スタッフがなにもしないので、不登校の子がどんどん元気になった。

「あんな、スタッフの田中さんも得津さんも、なんもせぇへんねん。やから、俺たち生徒でいろいろやっているねんで」
ある日のこと、保護者さんから「うちの子がこんなこと言ってましたよ」と、メールをいただいた。
僕は、このメールを見た瞬間、ニヤリとして、「してやったりです 笑」と返信した。
不登校のフリースクールとして、昼TRY部を初めて半年以上がたった。
当初は、手探りだった僕たちも、次第にコツを掴んできた。
はじめの頃は、付きっきりで生徒を見ていた。
僕たちがやることを考え、「次はこんなことをしよう」と提案をしていた。
「次は、なにやるの?」
「ヒマやねんけど?」
子どもたちは、口々にそんなことを言う。
教室が始まる前には、今日はなにをしようかをじっくり考えていた。
しかし、生徒が増えるうちに、僕たちは”先生役”を辞退した。
僕は、子育ては植物を育てることと同じだと思っている。
以前、「庭師と考える子育て」というイベントをおこなった。
そのときのゲストである三浦豊さんが言っていたことが、ずっと印象に残っている。
『人が育てた木って油断するんですよ。水をあげすぎると、あまり根を伸ばさなくなって、土に根付かないんですよね。これくらいでも水をもらえると思っちゃう』
子どもとの関わりも同じ。
大人が全て用意をしていると、子どもは油断する。
全てやってくれると思い、お客さんになる。
だから、僕たちは敢えて、子どもたちを放置させている。
スタッフは出来るだけなにもしない。
生徒たちと同じ部屋で、見学者への対応をするなど、同じ場所にいながら違う仕事をしている。
そうすると、子どもたちはスタッフに頼ることができないので、自分たちで考えるようなる。
「次、なにしよう?」
「ヒマやわ。なんかやろうぜ!」
今までスタッフに投げかけていた言葉を、生徒たち同士で話し合うようになった。
面談をしているときも、常に聞き耳だけは立てておいて、「ここ!」というタイミングのときだけ、出るようにしている。
(最近、その必要もなくなってきて、ちょっぴりさびしい気持ちもある)
今までは、スタッフから生徒というやりとりが、生徒同士でのやりとりに変わった。
見学に来た人は、ほとんどの人が子どもたちの様子を見て驚く。
スタッフがほとんど入らず、子どもたちがみんなでワチャワチャやっているから。
「えっと……、あの子たちは、みんな学校へ行けていないことなのでしょうか?」
小さな声で、聞いてくる人も少なくない。
子どもたちは、大人が思っているよりも、弱くない。
学校へ行けないだけで、別になにかが劣っているわけでもない。
だから、僕たちから水を与えることはしない。
ちゃんと、土に根を伸ばして欲しいと思うから。
先日、子どもたちの絆が出来てきているのを感じたエピソードがある。
教室へ女子高生が見学に来た日のこと。
その子を見て、ある生徒が家に帰って言ったそうだ。
「めっちゃ化粧していたけど、あれはきっと自信のなさを隠しているんやと思うな。でも、あの子がもし来ても、ぼくらの仲間に入ったら大丈夫やわ。そういう仲間だから」
ちょっと、泣きそうになった。
◆小冊子『不登校の子が劇的に変わるヒミツ』をプレゼント中◆
下記フォームでお申込みいただくと、メールにファイルを添付し、お送りいたします。