学校へ行けなかった中学生が、懸命に勉強をするまでの物語

これは、D.Liveの教室へ通っている生徒の物語です。
不登校で、学校へ行けない姿を見ていると、「いつになったら、この子は前を向けるようになるだろう」と、絶望することもあるでしょう。

私たちにお問い合せいただく保護者さんも、みんなそんな状況です。

「もう、どうしたらいいかわからないです……」と、おっしゃいます。

病院にも行って、カウンセリングも受けた。

けれど、どうも合わない。突破口が見られない。

不登校は、時間がかかることも多いですが、必ず出口はあります。

今回は、「こんなふうに変わっていくのか」と知っていただければと思い、ある生徒の物語をご紹介いたします。

※ 生徒の話を参考に、少し脚色を加えながら書いております。

どうしてかわからなかった。

「学校に行こう」と思うのに、体がしんどくなる。
頭痛がする。腹痛がする。

「なぜだ?」

学校へ行こうと思うのに、体が思うようにいかない。

しばらくのうちは、行ける日には行っていた。
無理して学校へ行ったこともある。

けれど、次第に行けない日が増えてきた。

親に、「どうして行けないの?」と言われても、答えることができない。

だって、自分でもわからないから。

いじめられたわけじゃない。
勉強も好きではないけれど、そこまで嫌悪するほどでもない。

頭では「行かなきゃ」と思うのに、体が動かなかった。
体が行くことを拒否していた。

まるで、体と頭が別々のような感覚だった。

先生がたまにやってきて、「学校来いよ」と声をかけてくれた。

ありがたかったけれど、少し迷惑にも思っていた。

自分も行きたいと思っているし、行かなきゃならないってわかっている。

でも、行けないのだ。

いくら励まされて、「学校、楽しいぞ」と言われたところで、「はいそうですか」と行けるようになるわけじゃない。

納豆嫌いな人が、「納豆おいしいから食べてみなよ」と言われて食べないのと同じで、いくら言われたからといって出来るわけじゃない。

何度も先生が来ると、だんだんプレッシャーになっていった。

なんだか、学校へ行けていないことを責められている気持ちになった。

学校へ行けなくなり、家で引きこもるようになった。

家ではやることなんて特になくて、ヒマをつぶすようにゲームばかりをしていた。
体はだるいし、気持ちも暗い。
楽しかったゲームも、なんだか全然楽しくない。

ただ、気を紛らわすための時間つぶしにしかならなかった。
テレビを見ても、なにも感じなかった。
まるで感情をどこかに忘れてきたみたいに、笑うこともなくなった。

ただ、ただ、毎日イライラしていた。
親や妹に当たった。
自分でも、どうしてこんなにむしゃくしゃしているのかわからない。

でも、その気持ちを抑えることができなかった。

学校にも行かず、毎日家の中にいると、自分がとんでもなくダメなやつに思えた。
“人生失格”だと烙印を押されるように感じる。

だから、家から出られなくなった。
近所の人になんて言われるか……。
想像しただけで怖かった。

「あの子、学校行ってないみたいだよ……」と言われているのを想像すると、吐き気を覚えた。

誰にも会いたくなかった。
いや、会わせる顔がなかった。

しんどそうにしている姿を誰にも見られたくないし、今の自分が本当の自分だと受け入れたくなかった。

ただ、今は行けないだけだ。
これがほんとの自分なんかじゃない。
なにかちょっとおかしいだけ。
少し調子が悪いだけで、こんな状態が長く続くわけない。

必死で自分に言い聞かせる。

「このままじゃダメだ……」
そう思って、寝る前には「明日は、学校へ行こう!」と思う。

朝、目が覚めると、「よしっ! 行くぞ!」と力を入れる。

でも、体が動かない。

やっぱり、しんどい。
頭が痛い。お腹が痛い。

体が全力で拒否してくる。

「いや、行くんだ!」
「今日こそ行くぞ!」

脳から指令を出すのに、体は言うことを聞かない。

ストライキでもするかのように、体は主人の命令を無視して、家に居座ろうとする。

ダメだ……。
また、行けない……
いつになったら行けるようになるんだろう……。

自分は、なにか欠陥品じゃないかと思うときがある。
みんなは、普通に学校へ行けているのに、自分だけが行けていない。
当たり前のことが、当たり前にできない。

どうして……?

このまま、ずっと家に引きこもっているのだろうか。
学校にも行かず、進学もせずに、ずっと……。

そう考えると、怖くてたまらない。

危機感はどんどん募るばかりなのに、体はいつまでたってもストライキを続ける。

そんな状態が続き、数ヶ月。

だんだん、行けないのも当たり前になり、「なんとしても行こう!」と思わなくなってきた。

気合いを入れてもどうせ行けないのだ。

最近では、もう諦めた気持ちになっていた。

昼頃に起きて、ゲームをする。
適当にテレビを見て、ご飯を食べる。
眠たくなったら昼寝をして、起きたらゲーム。
そして、夜中まで起きている。

そんな生活だった。

見かねた親が、誰かを連れてきた。
「ちょっと話を聞いてもらうだけだし」と言うから、「まぁ、いいよ」と返事をした。

うちに来た男の人は、「学校へ行こうと思うのをやめなさい」と僕に言ってきた。

僕は、耳を疑った。
普通は、なんとかして学校へ行かそうとするんじゃないのか?

僕がなんとかして行こうという気持ちがあるのをどうしてこの人は、止めようとするんだろうか?

「キミは、学校へ行こうと思っていて、でも行けなくてしんどくなっているよね。
結果、家では疲弊している。
それじゃあ、いつまでたってもしんどいままだよ。
まずは、学校のことは忘れて、家の中を満喫するんだ!」

そう言うと、その人は「では、宿題を出すね」と言って、僕に課題を言い渡して帰っていった。

次の日、お母さんが「こんなメールが来たよ」と言って見せてもらうと、”オススメ漫画・アニメ リスト”だった。

「課題は、2週間で、なにか漫画やアニメ、ドラマを見よう。
学校なんて忘れて、没頭すること!
おもしろくなかったらやめたらいい。
おもしろいものをどんどん探して、見てごらん」

今まで、テレビやアニメは、ただの時間つぶしだった。
なにかをしているときでも、常に学校がちらついた。

こんなことしているとき、同級生はみんな学校へ行って授業をうけているのだと思うと、気持ちは沈んだ。

忘れようと思うものの、浮き輪のように、底へ沈めても、スグに浮かんできた。

だから、「超おもしれー! って思って、漫画を読むんだよ」と言われたとき、ハッとした。

僕は近頃、心の底から楽しんだことがなかった。
どんなときでも、学校のことが頭にあった。

唯一、解放されるのが夏休みなどの長期休暇。
そのときだけは、僕はみんなと同じ中学生に戻れる時間で、心から安堵できる時間だった。

なにを読もうかと思ったとき、大好きなサッカーの本が読みたいなと思った。

近くの書店だと知り合いに会う可能性があったので、車で少し遠い本屋さんまで連れて行ってもらい、おもしろそうな本を見つけ、買ってもらった。

アニメは、Amazonプライムで、おもしろそうなものをいくつか選んで、見た。

見ているとき、読んでいるとき、やっぱり、学校のことが頭にちらつくことがあったけれど、これまでよりはマシになっていた。

昼間、家でゴロゴロして、漫画を読んでいても、それほど罪悪感を感じることはなくなった。

2週間に1回ほどの面談では、とにかく「家の中、楽しい?」ということしか聞かれず、次はどんなアニメを見るか。
どんなドラマを見るかの話しばかりしていた。

2ヶ月ほどたつと、だんだんやりたいことが増えていることに気がつく。
自分の中で、やってみたいことが溢れてきた。

サッカーの試合を見に行きたいし、ポケモンセンターへも行ってみたい。

これまでは、家から出るのすら億劫だったのに、今は外へ出たいという気持ちが強くなっていた。

近所の人に見られるのは相変わらずイヤだけれど、遠くなら問題がない。

そうして、両親と共に出かけることも出来るようになっていった。

春が近づくにつれて、だんだん「勉強をしたい」という気持ちになってきた。

僕は4月から中学3年生になる。
嫌が応でも進学を考えないとダメな時期にはいる。

高校には行きたい。

学校へ行けていなくて、勉強はどんどん遅れをとっている。
勉強の意欲は増してきたものの、そう簡単には事は進まなかった。

気持ちばかりが焦り、「勉強しなくちゃ!」とは思うものの、なかなか手がつかないでいた。

そこで提案されたのが、家庭教師だった。
週に1度来てもらい、勉強を見てもらう。

一人ではなかなか勉強が出来ないので、一緒に勉強してくれるのは有り難かった。

だんだんわかることが増えてくると、「やろう!」という気持ちも増してきた。

オープンキャンパスへ行くことで、「高校へ行くぞ!」という気持ちは、ますます強くなっていった。

4月からは、昼TRY部というフリースクールにも通うことにした。

はじめの頃は、行くのがとてもしんどかった。
電車で30分ほどかけて、瀬田にある教室まで通う。

近所の人には会いたくないし、電車で誰かに会ったらイヤだな……と、思っていた。

でも、少しずつ通えるようになっていった。
小学生や年下の学年の子もいたりして、なかなか楽しい。

半年前には、いろんな人たちと笑っているなんて想像していなかった。

家から出て、電車で30分もかけて通うことができるとは思ってもいなかった。

親から言われなくても勉強しているなんて、ウソみたいだ。

学校へ行けないとき、ほんとしんどかった。
いや、まぁ今も学校へは行けていないんだけど。

先日、学校の先生が進路のことを話しに家へやってきた。

僕の姿を見て、「先生が驚いていたよ」と、あとで母親に聞いた。

「すっごく元気ですね」と先生は、言っていたみたいだ。

受験が近づいてきて、不安になる気持ちもある。
テストの日、お腹が痛くなったらどうしようと心配になることもある。

不安がゼロになったことはない。

でも、半年前には想像していなかったほど、楽しい毎日を過ごすことができている。

勉強も少しずつだけど出来るようになってきた。
サッカーの試合はおもしろくて、ワクワクしながら見ている。

できないこと、うまくいかないことは、まだまだたくさんあるけれど、なんだか出来そうな気持ちになってきた。

僕の人生は、まだまだ始まったばかりだ。

きっと高校生活は、もっともっと楽しいものになる。

さぁ、これからが楽しみだ。

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    この記事を書いた人

    1984年 大阪生まれ 立命館大学文学部卒

    中学時代は、部活に打ち込み、勉強では学年で常にトップ10以内。
    しかし、中学3年生のときから学校がしんどくなり、誰とも話さなくなる。
    野球選手を目指し、大阪の野球強豪校へ行ったものの、自信を失い退部。そこから学校へ行かず、河川敷で過ごす毎日をおくる。
    浪人して立命館大学へ入学したものの、なにをしたいかが分からなくなり、行く意味を失う。1回生の夏から1年ほど、京都の下宿で引きこもる。
    友人の支えもあり、復活。政治家の秘書やテレビ制作などのインターンをおこない、期間限定のカフェも開く。「自分のようにつらい思いをさせたくない」と思い、D.Liveを立ち上げる。
    フリースクールや自信を取り戻す教室を運営。不登校に関する講演や講座もおこなっている。
    京都新聞にして子育てコラムを連載中。
    詳しいプロフィールはコチラから

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