ある簡単なワークをしたら、進路で悩む高校生が「仕事楽しそう!」となった話

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ドラえもんになれたらいいなぁ。

いや、別にあんな丸っこい体型になりたいわけじゃない。

そこには憧れない。でも、やっぱり、僕はドラえもんという存在に憧れるんだ。
 

教室(TRY部)の授業が終わって帰り道のことだった。

大学生インターンのリュウジが「いやぁ、すごいですね」と言ってきた。
「こんなに出るのか? って驚きました」

「だよね。めちゃくちゃ出たよねぇ」

 
 

今、TRY部の中高部では、”仕事”がホットワードだ。

高校生になった生徒も増え、進路選択が現実味をおびてきた。

大学へ進学するのか?
就職するのか?
どこかの専門学校に入るのか?

まだ時間はあると言っても、子どもたちにとっては大きな大きな決断のとき。

高校を選択するときは、まだラクだった。

いくつかある候補から選べば良かった。

距離や成績を加味して、候補となるのはせいぜい3〜4校くらい。

しかし、これからの進路は違う。

30,000以上もあると言われている仕事から、自分が「やろう!」と思うものを決めていかなくてはならない。

生徒は言う。

「なにをしたらいいかわからへん」
「どの仕事も大変そうで、逃げたくなる……」

苦悶の表情を浮かべる生徒たちを見て、”仕事”をテーマにした授業を何週か続けてやろうと思った。

今、子どもたちは「仕事したくない」と思っているし、「やりたいことが見つからない」と悩んでいる。

じゃあ、その苦痛を取り除き、ワクワクするような未来を描ける手伝いをするのが、TRY部としてやるべきことだと思ったのだ。

では、どんな授業をしよう?

授業の数日前、リュウジと打ち合わせをする。

彼は、「じゃあ、やりたいことや興味あることを書き出してもらいましょう。
そして、それに関連する仕事を考えたらいいんじゃないですか?」

僕は、リュウジの言葉を聞き、しばしの間、考え込んだ。

「いや……、それじゃ無理だよ……」

そのとき、思い浮かんだのは、自分が就活をしているときのことだった。
 
 

僕は、やりたいことが見つからなかった。
なにをしたいのかわからなかった。

はじめは、商社志望だった。
しかし、就活をしているうちに、ほんとうにそれがやりたい仕事なのかどうか自信を持てなくなってしまった。

どんな仕事もおもしろそうに思う。
どんな仕事も自分がやりたいことではないと思う。

2〜3ヶ月で就活を終える友人が多い中、僕は半年がたっても就職が決まらなかった。

まったくわからなかった。

俺は、どうしたいんだ……?

解決の糸口を探るべく、僕は、社会人のインタビューやテレビ番組を見ることにした。

『情熱大陸』や『プロフェッショナル』、『プロ論』『R25のインタビュー』などなど。

300人以上の仕事や働き方を見て、自分がなにをしたいのかを模索し続けた。

そうやって、必死で考えて、やっとのことで”やりたいこと”を見つけたのだ。
 
土深く埋められた宝物を素手掘り起こすような作業だった。爪は剥がれ落ち、血だらけになっていた。

それくらい、死にもの狂いだった。

 

 
だから、リュウジが「やりたいことを書き出してもらいましょう」と言ったとき、とっさに思ったのだ。

「無理だ……」と。

当時、就活で苦しんでいた僕がこの問いを投げられたら、きっと言うだろう。

「やりたいことなんてわからへん……」と。

じゃあ、なにができるだろう?

あのとき、僕はどんなことがあれば良かったんだろう?

どうすれば、やりたいこと、自分がやりたい仕事を見つけることができるのだろうか?

考え続け、1つのアイデアが浮かんだ。

思いついた種を元にして、アイデアを詰めていく。

うん、悪くない。

子どもたちがどんな発想をするか、ほんとうに出来るかは不安もあったけれど、この案で授業をおこなうことにした。
 
 

授業当日。

僕は、1つだけなんとしても達成しようと思っていたことがある。

それは、授業が終わったとき、『仕事って楽しそう』と、生徒に思ってもらうこと。

「やりたくないこと」「やらねばならないこと」なんかじゃない。

仕事は選べるし、自分で創れる。

人生のほとんどの時間を費やす仕事が楽しくないなんて、悲しすぎる。

子どもたちには、ワクワクしながら未来を描いて欲しいんだ。ドキドキしながら、仕事についての空想をして欲しいんだ。園児がウルトラマンに憧れ、アイドルを夢見たように。

今日のめあてを伝え、授業をスタートさせる。

『今日のテーマは、好きなことだけをして生きていくことです。
好きなことだけして生きるなんて難しい? って思っているかも知れないよね。
でも、実はそんなことないです。
自分が楽しいこと。好きなことを貫いていけば、いくらでもできる。
実は、人生なんてめちゃくちゃ甘い。甘すぎるんだ。
厳しいって大人が言うのは、そういっておかないと、自分のガンバりが報われないから。
人生なんてイージーだ。
だから、今日は、キミたちがやりたいこと、好きなことを存分に考えて欲しい」

 

概要を話し、ワークに入る。

ワークの内容は、シンプルだ。

① やりたいこと(ジャンル)
② 身につけたいこと(スキル)
③ 興味あること

この3つをそれぞれのポストイットに思いつくままに書き出す。

たとえば……

① 旅行
② 豚の飼育
③ 飛行機

そして、書き出したものを掛け算して、仕事を考える。

〈海外で豚を育てる仕事〉

みたいな具合に。

このワークを子どもたちにしてもらった。

正直、どこまででるのかなと思っていた。
あまり出ないのではないか?とも思っていた。

空想のアイデアだけが出て、「楽しかった」で終わってしまう可能性もあった。

けれど、そうはならなかった。

大人が驚くくらい、生徒はステキなアイデアを創っていった。

『教育 × カウンセリング × 旅行』
= 不登校やしんどい子を旅行に連れていってカウンセリングをする仕事

『飲食 × PC × 肉 』
= 肉マイスターになって、いろいろな肉を食べ歩き、これぞと思った肉をネット通販で販売する。

『農業 × プログラミング × ゲーム』
= 農家の人たちが使えるアプリ開発

どんどん出てくる。
そして、どれも「出来そう」だ。

「仕事なんてどれも辛そう」と言っていた生徒の姿は、もうなかった。
未来をワクワクしながら描く顔になっていた。

僕は、ドラえもんのようになりたいなと思っている。

ドラえもんは、のび太くんが「こんなものが欲しい」と言ったときに、適切な道具を出してくれる。

僕も同じようになりたい。

子どもが困っているとき、悩んでいるとき。
適切なワークや授業を用意してあげたい。

学校や塾には、カリキュラムがあり、たくさんの生徒がいるのでなかなか難しい。

けれど、少人数で厳密なカリキュラムを作っていないTRY部では、それができる。

僕は、子どもたちの前に現れた靄(モヤ)を晴らし、次の一歩を踏み出していく後押しができる道具をこれからも出していきたい。

帰るとき、生徒が言った。
「プログラミング、勉強してみよっかな」

どうやら、今回の道具は良い仕事をしてくれたみたいだ。

さて、のび太くん。
次は、どんな困ったことがおこるんだい?

僕はもう、ポケットに手を突っ込む準備は、できている。 
 

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田中 洋輔

田中 洋輔

1984年 大阪生まれ 立命館大学文学部卒 中学時代は、部活に打ち込み、勉強では学年で常にトップ10以内。 しかし、中学3年生のときから学校がしんどくなり、誰とも話さなくなる。 野球選手を目指し、大阪の野球強豪校へ行ったものの、自信を失い退部。そこから学校へ行かず、河川敷で過ごす毎日をおくる。 浪人して立命館大学へ入学したものの、なにをしたいかが分からなくなり、行く意味を失う。1回生の夏から1年ほど、京都の下宿で引きこもる。 友人の支えもあり、復活。政治家の秘書やテレビ制作などのインターンをおこない、期間限定のカフェも開く。「自分のようにつらい思いをさせたくない」と思い、D.Liveを立ち上げる。 フリースクールや自信を取り戻す教室を運営。不登校に関する講演や講座もおこなっている。 京都新聞にして子育てコラムを連載中。 詳しいプロフィールはコチラから