不登校と関わる全ての大人に捧げたい最高の1冊。

予感は、していた。
「これは、もしかしたら……」と。

しかし、そんな僕の想像は、軽く超えていた。

不登校に関するイベントで読書会をすることになり、スタッフに本を選んできてもらった。

名著に出会うとっておきの秘訣を伝授し、本屋へ行ってもらい、購入してきたのが、ある1冊の本だった。

少し怖いイラストが書いてあり、タイトルも響かない。
第一印象は、「なんじゃこりゃ」だった。

初版は、1998年で20年以上も前の本。
しかし、未だに、ひっそりと売れ続けている本でもあった。

20年以上前の本だったら、この装丁もうなずけるなと思いながら、ページをめくっていく。

ペラペラ見ているだけだったけれど、「これはおもしろいぞ」と思った。

不登校についてはもちろんのこと、母親としてどんなことができるのか、学校の先生やカウンセリングとどのように付き合うかも書いてあった。

「これは、不登校の教科書になるかもしれない」と期待を胸に読書会をはじめた。

参加者みんなで、ページを分割して本を読む。
自分が担当したところは、紙にまとめて、発表する。

すると、自分は数十ページしか読んでいないのに、1冊まるまる読んだように学べる。

これは、アクティブブックダイアローグとよばれる手法をつかっての読書会。

僕はあえて当日まで本を読まなかった。
読みたい欲求にとらわれたものの、ペラペラめくるだけに抑えておいた。

この感動を参加者のみんなと感じたかったから。

今まで、不登校に関する書籍は、何冊も読んできた。
不登校について書かれているWebサイトもたくさん読んだ。

毎日のように不登校の子どもと接し、不登校に関する相談も保護者から受けている。

相談を受けるたびに、思っていたことがある。
「もっと不登校を分かりやすく説明している本があれば……」

良い本は、いくつかあった。
けれど、どの本にも欠点があり、なにかが不足していた。

良いことは書いてあるものの、結局どうしたらいいのか具体的なことが載っていない本。

体験談ばかりで、活用しにくいもの。

スタンスが極端で、信用していいかどうか不安になるもの。

そんな本ばかりで、僕は心のどこかで諦めていた。
不登校に関する本で良いものはないのだろう、と。

読書会が始まり、本を読んでいく。
すると、一気に僕の心はわしづかみにされた。

読んでいるのは、専門書だ。
不登校の本で、決して明るい話題ではない。

でも、僕は読みながら興奮している自分に気がつく。
まるで、ハリー・ポッターを読んでいるときの感覚だった。

「やばい……。これ、おもしろいぞ」と、心の中でつぶやいた。

謎を解くかのように、不登校のことについて説明をしてくれている。

「そういうことかっ!」と、不登校の仕事をしている僕でさえ、思わずうねってしまうことが書いてあった。

読書会をおこなう前に、「この本は、もしかしたら名著なのかもしれない」と思った期待は、読書会をすすめていくうちに確信へと変わった。

他のパートを読んだ人たちの発表を聞くと、この本のスゴさがますます実感できた。
 

僕は、不登校への対応で、先生の発言に、何度も首をかしげたことがある。

「嫌がらせをした子には注意したので、もう学校には来れるよね?」

「大丈夫。学校は楽しいところだから、安心しておいで」

「イヤなことがあったら、いつでも先生に言ってきたらいいから。だから、学校に来たらいいんだよ」

正直、まだまだ学校の先生には不登校のことが理解できていないんだなと、こういう発言を聞くたびに思っていた。

けれど、この違和感をどのように表現したらいいのかがわからなかった。

「そうじゃないんだよっっっ!」とは思っていたものの、じゃあ具体的にどこがどう違うのかまでは、言えなかった。

その答えも、この本には載っていた。

びっくりした。

思わず、「うわっ!」と声が出た。
感覚ではわかっていたけれど、それを言葉には出来ていなかった。

まさに、その通りだった。

こんなに明確に、分かりやすく『不登校になる原因』について言及されているものを初めてみた。

不登校になってから、終結までのステップも書いてあった。

こんな時期がありますよ。
こんな時期には、こんなことに心がけましょうと、妊娠の初期や中期のように、わかりやすく書かれている。

カウンセラーの人が保護者によく言うのが、「ゆっくり休ませてあげましょう」だけれど、その言葉は、不安になる。

「いつまでゆっくり休ませたらいいのだろう?」
「ゆっくり休ませるってなに?」
「勉強させなくてもいいの?」

見通しが見えないと不安になる。
不登校は時間がかかるから、なおさら。

でも、こうやって「今はこの時期です」と書かれていると、安心できる。

「もうすぐしたら、つわりはラクになるのか」と思えたら、ガマンができる。
 

読書会のとき、みんなで話し合いながら何度も言った。
「この本、20年前のものとは思えない!」

内容は、全く色あせない。古くない。
2017年に発行されたと言われても信じるくらい。

僕の予感は、当たっていた。
この本は、不登校に関わる保護者にとって、救いの書となるだろう。
教科書的な役割を果たしてくれる存在になる。

文中に、”不登校に関して、父親や身内が邪魔者として現れることがある”と書かれていて、思わず笑ってしまった。

お母さんたちから良く聞く話で、その課題は20年前から一向に変わらないみたいだ。

そんな”邪魔者”と言われるお父さんや身内の人たちにも、ぜひこの本を読んでもらいたい。

百聞は一見にしかずだ。

「こんなことしては、ダメです」と言うより、この本を渡して、「読んでおいて!」と伝えたほうが手軽だ。
 

不登校と関わる人たちにとって、間違いなく心の支えになるだろう。

読書会へ参加した保護者さんは、「もっと早くこの本に出会っていたら、きっとあの辛かった日々はなかったと思います」と話していた。

古い本で、図書館でも見かけないかもしれない。

しかし、この本は間違いなく名著だ。
不登校に関しては、群を抜いている。

ぜひ、読んで、感想を聞かせて欲しい。

きっと、「ここまで書いてくれてあるのか!」と驚くことだろう。

僕は、この本が不登校で悩んでいる保護者の気持ちを軽くして、なにをしたらいいのかわかる道しるべになると信じている。
 

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この記事を書いた人

1984年 大阪生まれ 立命館大学文学部卒

中学時代は、部活に打ち込み、勉強では学年で常にトップ10以内。
しかし、中学3年生のときから学校がしんどくなり、誰とも話さなくなる。
野球選手を目指し、大阪の野球強豪校へ行ったものの、自信を失い退部。そこから学校へ行かず、河川敷で過ごす毎日をおくる。
浪人して立命館大学へ入学したものの、なにをしたいかが分からなくなり、行く意味を失う。1回生の夏から1年ほど、京都の下宿で引きこもる。
友人の支えもあり、復活。政治家の秘書やテレビ制作などのインターンをおこない、期間限定のカフェも開く。「自分のようにつらい思いをさせたくない」と思い、D.Liveを立ち上げる。
フリースクールや自信を取り戻す教室を運営。不登校に関する講演や講座もおこなっている。
京都新聞にして子育てコラムを連載中。
詳しいプロフィールはコチラから

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