残念ながら、不登校の家庭にとって、先生はジョニー・デップです。

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新年を迎え、ユウジは友達の年賀状を見るため、ポストに郵便物を取りに行った。

たくさんの束になったものを見ながら、家に入る。

すると、その中に1枚の年賀状を見つけた。

写真とコメントが入っており、差し出し人はよく知っている人だった。

少し気が滅入るように思いながら、写真を見る。

そこには、中学のクラスメイト全員が笑顔で映っていた。

体育祭のときに撮ったのだろう。

少し土埃が付いた体操服を着て、ハチマキを頭に巻き、「すごく充実しています」と言うかのような笑顔で同級生はこっちを見ていた。

この体操服を最後に着たのは、いつだろうか……。

思い出すこともできないくらい、しばらくの間、ユウジは中学校へ行っていなかった。

せっかく、先生が送ってくれた年賀状。

仕方ないな……。

ユウジは、ポツリとつぶやきながら、返事を書こうと、新しい年賀状を引き出しから取り出した。

なにを書こうか……。

チラッと、先生からの年賀状を見ると、まぶしいくらいの笑顔が飛び込んでくる。

はぁ。

思わず、ユウジはため息をついていた。

こういうの、地味に傷つくんだよな……。
 
 

文部科学省の発表によると、不登校の中学生は、103,247人もいるそうだ。(『問題行動・不登校調査 』平成28年度)

東京ドームが2日間、超満員になる人数の中学生が学校へ行けていない。

全国にある中学校で、82.9%もの学校に不登校児童が存在しており、不登校の割合は、33人に1人。

つまり、どこのクラスにも不登校児童が1人いる計算になる。
 

今の時代、どこの学校の先生も不登校の子どもと関わるだろう。

でも、ほとんどの学校の先生は、不登校の子に対しての関わり方を間違っている。

普段、不登校児童の保護者と関わっている僕たちのところへは、先生への愚痴や不満がたくさん聞こえてくれる。

中には、先生のプレッシャーによって心を病んだかたもいる。

「今日、どうしました?」「明日は、来れますか?」
毎日のようにかかってくる電話。

頻繁に、家にもやってくる。
「会いたくない」と叫び、喚く子もいる。

保護者としては、学校へ行けていない我が子を守りたい思いと、学校と繋がっていたいという思いの狭間で苦しむ。

「先生と、どうやって付き合っていけばいいでしょうか?」

「今度、家に来るって言うのですが、どうやって断りましょう?」

「毎日かかってくる電話にうんざりしているんですが、どうしたらいいですか?」

先生との関わりについての相談は、後を絶たない。

頻繁にかかってくる電話が苦痛で、「やめていただけますか?」と言ったら、そこから半年以上まったく連絡をしてこなくなった。と、保護者さんが嘆いていた。

大きな和紙に、筆で『頑張れ』と書いて、窓の外から大声で叫んだ先生もいたという。

保護者にとっては、たまったものじゃない。

子どもも、うんざりしている。

不登校の子どもは、言う。

「別に俺らは、かわいそうなヤツらでもないし、同情される必要もないねん。ガンバれって言われても、なにをどうガンバったらいいかも分からへんし、ほんま意味分からん……」
 

ここまで読んだかたは、きっと思ったことだろう。

先生がダメなんだ。
先生は、なにをやっているんだ。
先生が、問題なんだ、と。

でも、僕はそうは思わない。

僕は、先生は加害者ではなく、むしろ被害者だと思っている。

保護者から先生に関する悩み相談がたくさん来ているのに、どうしてか? と思うだろう。

それは、先生には不登校を理解することが難しいから。

不登校は、白ご飯が食べられない人みたいだと僕は思っている。

当たり前に食べているご飯を「食べたくない」と言うのと、「学校に行きたくない」と言うのは同じ。

ご飯を食べて生きてきた大人からしたら、理解ができない。

「どうして?」と思う。

特に、先生にはその傾向が強い。

先生にとって、学校は楽しい場所で、良い思い出がいっぱいある。

良かったことがあるからこそ先生になった人も多い。

言わば、白ご飯が大好きな人だ。

白ご飯が好きだからこそ、白ご飯を「食べたくない」という子どもに困惑してしまう。

そして、思うのだ。

「きっと、この子は、白ご飯の美味しさを知らないだけなんだ。ガンバって美味しさを伝えてあげよう!」

そうやって、クラスのみんなが待っていると伝えたり、冒頭のユウジに届けたように、笑顔の写真を送ったりする。

悪気は、ない。

先生は、ただ、知って欲しいと思っているだけなんだ。
 
なかなかご飯を食べてくれない子に、どうやったら食べられるようになるかと、先生は、工夫をこらす。

ご飯に合うおかずを勧めて、「こうやったら食べられるようになるよ」と言うかのように、保健室登校や放課後だけの登校でもいいと伝える。

もちろん、それでご飯が食べられるようになるかも知れない。学校へ行けるようになる子もいるだろう。

でも、ほとんどの子は、白ご飯を食べたくないのだ。

学校に行きたくない子にとっては、なにがあろうが、学校がイヤなのだ。

好き嫌いに明確な理由がないように、学校へ行きたくないことにも理由がないことも多い。

ただ、ただイヤなのだ。

生徒は、「学校は、お化け屋敷みたいやねん」と言った。

この気持ちは、きっと先生には分からない。

僕は、仕方のないことだと思っている。

どれだけガンバっても、白ご飯が好きな人が、嫌いな人の気持ちを理解することなんて不可能だ。

白ご飯を食べて生きてきた人にとって、ご飯がない生活は想像できない。

だから、なんとかして食べさせようとする。

食べないと困ると、子どもを脅す。

子どもは、「別に炭水化物取るなら、パンとかうどんでいいやん」と思っているのにも関わらず。
 

僕は、先生の不登校への関わり方を見ていて、ジョニー・デップを思い浮かべる。
 

先日のことだった。

知り合いの先生がおこなっている教師勉強会へ参加したときのこと。

同じグループに2年目の小学校教員がいた。

僕が不登校支援をしていると言うと、彼は少し疲れた表情を浮かべながら言った。

いやぁ、うちのクラスにも不登校の子がいるんですよ。
秋から学校へ来れなくなっちゃって。
お母さんも、疲れたとおっしゃっていて、心配で。
なんとかしてあげたいと思うのですが、なかなか。
家庭訪問もするんですが、本人が会ってくれなくて。
僕も、学校が全てじゃないと思っていますし、行けなくてもいいかなと思います。
でも、なにかできることがないかなって思うんですよね。
担任として、なにかしてあげたい。

その先生の話を聞いて、僕は改めて思った。

先生も苦しんでいるし、困っているんだな、と。

理解出来ない子をなんとか理解しようとしている。

子どものために、なにが出来るだろうとしている。

きっと、ここに挙げた先生たちはみんなそうだろう。

ユウジの先生も、「ちゃんと気にかけているよ」というメッセージを伝えたいと思い、年賀状を書いたのだと思う。

大声で叫んだ先生も、なんとかして気持ちを伝えたいと思っての行動だ。

良かれと思った行動が、残念なことに子どもや保護者を傷つけることになってしまっている。
 

これは、『シザー・ハンズ』のジョニー・デップ演じるエドワードと同じだ。

エドワードは、手がハサミの人造人間。

好きな子を抱きしめると、傷つけてしまうので、できない。

車に轢かれそうな子どもを助けようとして、ハサミで傷をけてしまう。

良かれと思っておこなうことが、人を傷つけてしまうのだ。

先生も同じ。

先生が「なんとかしたい」と思っておこした行動が、悲劇を生んでしまっている。
 

『シザー・ハンズ』が涙なしで見られないのと同じように、子どものことをこれだけ思っている先生の行動が、傷つけることになってしまっている事実に、僕はただただ胸を痛めている。

だから、思うのだ。

先生は、被害者だと。

先生は、決して悪くない。

分からない中で、必死でやった結果だ。

決して、責められない。
 

不登校の子と関わっている僕たちが、先生と保護者の間に立ち、保護者は先生にどうして欲しいと思っているのか、なにをされるのがイヤかをちゃんと理解し、先生に伝えないといけない。
 

これ以上、悲劇を生まないためにも。
 

いつか、ハサミの手をした先生が、精一杯に子どもを抱きしめられるように。

保護者さん、先生へお願い

 

『先生ができる不登校の子や家庭との関わり方』という冊子を作りたいと思っています。

先生も保護者さんも、お互いにストレスを感じるのは、悲しいですよね。

そこで、お願いです。

(先生がたへ)
不登校の子どもや保護者さんとの関わりで困っていること、分からないことを教えてください。

(保護者さんへ)
先生の関わりで、イヤだったこと、困ったこと、ありがたかったことなど教えてください。
また、どうしたらいいか分からないこと、こうして欲しいこと、知りたいことなどを教えてください。

ysk@dlive.jp(田中)まで、お送りください。
なお、資料に掲載する際には、お名前や学校名などは全て伏せて掲載させていただきます。

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田中 洋輔

田中 洋輔

1984年 大阪生まれ 立命館大学文学部卒 好きなものは、Mac/ライフハック/ラーメン プロ野球選手を目指すも、強豪校へ入り挫折し不登校に。大学に進学するも、引きこもりになる。周りの支援で復活。「自分のようにしんどい思いを子どもたちにさせたくない」と思い、2009年、学生時代にD.Liveを立ち上げる。不登校のときの話しや自尊感情(自己肯定感)に関する講演や研修をおこなう。夢は、「能力や環境に関係なく、全ての子どもが自分の未来に期待出来る社会をつくる」こと。学生時代は、お笑い芸人として漫才をしていた過去をもつ。