マンガは、人生の教科書だ!
「勉強しないなら、とにかくマンガを読ませてください」
僕は、相談に来られた保護者さんに、いつも同じことを言っている。
「とにかく、マンガを読ませてください」と。
マンガは、レッドブルのようなエナジードリンクだ。
モチベーションがわいてくる。
「こんなことやってみたい」「こんなふうになってみたい」
カフェインが人を昂ぶらせてくれるように、マンガは、人を昂ぶらせてくれる。
もし、僕がマンガを読んでいなかったら、今の自分はないし、こうやって文章すら書くことはできていないと思っている。
すべては、マンガを読んできたから、今の自分がいるのだ。
生きること、死ぬこと。生命については、『ブラックジャック』から教わった。
努力する大切さは、『ガンバFly high!』から学んだ。
働くことの喜びや苦しみは、『働きマン』で知った。
音楽の素晴らしさは、『ピアノの森』で再確認した。
平和については、『W3』で考えるようになった。
野球への情熱は、『第3野球部』から受け継いだ。
たくさんのマンガの言葉、場面、絵があったから、僕はガンバることができたし、生きていくことができた。
荒れていた中学時代。
不登校になった高校時代。
引きこもっていたとき。
僕の暗黒期は、決まってマンガを読んでいなかった。
あのとき、マンガを読んでいたら、高校ももっと行っていたかも知れない。
家の電気を消して、ずっと部屋で引きこもることもなかったかも知れない。
それくらい、マンガは偉大だと思っている。
レッドブルは、一過性で、飲んだ瞬間した効果はない。
でも、マンガは違う。
血となり肉となり、心の栄養分として、一生残る。
小学生のときに読んだ『火の鳥』や『ブラックジャック』は、今でも覚えている。
生きていて困ったとき、悩んだとき。
マンガの主人公たちのセリフが頭に浮かぶことがある。
とある場面が浮かんできて、「こうしよう!」と思う。
僕は、マンガからたくさんのことを学んできた。
学校の教科書が「役に立ったな」と思ったことは、ほとんどないけれど、マンガは、もうたくさんのことを教えてくれた。
失恋したとき。
仕事でうまくいかなかったとき。
就活で心が病みそうなとき。
いつだって、僕のそばにはマンガがあった。
『サプリ』や『働きマン』を読んで、「仕事したいなぁ」と猛烈に思ったし、『スラムダンク』を読んで、何度だって這い上がろうと思うことができた。
人は、マンガは娯楽で、時間つぶしで、ただのエンターテイメントだと言うかもしれない。
でも、断言しよう。
マンガは、人生の教科書だ。
困ったとき、人生で迷ったとき、占い師に見てもらうよりも、僕は書店へ行ってマンガを手にとることを薦めたい。
余裕がないとき。
しんどさでキツいとき。
なんとかしようと思えば思うほど、袋小路に入る。
僕は、そんなとき、決まって一人で考えてしまう。
頭がグルグル回転して、ネガティブなことばかりを考えてしまう。
すると、余計に落ち込み、いつまで立っても出口がない、アリ地獄に足を踏み入れてしまう。
「マンガを読もう!」なんて発想には、ならなかった。
だから、ダメだったのだ。
しんどいときこそ、マンガを読まないとダメなんだ。
今は、不登校で「しんどいんです」という子たちには、「とにかくマンガを読め!」と勧める。
きっと人生の指針になると思うからだ。
未だに、マンガを読むと馬鹿になると言われることもあるけれど、そんなことは全くない。
マンガから得られる知識は膨大で、本を読むよりも学ぶことができる。
まったく知識がない中で、戦国時代を学ぶのは難しい。
教科書を読んでいても楽しくない。
けれど、『日本の歴史』をマンガで読むと、すんなり理解することができる。
それは、映像として頭に入ってくるからだ。
“卑弥呼”と、文字にして見るのと、実際に女性が描かれているマンガを見て、学習するのでは、吸収度が違う。
マンガで得た知識を深めるために、小説や本を読めばいい。
とにかく、時間があるなら、マンガを読むべきなんだ。
『弱虫ペダル』を読んで、僕はクロスバイクを買った。
『宇宙兄弟』を読んで、宇宙に関心を持った。
『ヒカルの碁』を読んで、囲碁をはじめてた。
マンガを読まなかったら、きっと「やってみよう」とは思わなかっただろう。
マンガという媒体を通して、僕の好奇心が育まれていった。
「もっと知りたい」「もっと見てみたい」と思うようになったのだ。
暇つぶしでもなんでもいい。
「宇宙飛行士になるつもりないから、宇宙兄弟を読む必要はありません」ということも、言われたりする。
でも、僕から言わせたら順序が逆だ。
マンガを読んでいたら、そこからどこかに繋がるのだ。
まるで、どこでもドアのように、他の世界、違う場所にマンガは繋がっている。
でも、読んでみるまでは分からない。
「きっとここへ繋がっているから読んでみよう」とする必要なんてない。
マンガは、あくまでもエンターテイメントだ。
楽しみながら、読んでいったらいい。
“こうしなければならない”なんてものは、全くない。
ただ、気が向くまま、読みたいマンガを読めばいい。
みんな読んでいるからといって、自分に合うかどうかは分からない。
心のアンテナにしたがって読んでみる。
すると、「あぁ、宇宙飛行士になってみたいな……」と、思うようになるのだ。
マンガは、未知の世界へ連れて行ってくれる。
行った先は、分からない。
全く興味が持てず、なにも得るものはないかもしれない。
全然知らなかったのに、すごく興味を持つかもしれない。
人との出会いがあるように、マンガにも出合いがある。
僕にとっては、手塚治虫先生(手塚作品)との出合いが人生を変えたように、キッカケになるような出合いが待っている。
だから、僕は子どもたちに言うのだ。
保護者の人に言うのだ。
「とにかく、たくさんのマンガを読ませてください」と。
きっと、人生を変えてくれるような、暗闇を照らす光を灯してくれる出合いが待っていると、信じているから。