僕が不登校のころ、ひとりで遠出していた理由

「名古屋行くんですけど、どこかオススメ知りませんか」
ある日の「昼TRY部」(不登校の子どもたち向けの居場所)の帰りがけ、ひとりの生徒がこんなことを尋ねてくれました。聞けば、翌日、ひとりで電車に乗ってふらっと名古屋へ遊びに行くのだとか。
大学の4年間を岐阜で過ごしていた僕にとって、名古屋はしょっちゅう遊んでいた街。「ここのラーメン美味いよ!」とか「きしめんを食べるなら名古屋駅のここ!」と、帰る時間が大幅に過ぎているにも関わらず20分ほど名古屋のオススメ情報をいろいろ教えてあげました。
そして翌週。昼TRY部に顔を出すと、そこには名古屋土産とともに生徒の姿がありました。
「名古屋、どやった?」
「めっちゃ良かった。名古屋城にも行きましたよ」
と口数が少ないながらも、持ってきたお土産を生徒やスタッフ、そしてたまたまいらっしゃった来客の方に自らすすんで配っている姿を見ていると、充実した名古屋旅行になったんだなあとひしひし感じました。
実は、不登校だったころの僕も、よく旅、というか遠出をしていました。
行き先は、先述した生徒と同じ名古屋か、四国の香川県が多かったです。
移動に使うのは「青春18きっぷ」という、期間限定で在来線の普通や快速電車が乗り放題になる切符。制約はありますが1日2000円ちょっとで全国各地を旅することができます。これを使って早朝、始発電車で地元を離れ、誰も知らない土地をひとりとぼとぼ歩き、夜また帰ってくる。
そうすると、近所を散歩するのと違って遠くの街を歩くので、会いたくないクラスメイトなどに会う心配もない。朝早くならみんな寝ているし、夜も家族に駅まで迎えに来てもらえれば問題なく家に入れる。つまり、ちょっと外に出る勇気と冒険心さえあれば、いくらでも充実した時間を過ごせるのです。
僕がよく名古屋や香川に行っていたのは、京都からわりかし近くて関西ではない土地だったから。始発で地元を出れば、新幹線を使わなくても名古屋には朝の8時半、香川には10時過ぎに着くことができます。夕方までたっぷりと時間があるので、1日「関西とは違う空気が流れる場所」を堪能できるわけです。
名古屋では繁華街はもちろん、なんでもない住宅街のエリアまで隅々を歩き尽くしました。それが後年、岐阜に進学したときに名古屋の土地勘を育むのに大きく役立ちました。香川では県内各地の讃岐うどんの店に足繁く通って食文化にも触れました。今でも暇ができると香川へうどんを食べに行っています。
いまにして思えば、こうして外に出て知らない土地を歩いたことが、今の僕の好きなものや人格を形成していると言っても過言ではありません。いろんな土地を訪ねて歩いて、その土地の文化や空気に触れることは、鬱積したしんどい気持ちを自然と解放してくれるとっても貴重な時間でした。
弊団体の事業、TRY部の話をするとき、よくするのが長野を一人旅した生徒の話。
なぜ、この教室は不登校の生徒が『ひとり旅』へ行くまでに成長するのか?
この生徒は今でも、事あるごとに全国の神社をめぐる旅に出ています。またインターネットを通して人脈を広げて、わざわざ東京まで会いに行った話もものすごく楽しそうにしてくれました。
そして先日は一人旅ではありませんが、滋賀県草津市・福島県伊達市の小学生交流事業で、互いの街に住む子どもたちが互いの街を訪ね、キャンプやホームステイを通して交流を深め合いました。
市長に、なんとしても小学生の成長を見て欲しくて頭を下げた日。
僕もこの事業の解散の瞬間に立ち会っていたのですが、草津駅の改札に入ってからも伊達市に帰る小学生が「最後にあの合言葉言って!」と草津市の子どもたちにリクエストしてみんなで合言葉を叫んでいて、よっぽど名残惜しいんだなあと思いました。
「旅」は、様々な非日常を提供してくれます。旅に出なければ何時間も乗り物に揺られることなんてありません。そこから「非日常」がスタートしているのです。そして旅先の風景、食べ物、人々の方言、看板・・・ここに書き出せないほど、たくさんの非日常が現地には待っています。
そんな非日常に触れた瞬間、子どもはぐんと成長するのです。もちろん、不登校の子どもも。
家族旅行とは違い、一人旅はその土地で感じたこと、思ったことをすぐに共有することができません。だからこそ、深く記憶に刻み込まれた体験をゆっくり自分の中で落とし込んでから共有することで、またその記憶がいつまでも色あせないものになるのです。
夏休みも残り少なくなってきましたが、前述した「青春18きっぷ」は9月10日まで使うことができます。ぜひ、不登校の子どもたちに「非日常」を体感できる旅へいざなってあげてください!
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