしょう。
そしてもうひとつ、こんなムーブメントも広がっています。
春頃よりじわりじわりと注目されているTwitterのハッシュタグ、「#不登校は不幸じゃない」。
このハッシュタグをもとに、今度の週末・8月19日に「#不登校は不幸じゃない」のイベントが開かれます。会場は全国47都道府県、実に100箇所以上で同時開催という、これまでの不登校に関するイベントにはまずなかった形式で行われます。
これはものすごいことだと思います。これまでこんな大々的に各地で不登校に関し声を上げた例を僕は知りません。
100箇所、ということはたとえば同じ県内どころか同じ市でも会場が2つあるところも存在しますが(大津市では別の主催者の方々がそれぞれ2箇所開催されます)、逆に言えばそれくらい多いほうが駆け込み寺として機能する、ということでたくさんの会場でこのイベントが開催されます。
この「#不登校は不幸じゃない」のハッシュタグは、その言葉のニュアンス故に「そもそも不幸という前提はいかがなものか」という意見や、当事者の中学生から「やっぱり不幸だよ」という声も上がっており、賛否両論が繰り広げられているのも事実です。
しかし「#不登校は不幸じゃない」の発起人である小幡さんのブログを読めば、このプロジェクトで救われない不登校の当事者がいることも重々承知の上で8月19日の全国100箇所イベントに臨むことも宣言されています。僕はこのブログを読んで、思わず膝を打つような感覚になりました。
このプロジェクトで「すべての」不登校の当事者を救えるわけではない、というのはかなり重要なことだと思ったからです。
というのは、不登校の理由も状況も千差万別だからです。たとえ僕の経験談を話したところでそれが目の前の当事者に通用するわけでもありませんし、こうしてここで僕が不登校へ一家言書いたところで、それもまた読み手の当事者が参考になるかどうかはまったくの別問題です。
それと同じように、「#不登校は不幸じゃない」の言葉に違和感がある、イベントの意図がわからない、という当事者はこのイベントの対象外というわけです。上記に貼り付けた小幡さんのブログの言葉を借りれば、「ではあなたが救ってください。僕はすべての人を救えないので。」ということなのです。
「#不登校は不幸じゃない」のハッシュタグに寄せられるツイートには、先述したように今当事者の中学生からの悲痛な叫びもあります。正直な話、僕はそんな声に「いやぜんぜん不幸じゃないよ」と言うつもりは毛頭ありません。「不幸だと思っている」というその現実を否定することになります。
それは、もう仕方がないことだと思います。
今後、「やっぱり不登校でよかった」と思える時期が来るかもしれません。僕も中学2年~3年の不登校だった時期、「不登校は不幸だった」と思わなかったかと言われれば嘘になります。でもこのイベントは、「不幸だ!」と声を大にして叫ぶ人の考えを強制的に変えるものではないと思います。
その部分をしっかりと明記している。だからこそ、僕は前述した小幡さんのブログに膝を打ったのです。
以前引用しましたが、立命館大学の春日井敏之先生は、子どもと関わる上で「解決請負人にならない」ことの大事さを著書で説いておられます。
教師は、解決請負人にならなくてもよいということ。子どもの話しや悩みを聴いて、一緒に悩み考えることが大切である。
引用:春日井敏之(2008)『思春期のゆらぎと不登校支援―子ども・親・教師のつながり方』ミネルヴァ書房 P262
上記は学校現場を例に書かれていますが、不登校支援や対応にもまったく同じことを言えると思います。一口に不登校と言っても、その原因や背景は多種多様であり、ひとつの事例に対してもひとりで「よっしゃ、なんとかしてやる!」と解決なんてできません。その人にはその人の守備範囲があります。
D.Liveでも不登校支援に力を入れています。しかし弊団体で提供している不登校支援も、やはり合わない子がいて当然だと思っています。弊団体のフリースクール「昼TRY部」は非常に賑やかな雰囲気なですが、これは静かな場所を好む子どもたちにとっては真逆の環境です。
もちろん、最大限の配慮はするのですが、この部分がネックとなる生徒がいるのも事実です。
不登校支援は、合う・合わないがあって当然のものだと思います。だからこそ、「#不登校は不幸じゃない」が万人にとって受けるものではないですよ、という指針はすごく大事だと思います。8月19日、いったいどんな展開になるのか、静かに見守りたいな、と思います。
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