「書くのが嫌!」だった生徒の成長に、「学力」以外に大事な能力があると確信した話【スタッフが見たTRY部】

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いまの時代は、とにかく「学歴」がモノ言う社会だ。

書店に出向けば、「子ども全員が東京大学に合格した話」などという本が店頭で猛プッシュされている。僕が学生だったころは、在学中の大学によって就職サイトの情報や企業説明会の定員が違う、という噂話もしょっちゅう耳にしていた。

たしかに、学力は非常に大事だ。難関大学を卒業すれば社会でいろいろと通用するのも、確かなのだろう。

しかし、本当にそれで良いのだろうか?

僕は、学力以上にもっともっと大事な力があると信じてやまない。

それは、ともすれば学力の土台となるもの、たとえば人前で話す能力や人ときちんと関わることのできる能力、さらには何かをやり遂げたり自信の源になる能力だ。ものすごく勉強ができていても、たとえば人付き合いが苦手だったり、何事も途中で投げ出してしまうことが多いと社会ではなかなかうまくいかない。

こうした信用に関わる能力は、なにも難関大学を卒業したからと言って身につくものではない。

昔、高校の小論文の授業でこんな話を聞いた。

常に好成績をあげていたAさんは、卒業してデパートのエレベーターガールになった。しかし肝心の笑顔がうまくつくれない上に、ハキハキともしゃべれずに研修で何度も叱られた。そのうち自信を失い、自分には向いていないとわずか数ヶ月で彼女は退職してしまった。

一方、勉強がまるっきりできなかったBくんは、周囲の不安をよそに卒業後スーパーに就職した。するとそこで人当たりの良さを発揮し、Bくんが出勤していないと買い物客に寂しがられるまでに至った。当然会社もその功績を認め、Bくんは異例のスピードで出世したそうだ。

そう、いくら成績が良くても、その成績の良さが必ずしも社会で通用するとは限らないのだ。

それを裏付ける一節が、『「学力」の経済学』という本にある。

どんなに勉強ができても、自己管理ができず、やる気がなくて、まじめさに欠け、コミュニケーション能力が低い人が社会で活躍できるはずはありません。一歩学校の外へ出たら、学力以外の能力が圧倒的に大切だというのは、多くの人が実感されているところではないでしょうか。

引用:中室牧子(2015)『「学力」の経済学』ディスカヴァー・トゥエンティワン

『「学力」の経済学』では、これらコミュニケーション能力や意欲、忍耐力、自制心などをひっくるめて「非認知能力」と定義し、いかにこの非認知能力を養っていかないと卒業後の進路や社会において通用しないか、あらゆるデータで解説されている。

そして今、この非認知能力が、前述の「学歴」がモノいう社会で軽視されているような気がする。

一般の学習塾が「勉強」を教えるのならば、弊団体の教室「TRY部」は、まちがいなく「非認知能力」を育むところだ。

コミュニケーション能力でいえば、TRY部では「対話」することを重視するワークを多く取り入れる。たとえば授業の最初にやる「前週の振り返り」。前の週起こった出来事を5分間書き続け、それを隣の人とペアを組んでお互い発表し合う。これは話す力はもちろん、聴く力も重要になる。

そして、授業の最後には「今週の計画」を立てる。ある大きな目標に向けて、今週は何をするか?そして、毎日できる小さな目標も考える。こうして「今日(今週)は何をすればいいのか」を明確にすることで勉強や生活に対する意欲を高めて、自信を育むことにつなげていく。

立てた計画は立てっぱなしにするのではなく、みんなからコメントをもらう。これも立派な「コミュニケーション能力」を養うワーク。それにしても応援されるというのは、やっぱり嬉しいものだ。もっとも、僕の今週の計画に対してみんながくれたコメントはオススメばかりだったが。

もりもりとペンを片手に今週の計画を書き記す生徒たちを見て、ふと思い出したことがある。

TRY部に、極端に「書くこと」を嫌っていた生徒が、2人いた。

じゃあ、今週の目標を書いてー、と促すと、さんざんペンを持ったまま固まった挙句、A4サイズの紙の左上にそれはそれは小さく薄い字で「はやおきをがんばる」とひらがな9文字書いただけの生徒もいた。「もう、書きたくないー!!」と絶叫し、ペンすら持たなかった生徒もいた。

僕たちは、そんな生徒たちを1度たりとも「ちゃんと書きなさい」と叱ったことはない。

しかし、だ。

そんな「書くことが嫌」だった生徒が、いまやなんのためらいもなくペンを持つようになっている。使っているペンの自慢をするようにもなったし、手帳を開けばページいっぱいに今週の計画や前週の振り返りを書くようになった。書くのが面倒だとすべてひらがなで書いていた生徒の姿は、もうない。

それを、僕は当たり前のように受け取っていた。正直、反省した。

「書く」ということは、すべての生活、職業において非常に重要な役割を持つ。逆に言えば書くことなしで成り立つ職業などない。あらゆる試験も、学力や記憶力以前にまず紙に書くことが求められる。つまりいくら難解な数式を理解しても書くことができなければなんの意味もない。

「書きたくない!!」と叫んでいた彼らにとって、これはあまりにも大きすぎる一歩なのではないか、と、手帳にもらったコメントを読みながら、はっと気がついた。

TRY部という場所は、すぐに学力を伸ばしたいと考えている人には、まったく向いていない。

その代わり、もっと基礎的な部分に悩みを抱えている子どもたちには、向いている。それは、「文字を書くのが嫌」なのかもしれないし、「朝起きることができない」のかもしれない。もちろん「○○先生が嫌」とか、「クラスに馴染めない」ことも考えられる。

ただでさえ多感な思春期の子どもたちがひとたびこういう悩みを抱えてしまえば、学力どころではなくなる。成績が下がってショックを受けて勉強に対するやる気がますます起きなくなるかもしれない。前述した「非認知能力」には、そんなときにいかに早く立ち直れるか、という能力まで含まれている。

「書く」ことができなければ学力は伸びない。

「悩み」で頭がいっぱいならば勉強に集中することもできない。

TRY部は、そんな不安を取り除いて、毎週の計画や振り返りなど様々なワークを通して、そんな子どもたちに生きるヒントを教える場。

それが必ず「学力向上」につながると、僕は信じている。

TRY部 体験したいかた募集

対象:中学1年生 〜 大人だけの参加もOKです。
(大学生も参加できます!)

参加費:無料

場所: 草津市立まちづくりセンター(JR草津駅すぐ)

持ち物:筆記用具

受付日:毎週月曜日に体験を受付しております。

時間:19時15分までに草津市立まちづくりセンターの教室にお越しください。

申込み方法:info@dlive.jp まで、「TRY部体験参加」と記入し、お名前と学年(年齢)、簡単な動機、参加希望日を書いてお送りください。

※ お問い合せもinfo@dlive.jpまで

TRY部の詳細についてはこちらから

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山本 駿

山本 駿

NPO法人D.Live スタッフ / 高校非常勤教員(社会科) 京都出身。中学3年間不登校。岐阜県内の大学を卒業後、不登校ボランティアを経て2014年よりD.Liveに参画。主にTRY部や不登校講演事業を担当しながら、今を生きる子どもたちの先生でも友達でもない「ナナメの関係」になることを目指しています。