「生徒と向き合わない教師」について考えさせられる本、2冊

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今年のGWは家にいる時間と電車移動が多く、その分を読書に費やすことで1日1冊ペースで本に浸ることができました。

その中で特に心に残ったこの2冊には、とある共通点がありました。

それは、「理不尽な教師」という存在。

どちらも主人公は中高生、つまり思春期を生きる子どもたち。その中で、気持ちを理解しようとしない教師の存在、それに反抗する子ども(主人公)の気持ち、というのが話の展開のカギを握っている作品です。

彼らは、どのような理不尽な教師と出会い、どのような行動を起こしたのか、考えてみましょう。なお、この2冊をまだ読んでいない、という方はネタバレにご注意を。

坪田信貴『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』

通称『ビリギャル』で映画化もされ大ヒットしたこの作品は、なぜ主人公のビリギャル「さやかちゃん」がそれまで落ちこぼれたのか、はもちろんのこと、そこから慶應を目指すことを最後まで冗談だと思って意に介していなかった学校の先生との戦い、も物語の大きなポイント。

そこには坪田先生はもちろん、さやかちゃんの母「ああちゃん」のぶれない信念が、さやかちゃんを「慶應合格」に導いたことが、この本を通して読み取れます。

さやかちゃんの学校の先生は、いわゆる非行少女で停学処分を度重ねるさやかちゃんの「チャレンジ」を、明らかに信用していませんでした。それは、連日の塾通いと朝までの猛勉強がたたって、授業中に居眠りを繰り返す行動を「問題行動」とみなして親を呼び出すその指導が顕著に表しています。

そもそも、さやかちゃんが非行に走る原因というのも作中に描かれています。それにすら目を向けずさやかちゃんを悪い子扱いし、芋づる式に一緒に違反していた子の名前を無理に吐かそうとし、それができないのなら退学処分をちらつかせて脅す。

さらには、猛勉強がたたって居眠りする行動の理由を「ああちゃん」が説明したにもかかわらず、「集団生活のルール」という建前でそれを許そうとしない姿勢にも、読んでいて思わず腹が立ちました。結局、「いい子」という枠に押し込めた教育で、彼女なりのチャレンジを阻害してるだけじゃないか、と。

いまの学校現場は、こうして先生方がひとりひとり生徒と向き合うのも難しいほど多忙なのかもしれません。だからこそ、何か問題を起こしたりルールに反した生徒を「悪い子」として切り捨てたり片付けることで強引に問題を解決させているのかもしれません。

しかしそれって本当に問題を解決できているのでしょうか。

家庭環境の問題、学校環境の問題など、本質的なものを見過ごしている限り、たとえば10日間の出席停止のように一時的な罰則を加えたところで、なんにも解決していないと思います。だからこそ、その子ども、生徒に本気で向き合うことが重要なのです。

坪田先生はさやかちゃんとの最初の面談から彼女と本気で向き合うことで、彼女の本当の性格を見抜いていました。だからこそ、「慶應合格」という目標を即座に提案し、時間をかけてさやかちゃんの本能を呼び起こし、粘り強く彼女をサポートしたわけです。

容姿と行動などで「悪い子」と切り捨てた学校の先生と、そんなことは関係なく彼女の素直な気持ちに寄り添った坪田先生。さやかちゃんがどちらを信用したのかは、書くまでもないと思います。

千原ジュニア『14歳』

前回、不登校経験のある著名人をまとめた際に取り上げた千原ジュニアさん。彼が引きこもっていたころの自伝的小説があるとご紹介しましたが、記事投稿後図書館に行くとたまたま見つけたので、即座に借りてみました。

するとやはり彼もまた、理不尽な大人に苦しめられていたのだと感じました。

彼は自分の中で「人と同じことをするのが嫌」「人とやり方が少し違う」ことをハッキリと自覚しています。しかし、それを理解してくれる大人が周りにいなかった。彼の場合は両親もこの「人と違う」ことを受け取ってもらえなかったのですが、それ以上に学校の先生も彼にまったく向き合っていません。

鉛筆を削るためにナイフを所持していたことを「いつか人を傷つけるから」とたしなめられたジュニア。「野球部が持ってる金属バットも同じじゃないのか」と指摘すると、教師は一発殴ってまた同じことを注意する。その教師は、あるとき金髪で授業に参加した彼の額を、ボールペンで刺して出血させた・・・。

文字を書くための道具で傷つけられた僕を見て笑ってる。
先生、僕は誰もあのナイフで傷つけたりしませんでしたよ。
先生。人を傷つける人間はこうやって文字を書くための道具ででも傷つけるんですよ。

引用:千原ジュニア(2007)『14歳』講談社 P58

当然、正当な理由なくナイフを所持することは銃刀法違反に問われ、下手すると警察に逮捕されます。

しかしそこで、「いつか人を傷つける」という曖昧な理由ではなく、彼が納得できるような説明をこの教師ができていれば、きっと違う方向に話が進んでいたと思います。暴力だったり「規則は規則」という無茶苦茶な理論を振りかざして納得できる生徒って、どれくらいいるのでしょう。

前述しましたが、彼は教師だけでなく両親からも「人と違う」ことを受け入れてもらえず、たびたび衝突する思春期を過ごしていました。いま、「にけつッ!!」と言うトーク番組で面白おかしく自分の母親の話をする彼の姿を考えると、まったくもって想像ができないことでもあります。

まとめ

『ビリギャル』の主人公・さやかちゃん。『14歳』の主人公・千原ジュニア。

2人とも、家庭環境のこともありますが、学校の先生がうまく自分に向き合ってくれなかったことも一因で非行だったり引きこもりという形で自分を表現していたように思います。逆に言えば、生徒はそれほど、学校の先生が自らにきちんと向き合ってくれるのを待っているのかもしれません。

そもそも、タバコを吸う、酒を飲む、と言った問題行動の裏には、「私のSOSに気がついてほしい」「僕はこんなに寂しいんだ」という、子どもたちの声にならない声が隠されています。そんな声に気づかずに、行動「だけ」を叱ったところで、寂しい気持ちやSOSが消えるわけではありません。

GW明けという新しいクラスや学校にも慣れる時期だからこそ、ぜひ先生方や周りの大人たちは「生徒(子ども)と真摯に向き合う」ことに気をつけてほしいな、と思います。それが問題行動を食い止めたり、引きこもりや自殺を考える子どもたちを救う小さな第一歩かもしれません。

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山本 駿

山本 駿

子どものころより人一倍敏感な特性を持ち、中学3年間を不登校で過ごす。大学卒業後、不登校ボランティアを経て2014年よりD.Liveに参画し、現在は通信制高校教員を両立しながらTRY部や不登校講演事業を中心に担当。HSP(Highly Sensitive Person)特有の繊細さを活かし、今を生きる子どもたちの先生でも友達でもない「ナナメの関係」になることを目指しています。