「角さん」が教えてくれた、不登校の子への接し方のヒント
「私は、角淳一です。あなたはどなたですか」
このフレーズにピンと来るあなたは、おそらく平日の昼下がりに「ちちんぷいぷい」を観ていた方だと思います。
「ちちんぷいぷい」とは、平日の昼2時から夕方6時ごろまでやっている情報番組で、もう関西では20年くらい放送されています。で、長年この番組の司会者だったのが角淳一さん(元毎日放送アナウンサー)で、いつしか冒頭取り上げたフレーズから「ちちんぷいぷい」は始まるようになりました。
この「角さん」が書いた本の一節が心に残ったので、ご紹介したいと思います。
「ぼくの人生はぼくだけの人生なんだ」
ものすごく漠然としていますが、そういう結論です。
亡くなった母親と67年間、1回も離れずに生きてきて、一心同体だったような気もするけれど、母親は母親の人生を生きてきた。
もちろん、ぼくを産む前の彼女の人生は知らないし、その後も僕が知っているようで知らない人生もある。
子どもたちも、ぼくの子どもだから知っているような気がしますが、彼らの人生を歩んでいます。孫が生まれて、かわいいかわいいって言ってますけど、やっぱり見ていると、孫の人生なんです。引用:角淳一(2014)『私は、角淳一です』朝日新聞出版 P185
あらかじめ断っておきますが、角さんが記したこの本は決して子どもへの接し方とか、不登校を取り上げた本ではありません。あくまでも、角さんの「自伝」です。しかし、最後のほうに記されていたこのフレーズに、なんとなく僕は既視感というか、何かへのヒントとなりうるのではないか、と感じました。
なんだろう?と思案すること数分、それは直後のこの一節を読むことで解決しました。
それぞれの人生にはいろんな人が絡んでいるけど、その人の人生を侵してはいけない。すべての人の人生には尊厳があって、大切にしてあげなければいけないと、つくづくそう思います。
引用:角淳一(2014)『私は、角淳一です』朝日新聞出版 P186
ああそうか、これは「不登校の子を持つ親」への、大きな道標となるのかもしれない。
なんで学校に行けないの。
どうやったら学校に行けるの。
そんなに元気なら学校行けるでしょ。
「学校へ行けない我が子」を心配するあまり、ぐちぐちと責めてしまう。
それでもし我が子が学校へ行ったところで、おそらく動機は「親を悲しませたくない」「親がしつこい」という理由だと思います。それは、親の期待に命をかけて子どもが応えようとするも同然。「学校に行きたくない」という子どもの人生を、親が侵しているという考え方もできます。
もしかしたら、親であるあなた自身も、自分の親に人生を侵されたことがあるのかもしれません。それは「一人暮らしは許さない」という人生にかかわること、小さなもの、例えば外食で本当はエビフライが良いのに勝手にハンバーグを注文されることまで、多種多様な侵され方をされたのだと思います。
しかし、「自分もされたから」と同じような人生の侵し方を、子どもに強いても良いのでしょうか。
子どもの「学校に行きたくない」という生き方を、果たして親が侵しても良いものなのでしょうか。
実はこれ、アドラー心理学とも密接に関わることでもあります。名著『嫌われる勇気』ではこれを「課題の分離」として取り上げています。
子どもとの関係に悩んでいる親は、「子どもこそ我が人生」だと考えてしまいがちです。要するに、子どもの関係までも自分の関係だと思って抱え込んでいる。いつも子どものことばかり考えて、気がついたときには人生から「わたし」が消えている。
しかし、どれだけ子どもの課題を背負い込んだところで、子どもは独立した個人です。親の思い通りになるものではありません。引用:岸見一郎,古賀史健(2013)『嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え』ダイヤモンド社 P144
角さんの人生の話は、まさしくこの「課題の分離」と似通っていると思います。「学校に行かない」ことは果たして親の課題なのか子の課題なのか。冷静に見極めることで、角さんの言う「すべての人の人生には尊厳があって、大切にしてあげなければいけない」ことになるのだろう、と感じます。
お知らせ1:今週末に不登校を考えるミニイベントがあります
「どうして、不登校の子どもは朝起きれないのか?」
今日のコラムでも書いたように、不登校の我が子が何を思っているか分からない。なんでこんな行動をするのかも分からない。かと言って口出しすると嫌がる。ああ、これ「人生を侵している」のかもしれない・・・。
そんな親御さん向けに、不登校の子どもの行動について考えたり、相談し合うイベントを今週末開催いたします。ご参加、お待ちしております。
思春期の子どもとの関わりかた講座第2期「よくわかる不登校~どうして朝、起きれないのか~」
5月27日(土)14:00~16:00
@マグハウス(滋賀県大津市大萱1丁目9-7 ワイエムビル202:JR瀬田駅徒歩5分)
参加費:1000円 定員:10名(小学5年~高校3年の保護者の方向けの講座です)
お申込みは こちら からどうぞ
お知らせ2:私事ですがひと月ほど休載させていただきます
教育実習のため、しばらくD.Liveでの活動をおやすみすることになりました。従いまして、毎週水曜更新の僕のコラムも次回の更新は6月末ごろを予定しています。
休載中はD.Liveのほかのスタッフのコラムや、ゲストライターをお迎えしての不登校コラムなどが水曜日にも更新される予定です。いつも楽しみにしてくださっているみなさまには申し訳ありませんが、休載中はそちらをお楽しみください。よろしくお願いいたします。
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