僕が不登校になったのは、あまりにも「敏感」すぎたからかもしれない―人一倍敏感な人「HSP」という特性について

コラ!○○!おまえ話聞いてんのか!

そんな声を聞く度に、僕は教室の片隅でブルブルと震えていた。

○○、というのは自分のことではない。しょっちゅう叱られているクラスメイトだ。

僕が学校という場に馴染めなかった原因のひとつに、先生の怒る声が怖い、というものがあった。

それは、自分に対しての怒る声でなくても、ものすごく怖かった。
いつしか、誰かが怒られそうな行動をしているのが目に入ると、やめてくれやめてくれ・・・と思うようになった。先生に見つかってほしくなかった。

その日も、前の席の子が明らかに授業に集中していない。先生に見つからなきゃいいなぁ・・・。

おい○○!何やってんねや!

・・・あーあ、怒られた。これが嫌なんだよ。

そのうちに「先生の怒る声」を回避するべく、自らそういうものに注意するようになった。
それがクラスメイトの間では浮くようになって、目をつけられるようにもなった。

いまでも無意識のうちに街でもマナー違反とか怒られそうな行動をする人を見かけると、自然と避ける。
何かに対して知人友人が怒っていたら、あの手この手で気を逸らそうとする。
いつしかそれは、僕の「癖」として習慣化してしまった。

今にして思えば、僕は小学生のころからあらゆる物事に対して敏感だった。いや、敏感「すぎた」。
もちろん僕が怒られないことはなかったが、怒られる度にひどく憂鬱になった。
自分は先生に信用されていないのではないか、と思うことすらあった。

学級会で誰かが怒られているのを聞いてるのも、すごくしんどかった。
露骨に怒る先生の授業が嫌で、時々仮病を使って保健室で休んでいた。
たまに授業に出て、先生が怒らずに終わったときは、全身の力が抜けるほど安堵したことを、今でもよく思い出す。

きっと、こういうところが僕が集団行動に向いていない一因だったのかもしれない。
いつもこういう気持ちだったことを先生が受け入れてくれていたとすれば、ちょっと人生が変わっていたかもしれない。

でも、あのころの僕は、この気持ちが受け入れられることを、何も期待していなかった。

「HSP」という特性があります。

略さずに書けば、Highly Sensitive Person。つまり、「人一倍敏感な人」という意味です。

その名の通り、とても深い感覚や感受性を持ち、ものすごく敏感なセンサーを持っている人のことです。これは精神障害ではなく、ひとつの特性、性格としてカウントされます。

HSPという特性を持つ人の「敏感さ」は、想像以上に多岐に渡ります。環境変化や感情表現はもちろんのこと、痛さであったり、暑い寒いの気温調節、騒音、芸術作品、暴力表現、などなど、時々あまりに圧倒されすぎて自分を見失ったり、十分な休息が必要になることもあります。

この特性は全人口の実に15~20%が持っていると言われています。しかも男女差もありません。つまり、ごくごく当たり前のように「ものすごく敏感な人」が存在しています。もちろん中には子どももいます(子どもの場合は「HSC」、Highly Sensitive Childという分類をすることもあります)。

実際、日常的に子どもたちと関わっていると、たとえばお昼のお弁当の味が「今日はなんか違うな」とすぐ気付く子もいれば、来客が帰られるときに「騒がしい環境でごめんなさい」と謝る子もいます。そんな彼らもまた、心のどこかで敏感すぎるアンテナを張り巡らせているのだろうな、と想像しています。

僕自身も(正式な診断をくだされたわけではありませんが)HSPです。しかもかなり敏感な類だと思います。道端で突然後ろから車のクラクションの音がするととても心臓が痛くなりますし、いつ割れるのか分からない風船も大の苦手です。すぐびっくりしたり、髪や爪が伸びるとすごく気になります。

後ほどご紹介しますが、HSPのセルフチェックをしたところ、23個の設題で当てはまらなかったものはわずか3つでした。それ以外の20個は「YES」。思わず「なんじゃこりゃ?」と声が出ました。

なぜ、僕のようなHSPが学校という場に溶け込めないか。

たとえば、「クラス全員を叱る」という場面が学校ではよくあります。

たしかに「クラス全員」という見方ならそれは叱る必要のあることかもしれません。しかしHSPの子どもは、その一言一言を深く受け止めすぎます。ルールを守っていても、さらにルールを遵守しようとして、HSPの子どもは余計な神経を使います。結果、毎日ひどく疲れることになります。

HSPの子どもは、「クラス全員を叱る」というこの状況さえひどく苦手です。もし自分が叱られる必要があることとしても、不必要に罰を与えると、逆に重く受け止めすぎて行動が止まってしまうことがあります。何か過ちを犯しても、その時点で自分で自分を痛いほど罰しています。

そこからさらに批判や罰を科すと、それが発端で自己肯定感を大きく下げてしまうこともあるわけです。

また、騒音にも敏感なHSPの子どもは、当たり前ですが騒がしい教室で1日を過ごすことにも苦痛を感じます。前述しましたが、大きな声で先生が叱る、というのもHSPの子どもにとっては自分に向けたものではないとしても耐えられないこと。実際に先生の怒鳴り声が原因で不登校になった例もあります。

環境変化にも敏感だと、家とはまるっきり違う学校という独特の雰囲気についていくことが困難になることもあります。人間関係の構築も後手に回ってしまい、非HSPの子どもたちがうまく構築できたころにようやく人間関係を築く気になったものの、なかなか割って入れない・・・となります。

HSPの子どもにとって、学校はあまりにも刺激が強すぎる場所。

僕が中学で不登校になったのは、これがひとつの原因なのだろう、と今になって思います。

この敏感さは、決して悪いことではありません。むしろ「才能」です。

たとえば、何事にも敏感ということは他人の思いに共感する才能に長けている可能性を秘めています。その人が不快な思いをしたらそれに共感し、いかに和らげるか。悲しい思いをしていたらともに涙を流す人もいるかもしれません。感受性が豊かなのも、HSPの特長です。

そして、何かの間違いにもすぐに気がつくのならば、文章における校正や訂正にも向いています(ちなみに、僕も誤字や読み間違いに結構すばやく気がつくほうです)。

細かいことに気がつくので、服の着心地や食事の味がいつもと違えばすぐに口に出すでしょう。ただ、ここで誤解してほしくないのは、決して悪口として「今日の味噌汁はちょっと辛い」と言っているわけではないのです。HSPは、いつも食べているものの味が少し違うと急に不安に感じるのです。

僕ですらよく「これ辛くない?」とうっかり家族に言ってしまい、それが小さな衝突を起こしてしまうのですが、ほかの人にはそう感じなくてもHSP本人にとっては「辛い」のだから仕方がないのです。こうしてHSPは、敏感さ故に時折とても鋭いコメントや感想を残してしまいます。

それは文句や批判と捉えられがちですが、本人は何も悪気がなく、単純な感想としてそう言います。そこで「いや、自分は辛くない」と言っても堂々巡りになるだけです。「そう、辛く感じたのならごめんね」などと、「辛い」という意見をそのまま尊重したり、受け入れる姿勢を見せてあげてください。

前述しましたが、HSPは全人口の実に15~20%、つまり5人に1人いる計算です。まったく珍しい存在ではありません。また、本来はHSPであるはずなのに、ADHDと誤診されるケースもあります。先週書いた「起立性調節障害」でもそうですが、まだまだ世間に認知されているとは言い難い特性なのです。

あらゆる物事に対して敏感すぎて、自信を失うHSPは少なくありません。ちょっとの物音でひどくビックリしたり、少し言っただけで深く受け取ってしまい大きく傷つく人もいます。そのときに「なんでそんなことで?」と穿った見方をされてしまうと、HSPの人は大人子ども問わず窮地に陥ります。

まずは、何事にも敏感に受け取ってしまう人がこの世の中には大勢いる、ということが広がってほしいな、と思います。もしかしたらあなたの身近にもいるかもしれませんよ。

HSPについて、詳しく知りたいあなたへ

先述したHSPに関するチェックは、以下で受けることができます。

Are You Highly Sensitive?(日本語のサイトです)

「自分の子どもがHSPかも?」と思った場合は、以下のチェックで確認することができます。

Is Your Child Highly Sensitive?(日本語のサイトです)

HSPに関する書籍もあります。代表的なのは、エレイン・N・アーロン博士によるささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。というものです。HSPの子ども(HSC)向けに書かれている本としては、同じくエレイン・N・アーロン博士のひといちばい敏感な子がオススメです。

また、北海道の精神科医で長沼睦雄さんという方が「敏感すぎる自分」というテーマの書籍をいくつか刊行されています。当事者に向けて書かれたものですが、「敏感すぎる自分」を好きになれる本もHSPについての入門書として最適です。

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    この記事を書いた人

    子どものころより人一倍敏感な特性を持ち、中学3年間を不登校で過ごす。大学卒業後、不登校ボランティアを経て2014年よりD.Liveに参画し、現在は通信制高校教員を両立しながらTRY部や不登校講演事業を中心に担当。HSP(Highly Sensitive Person)特有の繊細さを活かし、今を生きる子どもたちの先生でも友達でもない「ナナメの関係」になることを目指しています。

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